ウェールズがフランスとの激闘を20-19で制し、2大会ぶり3度目の4強進出を決めた。前半はエリア支配率95%を許し、10-19。後半8分にフランスのロック・バハマヒナが一発退場となってから反撃。同33分にゴール前スクラムのこぼれ球からNO8モリアーティがトライ。ゴールも決めて逆転した。11年大会準決勝は14人の戦いで8-9と涙をのんだフランスに、9年越しの1点差勝ちで雪辱した。

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ウェールズは諦めなかった。10-19で迎えた後半8分、フランスのバハマヒナが密集でフランカーのウェーンライトに肘打ちを食わせてレッドカード。15人対14人の戦いになった。PGを決め6点差。1トライ1ゴールの逆転圏に迫った。なおもゴール前に攻め込んだ。しかし、相手ボールスクラムに…。だが、ドラマはそこから始まった。

「本当にフロントローがいい仕事をしてくれた」。ウェールズ史上最多132キャップのロックA・ジョーンズ主将が言う。FWが執念のプッシュ。球が弾き出され、宙に舞う。フランカーのティプリクがキャッチし、ゴールライン寸前まで持ち込み、NO8モリアーティがトライを決めた。GKも決まり、残り6分でついに1点上回った。

「皮肉にも8年前は1点差で負けたんだが…」とガットランド監督は言った。ニュージーランド開催だった11年大会の準決勝。フランスに8-9で負けた。前半17分に危険なタックルで1人退場、残り63分間を14人で戦い、力尽きた。

「あの試合に関わった選手、スタッフが忘れるはずがない。あの記憶があったから、今日、いい準備をして臨めた」と同監督。07年に就任し、今大会で勇退する指揮官もその場に居合わせていた。

前半はフランスのスピードあふれるBK陣のテンポのいい攻撃に圧倒され、獲得したエリアはわずか5%。指揮官はハーフタイムでゲキを飛ばした。

「後半は先に点を取ろう。そうすればチャンスは来る。ネバー・ギブ・アップだ。闘志を尽くそう」

2月の欧州6カ国対抗では前半0-16からフランスを逆転した。自信があった。そして底力を発揮した。

8年前の“合わせ鏡”のような戦い。今度は、その裏返し、W杯で3度目の準決勝に駒を進めた。勝ち抜けば、決勝トーナメントは全3試合になる。ガットランド監督は「240分が人生なら、あと160分。ギブアップせず、準備をして走りきりたい」。ウェールズ初の決勝、そして頂点へ。正念場はこれからだ。【加藤裕一】