初の全国制覇を目指す京都成章が、仙台育英から12トライ+0封で「81-0」の大勝発進を見せた。

5大会連続11度目の花園出場。だが、春の選抜出場を逃したことで今回はノーシード。それでも、1回戦から強さを見せつけた。

見せ場は、いきなりやってきた。前半7分、自陣からCTB長森雅大(3年)がボールを持ち出して前進。グラウンド中心で相手と1対1になると、サポートに走ってきたFB二村莞司(3年)にパス。高校日本代表候補にも選出され、50メートルを6秒1で駆け抜ける快足男は「真っすぐ行くだけだと。長森は縦にゲインできる選手。サポートに行けばトライにつながると思った」と50メートル独走トライを振り返った。

10月には7人制ユース日本代表に選出され、ユース五輪にも出場。アルゼンチン・ブエノスアイレスで世界レベルを痛感した。「フィジカルが強い。スピードの強弱がうまい。どうすれば相手を抜けるかな、トライまでつながるのかを考える機会になった」。視野を広く持ってパスで味方をうまく操る。この日は前半のみの出場だったが6トライを奪い、海外修行の成果が花園でも出た。

女優井上和香のいとこにあたる湯浅泰正監督(54)は81-0の圧勝にも「勝って反省できることは良いこと。前回は本当に悔しかったので…。いまだに夢に出てきますから」。昨年度は初のAシードに選出されたが準々決勝で桐蔭学園(神奈川)に破れ、4強入りを逃した昨年の悔しさを、ずっと胸にしまい込んでいた。

同じ心を持った選手もベンチから試合を見つめていた。この日は、試合に出ることのなかったSO安藤海志主将(3年)だ。12月1日のプレー中に左肩を脱臼。「出られる状態にはありますけど…」と話すが、この日は安静に徹した。大会終了後の来年1月10日に手術を予定。代わってSOに入った辻野隼大(1年)は、本来FBの選手だが「ミスしてもいい。思い切って行こう」と背中を押してグラウンドへ。1年生の辻野は「グラウンドに入った瞬間、緊張はしました。でも安藤さんの分まで『絶対にやってやる』という気持ちになった」。試合後には湯浅監督が「(辻野を)ゲームキャプテンにしようかと思った」と笑みを見せるほど、安藤主将の「代役」を演じきった。

今季チームの練習着などには「NOW&HERE」と刻まれている。「今ここに、今その瞬間に」をテーマとして1分、1秒を惜しまずに練習してきた。今季はノーシードでの出場。FB二村は、はっきりと言う。「下から上にはい上がって『やってやる』という気持ちは常にある。悔しさをバネに、先輩たちを越していきたい」。その言葉には、強い意志が宿っていた。【真柴健】