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蒲生総監督が泣いた/ハンドボール
- 厳しい表情で試合を見守る蒲生総監督(撮影・水谷安孝)
<男子ハンドボール北京五輪アジア予選:韓国28-25日本>◇30日◇東京・代々木第1体育館
「ミスター・ハンドボール」が泣いた。「中東の笛」の呪縛(じゅばく)から逃れて臨んだ五輪予選再試合。公正な審判のもとでライバル韓国に25-28と敗れ、蒲生晴明総監督(53)は心の底から悔しがった。アジアのハンドボールが正常化に向けて踏み出した第一歩。日本代表が、1万人余りのファンに見守れて新しいスタートを切った。
終了のブザーが鳴ると、蒲生総監督は右手に握りしめたタオルを力いっぱいベンチにたたきつけた。一時は2点差に詰めた。残り5分で上着を脱ぎ捨て、声をからして指示した。しかし、力尽きた。判定は公平だった。だからこそ、3点差の負けに悔し涙を見せた。
蒲生 勝ちたかった。死んでも勝ちたかった。白にやられた。心から悔しいと思えるのは20年ぶりかな。勝っても心からうれしくなかったし、負けても怒りは違う方(審判)に向いたからね。今日の審判は目立たなかった。今までは、審判ばかりが目立ったから。
「ざまあみろ」。思わず言ったのは昨年12月18日に再試合が決まった時。批判もされたが、無理もなかった。91年から計6年間代表監督を務め「中東の笛」に泣かされ続けた。その思いは半端ではなかった。
蒲生 中東に行くと、大会前に「今回は4位ね」と言われる。その通り4位。試合ごとの勝敗も当たる。努力が結果に表れるのがスポーツ。最初から勝敗が決まっているのはスポーツじゃない。選手から「もうやめたい」と言われ、帰国報告では「審判のせいにするな」と言われた。遠征でIHFの役員に改善を訴え、ビデオを配った。それでも、何も変わらなかった。
今回はようやくIHFのメスが入った。アジアのハンドボールが、クウェートの支配から脱却しようとしている。公正な判定のもとでの敗戦は実力負けだ。言い訳なしで、今度はそれを縮めなければいけない。
蒲生 ここがスタート。今度は、本当に実力をつけなければ。今は最終予選で頭がいっぱい。五輪に行きたい。子供たちに夢を与えたい。やっとハンドボールを取り戻したのだから。
かつて本場欧州でも恐れられた豪腕「ガモ」が流した涙。審判の笛に惑わされず心から悔しいと思える今こそ、ようやく新しい時代が始まる。【荻島弘一】
[2008年1月31日9時29分 紙面から]
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