ラグビーのトップチャレンジリーグ(2部)からトップリーグ(TL、1部)昇格を目指す近鉄のFB正面健司(36=前神戸製鋼)が新天地デビューを果たした。

1日、東大阪市の花園ラグビー場でTLのNTTドコモと今季初実戦となる練習試合。31-26で競り勝った一戦で、前半途中から出場し「むちゃくちゃ楽しかったです。久しぶりに『楽しい』という感覚」と笑顔を見せた。

練習試合のため、リザーブながら背番号は15。トレードマークのヘッドキャップをつけ、今季90周年を迎えた近鉄伝統のエンジと紺のジャージーに身を包んだ。見せ場は24-0の後半6分。相手陣の中盤でボールを受けると、右サイドを駆け上がって、新天地初トライだ。仲間と抱き合って喜び「絶対に取ってやろうと、狙っていました」と試合を決定づけた。

昨季までは神戸製鋼に在籍。チームはTL優勝を果たしたが、正面のリーグ戦出場はなかった。

「ここ数年、練習試合でも出番は40分とかしかなかった。今日は70分? ぐらいでしたが、久しぶりに『試合をした』という感じ。本当に楽しかったです」

神戸製鋼退団発表時から現役続行を表明。だが、2月まで他チームからのオファーが届かず「このまま静かに引退かな…」とも考えながら自主練習に励んだ。3月に入って近鉄から声がかかり「選手としてやるからには試合に出て、勝つことに貢献したい。どんな形でもチームに貢献して、自分の役割をプレーや行動で示したい」とモチベーションは高い。

TL昇格に向け、春は攻撃面に重点を置いてきた近鉄。前半は24-0と圧倒したが、後半に相手の猛攻を受け、有水ヘッドコーチは「去年から変わろうとして、変わったところと、変わりきれなかったところが出た」と全体を評価した。

その上で正面については「実績は十分。期するものもあると思う。今日の後半のように流れが悪い時に、何にフォーカスをするのか。ゲームを読むところでも、存在感を示してほしい」と期待を寄せた。

「近鉄に来て、新鮮なところ…。花園で普段から練習しているところから、新鮮です」

そう言って、優しく笑ったベテランの底力が試される。