史上初のW杯3連覇を目指す世界ランク2位のニュージーランド(NZ)が、同4位の南アフリカに23-13で勝利した。南アフリカの猛追に手を焼いたが、総合力で勝ちきり、W杯での連勝を15に伸ばした。

両者の対戦は、W杯1次リーグでは初。W杯通算5度目の対戦でNZが勝ち越した。1987年の第1回大会から続く、1次リーグの無敗記録を29に伸ばすなど、日本のいるA組のチームと戦う決勝トーナメント1回戦へ、1歩前進した。

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漆黒の壁が、南アフリカをはね返した。試合開始前。スタジアムに集まった、6万3000人超えのラグビーファンが固唾(かたず)を飲んで見守った。NZが披露した儀式「ハカ」は、「カマテ(私は死ぬ)」ではなく、05年から使われている「カパオパンゴ(黒のチーム)」。最高潮の雰囲気の中で始まった試合は、試合開始1分で先制を許す苦しい展開に。何度もトライラインに迫られたが、ワンチャンスをことごとくものにして逆転勝利した。

2人の司令塔が、南アフリカの堅守を破った。2度目のW杯出場のFBのB・バレットは、15年W杯の準決勝の南アフリカ戦と決勝のオーストラリア戦で計3トライを奪うなど、高い攻撃力が持ち味。16、17年にワールドラグビーの年間最優秀選手に選ばれた。イアン・アシスタントコーチは「彼はチームの戦術の中でもキーパーソン。いい判断をする司令塔」と太鼓判を押す。

もう1人は、昨年6月に代表デビューしたSOモウンガ。W杯初出場ながらも、先制トライにつながるプレーなどでチームをリード。同コーチは「リッチー(モウンガ)も司令塔。リッチーに対してもバレットが自信を与えている」と“ダブル司令塔”が、互いを支え、チームも支えた。W杯2連覇に貢献してきた、代表キャップ80のFBベン・スミスと同54のCTBソニービル・ウィリアムズが途中出場するなど、チーム層の厚さも強みの1つだ。

試合終了後、漆黒の集団は観客席に向かってお辞儀をした。主将リードの提案で「できるだけ日本のみなさんとつながりたい。とても愛してくれていた。勝つと言うことで愛情を返す」と日本人ファンへ感謝。異国の地でも大声援をもらった。過去のW杯優勝チームで1次リーグで負けたチームは0、というデータがある中、3連覇に向けて最高のスタートを切った。【佐々木隆史】