選手からの悲痛な叫びだ。バスケットボール女子日本代表の大神雄子主将(32)が24日、日刊スポーツのインタビューに応じ、国際連盟(FIBA)による国際試合出場停止が確実となっている現状に、苦しい胸の内を明かした。日本協会は統一プロリーグ設立の合意が困難になった責任を取り、深津泰彦会長が23日に辞任。FIBAが期限とした今月末までのリーグ問題などに解決のめどが立たず、来夏に予定される16年リオデジャネイロ五輪予選への参加が危ぶまれている。

 期限が迫る中での突然の協会トップの辞任。FIBAへの改善案の提示は難しくなり、国際大会出場停止の可能性が迫る。大神は何度も「不安」と口にしながら、切実に訴えた。

 「正直びっくりしました。まだ時間があるのに、諦めてしまうのかと。もう無理だからと会長が辞任されて、この1週間、自分たちはどうすればいいのか。制裁を加えられても、何もできないのに…。不安は計り知れないです」

 -日本代表を長くけん引してきた。どんな場所か

 「スポーツをしている人は、日本代表に入って日の丸を背負って五輪に出るんだ、そういう夢を持っていると思う。小、中、高校生の憧れで、何よりジュニア世代からトップまでをつなぐ場で、続いていくもの。最近は女子はジュニアの成績がすごく良く(※1)、自信につながっている。若い時に自信をつけて、五輪が目標になり、向上心が生まれてきつい練習を乗り越えられる。そういう経験ができなくなるのは…」

 -制裁の可能性が長く叫ばれていたが

 「5月から始動した代表合宿中も、問題の説明はなかった。6年後には東京五輪も決まり、競技によっては強化計画も決まっていくなか、バスケだけは後退してしまう。解決して、またはい上がっていくにしても、説明があって『みんなで解決していこう』という話し合いがあれば皆も納得して前に進んでいけるが、今はそういう状態にない」

 -選手の声は協会には届かないのか。

 「選手会は男子だけ(※2)です。例えば、女子のWリーグの選手登録締め切りは5月末ですが、シーズンは10月末に始まる。もしその間の世界選手権で活躍して、海外からオファーをもらう選手がいても、5月末に登録をしたらそのシーズンは無理になる。そういう問題点を協議して、上げていく場はないです」

 -なぜ場ができないか

 「選手にも責任がある。制裁のことにも、知らない、知ろうとしなかった部分はある。協会だけの問題ではない」

 -残りは1週間あるが

 「最終的には必ずはい上がっていけるのがスポーツだと思うし、そういう選手たちだし、協会も信じているからこそ、最後までもがきたい。もし制裁になっても『あの時期にこうだったから、いまがある』と思えるように。自分も所属先を探している状態(※3)で、先が見えないのでモチベーションを保つのが難しいけど、五輪は最後だし、かけている部分が大きい。可能性を消さないために、動ける限り動きたい」【阿部健吾】

 ※1

 アンダー世代での世界選手権ではU-17代表が12年大会4位、U-19が13年大会8位など。フル代表は昨年11月のアジア選手権で43年ぶりに優勝。

 ※2

 日本バスケットボール選手会として13年9月に設立。協会への改善要求より、普及に主眼を置く。

 ※3

 昨季は中国リーグの山西で活躍。今季も海外リーグへの移籍を目指し、所属先を探している。

 ◆大神雄子(おおが・ゆうこ)1982年(昭57)10月17日、山形市生まれ。8歳の時に米国でバスケットボールを始める。桜花学園高では2年時の高校3冠など7つのタイトルを獲得。01年ジャパンエナジー(現JX-ENEOS)に入社。04年アテネ五輪に最年少21歳で出場。07年には日本国内初のプロ選手に。08年は米女子プロリーグWNBAのマーキュリーでプレーし、23試合56得点。10年世界選手権では1試合平均得点部門で得点王に輝いた。ポジションはPGとSG。170センチ、63キロ。

 ◆FIBAによる制裁の経緯

 08年から日本のトップリーグの併存状態などを問題視してきたが、日本協会に改善がみられず、今年4月に10月末までの回答期限を設けた。(1)リーグ統一(2)組織と規律体制の改革、日本代表の強化計画の導入(3)ユース世代の国際大会の開催時期と国内大会の重複の解消、以上3項目の解決を求めた。(1)は6月からNBLとbjリーグで話し合ったが現時点で合意できず、深津会長が引責辞任。協会のガバナンス(統治)能力欠如を露呈し、制裁が避けられない状況となった。