<柔道:世界選手権>◇第5日◇29日◇ロシア・チェリャビンスク◇女子70キロ級

 初出場の新鋭が、銀メダルを獲得した。女子70キロ級世界ランク38位のヌンイラ華蓮(23=了徳寺学園職)は、強豪を連破。03年大会で金メダルを獲得した上野雅恵以来の同級決勝進出を果たした。決勝では昨年優勝のユリ・アルベアル(28=コロンビア)に一本負けしたものの、欧米の層が厚い階級で存在をアピールした。

 昨年の覇者で日本のミキハウスに所属するアルベアルに敗れ、ヌンイラは「悔しいに尽きる」と目を腫らした。それでも、日本が苦しんできた階級での決勝進出は大健闘。「しっかり戦えたことは自信になる」と話すヌンイラを、南條監督は「強豪ぞろいの階級で、よくやった」とほめた。

 世界ランク38位ながら、上位選手を次々と破った。準決勝まで4試合中3試合を一本勝ち。同3位ズパンチッチとの準々決勝も内股にきた相手を強引に押し倒して技ありをもぎとった。「世界と戦えることは分かった」。初めて出場した世界選手権で、手ごたえをつかんだ。

 攻めが遅いのが課題だった。環太平洋大時代も、元五輪王者の古賀総監督に何度も指摘された。「自信を持って、先に攻めろ」と。今回は「残り時間が短くなったら、自分から積極的に動いて技を出す」という作戦を立てた。2回戦、3回戦は、技ありを奪われながらも逆転の一本勝ち。「攻めのスピードが足りない」と反省したが、策は当たった。

 父ルカさん(59)はガーナ出身。「親から受け継いだパワーを生かしていきたい」。母明美さん(57)は風水鑑定士。「1人暮らしを始める時、徹底的にみてもらった」。しかし、両親はスタンドにいなかった。「五輪に呼びたいから、お金をためている」という。

 憧れはロンドン五輪金メダルの松本薫。もちろん、目標は16年リオデジャネイロ五輪の金メダルだ。「今回の反省を生かすことで突破口が開ける。五輪を見据えて頑張っていく」。あと1歩と迫った世界一は、2年後の五輪でつかむ。

 ◆ヌンイラ華蓮(かれん)1991年(平3)5月23日、船橋市生まれ。14歳で柔道を始め、千葉・八木が谷中3年の全国中学大会70キロ級で優勝。八千代高では目立った成績はなかったが、環太平洋大進学後に急成長。学生体重別、体重別団体2連覇などのタイトルを獲得した。今春同大を卒業して了徳寺学園入り、4月の選抜体重別で連覇を果たし世界選手権初出場を決めた。166センチ。