連載「ラグビーW杯がやってくる」は特別編。このほど来日した元オーストラリア代表SHジョージ・グレーガン氏(46)が日刊スポーツのインタビューに応じ、かつてプレーした日本で開催されるワールドカップ(W杯)への思いを語った。同国の歴代最多139キャップを誇る名手が、日本の8強進出に太鼓判を押しつつ、各チームの力が拮抗(きっこう)した激戦の大会を予想した。【取材・構成=奥山将志】

4月、握手を交わす日本代表リーチ(左)とグレーガン氏
4月、握手を交わす日本代表リーチ(左)とグレーガン氏

11年にサントリーで現役を引退し、現在は母国で解説者の傍ら、飲食店やスポーツジムを経営するグレーガン氏。現役時代、抜群の判断力と鋭いタックルを武器に、長くオーストラリア代表の主将を務めた世界的大物が、愛着ある日本開催のW杯への期待を込めた。

「日本でのW杯は世界の人々にとって素晴らしい経験になると思う。日本人は礼儀正しくラグビーに対しても情熱的。これまでの、どのW杯とも違う特別な大会になるだろう。開幕が本当に待ち遠しい」

母国開催の03年大会は、主将としてチームの準優勝に貢献。その重圧は、4度経験した他のW杯と比べても特別だったと語る。今回の来日では、日本代表のリーチ・マイケル主将ともイベントで共演し、自らの経験も直接伝えたという。

「W杯は、全チームがそこに向けて仕上げてくる特別な大会だ。そんな重圧がかかる状況で主将の存在意義は大きい。他の選手の手本となりつつ、常に自分のやるべきことを冷静にやり続ける必要がある。またポジティブでありながら、プレッシャーの中で楽しめるバランス感覚も必要だ。リーチは口数は多くないが、コーチ、仲間に尊敬の意を表している素晴らしい主将だ。良いパフォーマンスを見せてくれるだろう」

15年大会で躍進を遂げた日本代表について、同氏はその後も確実な進歩を遂げていると語る。

「日本代表はどのチームのコピーでもない、独自のスタイルを確立しようとしている。15年W杯後、強豪国と戦ってきたことで自信もつけている。ベスト8も十分可能だと思う。大切なのは何よりも準備だ。前回大会は、南アフリカ戦後に3日間しか休息がなかったが、今回は6日以上の間隔がある。そこをうまく使えば上にいけると思う」

優勝はどこか-。直球の質問に答えは出なかったが、実力が拮抗大会になると断言した。

「1チーム選ぶのは難しいが、注目しているのはウェールズだ。テストマッチ14連勝で6カ国対抗を制した勢いがある。また、今年良くなかったアイルランドも強い。エディーが率いるイングランドも危険だし、南アフリカ、オーストラリアも実力はある。アルゼンチンも含め、どのチームもオールブラックスに勝てるだけの力を持っている」

11年6月、日本代表対トップリーグ パスを出すトップリーグのグレーガン
11年6月、日本代表対トップリーグ パスを出すトップリーグのグレーガン

W杯の楽しみはピッチだけではないと同氏は語る。自身も、日本の魅力を世界に発信したいと話す。

「日本は東京のような大都市もあれば、新幹線に乗れば白馬、京都など自然豊かなところにも行ける。温泉、寺院、富士山も楽しめる。選手が各地に行くのは難しいかもしれないが、ファンの人には日本を楽しんで欲しい。どこに行っても楽しめるものを1つ挙げるとすれば、ラーメンとギョーザだ。僕のおすすめのラーメン店も、みんなに広めていきたいね」

◆ジョージ・グレーガン 1973年4月19日、ザンビア・ルサカ生まれ。1歳で移り住んだオーストラリアでラグビーを始め、94年に代表初キャップ。W杯には優勝した99年から4大会連続で出場。01年に代表主将に就任し、07年W杯を最後に代表引退。139キャップ。08年にトップリーグ、サントリーに移籍し、11年に引退。現役時代は173センチ、76キロ。