真央が「人生」を滑る。フィギュアスケート女子の浅田真央(22=中京大)が5月31日、現役最後になるソチ五輪シーズンのフリー演目に、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」を使うと発表した。テーマは「いままでの思い出」で、まさに集大成。銀メダルの10年バンクーバー五輪と同じ作曲家の曲で、悲願の金メダルに挑む。ショートプログラム(SP)は2度目の使用となるショパン「ノクターン」で、新演目はこの日に大阪府内で開催発表した7月のアイスショー「ザ・アイス」で初披露する。

 「私のいままでの人生が詰まっているんです。うれしかったり、悲しかったり、悔しかったり…。いろいろな思いが込められています」。浅田のフリーは、氷上で滑ってきた年月そのものになる。

 うれしかったこと-。世界選手権で2度頂点に立った。10年バンクーバーでは、夢だった五輪の舞台に立てた。

 悔しかったこと-。その五輪で同い年、誕生日も20日違いのライバル金妍児(韓国)に敗れた。銀メダルを胸に赤く目を腫らした。

 全ての思い出を、気持ちを、演技に込める。曲は再びラフマニノフ。ロシア出身の作曲家は、バンクーバーで使用した「鐘」に続く採用になる。今度は「ピアノ協奏曲第2番」。「第1番」をフリーで滑った伊藤みどりが92年アルベールビル五輪で銀メダル、高橋大輔も使用したフィギュア界の名曲で「同じ作曲家ですが、レベルアップしたところを見せたい」。

 昨年12月のGPファイナル。五輪と同じソチの会場で滑った時、同じくロシア出身のチャイコフスキー作曲の「白鳥の湖」が好評だった。「最初から拍手があって、うれしかった」。今回も地元ファンに好評を期す、振り付けのタラソワ氏の狙いもあるようだ。

 SPも「再び」になる。06-07年シーズンに使用したショパン作曲の「ノクターン」。振り付けも同じニコル氏で、「曲は同じですが、大人っぽい。テーマは初恋」という。ジャンプ以外の表現面を磨いてきた成果を、楽曲にのせる。

 振り付けのため滞在した米国から帰国して1週間。「靴もこれから変えます。新しいプログラムを滑り込んで、7月のショーでお見せしたい」。2度目の五輪で金メダルを取る“Vプログラム”を磨いていく。

 今年9月、5歳で競技を始めた少女は23歳になる。この日もピンク色のドレスを着こなし「欧風です。ここに天使もいるんですよ」と柄を指さし、ほほ笑む姿はすっかり大人に。スケート人生の喜怒哀楽を滑る終幕のソチまで、あと8カ月だ。【阿部健吾】