不運にも夢舞台に立てなかった釜石市の少女が、日本ラグビーの新たなスタートに立ち会う。

16日に釜石鵜住居復興スタジアムで行われるトップチャレンジリーグ釜石シーウェイブズの今季開幕戦(対コカ・コーラレッドスパークス)で、佐々木璃音さん(小4)がボールデリバリーキッズを務めることになった。璃音さんは10月13日に同会場で予定されていたワールドカップ(W杯)ラグビー、カナダ-ナミビア戦で、試合球を持って入場する「DHLボールデリバリーキッズ」の大役が決まっていたが、台風の影響で中止に。動画で両国国歌を覚えるなど、地元開催のW杯を楽しみにしていた。

父忠平さん(35)がフェイスブックに投稿した率直な思いが反響を呼んだ。娘のショックを想像し涙する父に対し、「いくらワールドカップでもこんな災害の時にやらないよ」とぐっと涙をこらえた。東日本大震災で甚大な被害を受けた地で、幼い頃から自然災害の怖さを学習してきた10歳の小学生は気丈だった。その後、マスコットキッズには決勝戦での救済措置が発表される中、璃音さんには朗報は届かなかった。さすがにしょんぼりすることもあったが、今回釜石シーウェイブズ桜庭吉彦GM(53)からの打診には「やってみたい」と即答した。

1日に、忠平さんと3位決定戦をプライベート観戦した際にはサプライズがあった。カナダ-ナミビア戦で使用されるはずだった試合球とともに、記事を読み自らのファンであることを知った日本代表FB松島からは、関係者を通じサイン入りボールとメッセージビデオが届けられた。USBメモリーには「璃音ちゃん、今回ボールデリバリーできなかったけど、3位決定戦楽しんでください」とボールをパスする映像が入っていた。後日、璃音さんは「松島選手、ボールとメッセージありがとうございます。これからも応援しているので頑張ってください。私もラグビー頑張ります」と感謝のビデオを返した。小1から釜石シーウェイブズJr.でプレーを続けるラグビー少女に、笑顔が戻った。【野上伸悟】