今回から2回に分けて「世界の英雄が語るW杯」を掲載する。第1回は元フランス代表のフレデリック・ミシャラク氏(36)。W杯3大会に出場、03年オーストラリア大会で日本と対戦した。代表77キャップで歴代最多の436点を挙げ、昨年現役引退したレジェンドが、日本代表と23年に母国フランスで開催されるW杯について語る。

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元フランス代表SOのミシャラク氏は日本代表の進化を身をもって知っている。

03年W杯で対戦した時は、自らトライを挙げるなど51-29で勝利。当時の日本はまだW杯で1勝しか挙げておらず、力の差は歴然だった。それから14年後の17年11月、日本代表の欧州遠征時に再び対戦、23-23で引き分けた。両方の試合に出場したミシャラク氏は「以前(03年)とは全く違うチーム。非常に乱れがなく、攻撃もしっかりしていてパスも速い」と評価した。

「素晴らしいW杯になりますように」と書いた色紙を掲げる元フランス代表のミシャラク氏(撮影・松熊洋介)
「素晴らしいW杯になりますように」と書いた色紙を掲げる元フランス代表のミシャラク氏(撮影・松熊洋介)

同氏は23年W杯フランス大会のPRなどのために、このほど来日。W杯日本大会にも注目している。今の日本代表をどう見ているのか。

優勝の可能性こそ「チャンスは5%くらい」と現実を口にするが、初の決勝トーナメント進出は十分可能性があると見ている。「(15年W杯で)南アフリカに勝利したときは勇気ある選択をしたし、展開も素晴らしかった。技術は進化していて今はフランスより上だと思う。アイルランドに勝つのは難しいが、スコットランドには勝つチャンスがある。ミスに気を付けてプレーすれば、(1次リーグA組)2位には入れる」と予想した。

昨年惜しまれつつ引退したミシャラク氏は現在、所属するトゥールーズのマネジメントを担当している。NBAやNFLを参考に他クラブの経験者を集めたり、早い時間の来場者へのチケット割引、花火や出店などの演出等、選手時代と違った目線で集客に努めている。日本のラグビー環境については「教育の一環としてやった方がいい。試合でもテレビなどメディアへの宣伝活動が大事。新しいことを取り入れてコミュニケーションを取ることが重要」と指摘した。

15年10月、アイルランド戦で華麗なステップで相手タックルをかわすフランスのミシャラク(ロイター)
15年10月、アイルランド戦で華麗なステップで相手タックルをかわすフランスのミシャラク(ロイター)

今大会については「フランス対日本の決勝になったら最高」とリップサービスもしつつ、フランス代表OBとして次の大会にも目を向けている。「これまで準Vが3度。07年のフランス開催も4強だった。もちろん今回も優勝を狙うが、23年は絶対に優勝したい」と力強く語った。【松熊洋介】

◆フレデリック・ミシャラク 1982年10月16日、フランス・トゥールーズ生まれ。5歳のとき、コーチだった父に勧められラグビーを始める。98年にトゥールーズでプロデビューし、01年に初キャップ。08、11年には南アフリカのシャークスでもプレーした。W杯は03、07、15年と3大会出場。代表77キャップ。歴代最多の436得点。15年W杯後に代表引退、昨年5月に現役引退。家族は妻と2男。