世界ランキング9位の日本代表が大金星を挙げた。過去の対戦が9戦全敗だった同2位アイルランドを19-12で破った。SO田村優(30=キヤノン)のPGで食い下がり、後半18分にWTB福岡堅樹(27=パナソニック)が逆転トライ。伝統ある欧州6カ国対抗のチームにW杯で初めて勝ち、勝ち点9で1次リーグA組首位に浮上した。日本は10月5日にサモア(16位)、13日にスコットランド(8位)と対戦する。優勝候補を破り、初の決勝トーナメント進出がはっきり見えてきた。

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ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC、49)も感無量だった。「自分たちは自分たちの信念を持って貫いた。それが勝因。この3年間かけて、この試合に焦点をあてていた。選手がよくやってくれた」。ピッチで歴史的快挙を成し遂げた教え子を、手放しでほめた。

思わぬハプニングに見舞われた。アイルランドのハイボール対策で先発出場予定だったWTBトゥポウが、前日の練習で太ももを負傷。急きょ、控えのレメキと入れ替わり、6日の南アフリカ戦で右ふくらはぎを負傷してベンチ外だった福岡を控えに投入。試合中にはNO8マフィが前半にあばらを負傷し、後半から出場予定だったリーチが途中出場した。まさかのドタバタ劇。しかり、リーチが愚直なタックルで何度もピンチを救い、途中出場した福岡が決勝トライを決めるなど、チームは慌てることなく総合力で勝ちきった。

時間をかけて「ONE TEAM」を深めた。チームに自主性を求めた、ジェイミーHC。9人のリーダーグループの他、ポジションごとのグループなども作り、ことあるごとにグループは集まった。練習前後にプレーのことを話し合うのはもちろん、時には合宿地の夜の街に繰り出し、気楽に食事をすることもあった。CTB中村は「本音で言い合える関係を作ろうと。外国人、日本人関係なくよりサポートしようという意味」と狙いを話す。積み上げてきた自主性があったからこそ、ハプニングの連続にも、1人1人が役割を理解して遂行した。

指揮官も、チームの自主性を高く評価した。「結果を何が何でも出していくリーダーを育ててきた。マイケルが1人のリーダーと思われているが、それぞれの選手が貢献するチームの文化を創ってきた」。ジョセフHCが追い求め続けたものを、選手全員が体現した。