日本が5トライを奪い、トンガを圧倒した。前半に3トライを決めて流れをつかむと、トンガが得意とする肉弾戦でも真っ向勝負。相手を1トライに抑え、2連勝を飾った。指揮官不在の中、過去8勝9敗の難敵を攻略。W杯まで47日。本番で対戦するサモアに似た相手に自信を深め、勢いを加速させた。

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指揮官不在の中、日本が強さを見せつけた。過去8勝9敗とフィジカルの強さを生かしてくる難敵に、登録FWの平均体重で8・8キロ劣る日本が真っ向勝負で応戦。接点で相手の勢いを止めると、前半9分にNO8マフィが先制トライを決め流れをつかみ、前半で3トライを奪った。後半32分にはSO田村の相手裏への絶妙なゴロキックにWTB松島が反応。得意のパターンでも崩し、ダメ押しのトライで勝利を決定づけた。

16年秋に就任したジョセフHCが選手に求めてきた「自主性」が不測の事態で生きた。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、トンガ、フィジー、サモア、韓国、日本と、8つの国にルーツを持つ選手たちが1つに結束するため、チーム全体で「グローカル(グローバル+ローカル)」という言葉を掲げ、結束を目指してきた。

トンガ戦に向けては、リーチ主将が、トンガ出身で日本代表としてW杯に3大会出場したラトウ・ウィリアム志南利氏(53)の功績をミーティングで全員に共有。29年前、初対戦したトンガ戦で複雑な思いを振り切り、日本代表を勝利に導いた先輩の姿を通し、「日本代表として戦う意味」「JAPANのジャージーを着る意味」を説いた。

6月中旬からの約1カ月の宮崎合宿では、子どもたちに人気の楽曲「パプリカ」がチーム内で流行。外国出身選手も日本語の歌詞を覚え、トレーニングルームなど、いたるところで陽気なリズムが鳴り響いた。PNC初戦のフィジー戦前に盛岡市内で行われたファンイベントは、当初はメンバー外の選手が参加予定だったが、選手の意思で全選手が集合。地元の子どもたち約150人と「パプリカ」を合唱し、士気を高めた。

選手主体のチームは確かな手応えをつかみ、W杯へと突き進む。CTB中村は「ジェイミーがいなくても、いつも通りのプレーができた。そこにチームとしての成長を感じられた」と力を込めた。2連勝で、チームの進む方向性に迷いはなくなった。日本代表が手応えを胸に、最後の仕上げに入っていく。【奥山将志】