収穫は課題が見つかったこと-。前サントリー監督の沢木敬介氏(44)は日本の快勝を冷静に分析した。

41-7とスコアは一方的だったが「ひどすぎるトンガに日本が合わせた」と厳しく指摘。改善点としてプレー精度の向上と状況に応じた戦術選択を挙げた。快勝にも気を引き締め「直前は課題が出た方がいい」と前向きに解説した。

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スコアだけ見れば圧勝だが、手放しで喜べる試合ではない。まず、トンガがひどすぎた。暑さからかコンディションが見るからに悪く、チームとしても機能していなかった。インプレー(実際にプレーしている時間)も29分25秒と短すぎ。日本は、そんなトンガに合わせてしまった。

課題の1つは、ミスが多かったこと。いい攻めの形でチャンスを作っても、パスミスやノックオンで自らつぶした。攻め込んでのハンドリングエラーなどスキルのなさが目立ったし、オフサイドなど不用意なペナルティーも多かった。

攻撃時の判断も良くなかった。相手がラインアウトに苦しんでいただけに、もっと(タッチ)キックを狙うべきだった。特に後半、戦術的なキックを多く使えば、もっと楽にトライが取れたはず。戦術的にキックを使い分けることが、強豪との戦いでカギになる。

もちろん、良かった点もある。ショートパスで前に出られたし、22メートルライン突破をスコアにつなげることができていた。ラインアウトの成功率が高いのはもちろん、相手が低かったのはいいプレッシャーがかけられていたからだ。タックル成功率も高く、特にダブルタックルは効いていた。個々のタックル意識が改善されてきた証拠だろう。

ただ、この試合はあくまでもW杯本番に向けてのもの。快勝で悪い点を見失うよりも、しっかり課題が見えた方がいい。フィジー、トンガと「仮想サモア」に連勝したし、今の日本なら実力は間違いなくサモアより上。それでも、修正すべき課題を克服しないと、勝利は確実にはならない。