仁川アジア大会水泳会場でカメラを盗んだとして略式起訴された競泳男子の冨田尚弥(25)が6日、名古屋市内で弁明の会見を開いた。競泳会場で見知らぬ人物からバッグにカメラを「入れられた」と窃盗行為を否定。韓国・仁川南部警察から窃盗を認めなければ帰国できないと脅されたと主張した。一方、捜査に自信を持つ韓国・仁川南部警察は、犯行の様子が映像に明確に残っていると、あらためて指摘した。

 韓国・仁川南部警察刑事課の組織犯罪捜査チーム長は「仮に再審となれば、冨田が恥をかくだけ。相手する価値もない」と、冤罪を主張する冨田にあきれ、捜査に自信をみせた。窃盗を断定できる揺るぎない証拠がある。カメラを盗んだ瞬間の映像だ。取り調べで冨田本人にも見せたという。

 チーム長

 犯行時刻は午前11時48分。冨田がサブプールから犯行現場に歩いて行き、カメラのレンズと本体を取り外してから、プールの外に出るまでの約20分の動きが写っている。もちろん、濃い緑色のズボンをはいたアジア系の男はどこにも写っていない。

 冨田は盗んだ瞬間の映像がないのはもちろん、防犯カメラの映像をスマートフォンで見せられたため、判別しにくいと主張する。

 チーム長

 そのときに本人が納得しなければ、プールの保安室で、防犯カメラの映像を見せていた。しかし、冨田はその場で謝って、窃盗行為を認めた。時間がたって、発言を変えるのは理解できない。

 チーム長は、冨田の窃盗行為の証人として、事件発覚当初から付き添った日本オリンピック委員会(JOC)の柳谷直哉本部役員の存在を挙げた。警察側は当初、どの日本選手か不明だったが、映像を見た柳谷氏が、冨田だと特定。本人を聴取する決め手になった。

 チーム長

 柳谷氏は常に冨田と一緒にいた。最初から最後までメモも取っていた。そもそも柳谷氏が最初に「カメラを盗んだの?」と聞いて、冨田は「はい」と認めている。だから我々が「罪を認めたら帰国できる」などと話す必要もなかった。こちらもそのやりとりを映像に残している。本部役員に聞けばすべてが分かる。

 冨田サイドは再捜査を求め、再審請求の可能性も口にした。

 チーム長

 再審請求は微妙な判決が出たときに行うもの。これだけ事実が明らかな事件は、検察も受け入れないでしょう。再審になったとしても、冨田が恥をかくだけの話。相手をする価値もない。

 韓国の警察と冨田の主張は真っ向から食い違っている。