【トゥールーズ(フランス)25日(日本時間26日)=松本航】ラグビーW杯フランス大会で、日本代表(世界ランク13位)が28日(同29日)にサモア代表(同12位)戦を迎える。

15、19年と3大会続けて1次リーグ第3戦での顔合わせ。7月の前哨戦で敗れるなど、過去5勝12敗と大きく負け越すが、W杯では勝利を収めてきた。

開催地トゥールーズで調整する中、サモア戦勝利に貢献してきた最年長37歳のフッカー堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が好調を維持。FW第1列の頼れる男が、日本の先導者となる。

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フランス南西部で日光を浴び、堀江の上腕部に汗がにじんでいた。1球、また1球と、丁寧にラインアウトのスローを繰り返す。やるべきことは変わらない。1勝1敗同士。上位2チームの1次リーグ突破へ負けられないサモア戦を見据え、37歳は気を引き締めた。

「サモアって、むちゃくちゃ強い印象がある。毎回なめられないゲームになる。スクラムがすごく強くなっている。FWがセットピースで、どれだけ安定できるか。FW全員が認識し、同じ絵を見たところです」

4年前、8年前も第3戦でぶつかった。2大会連続のサモア戦経験者はFWでは自身と稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)とリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)、BKでは松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)の4人。体の強さを前面に出す相手を押し返し、ともに勝利した。

先発した前戦のイングランド戦はスクラムが安定。組むたびに相手と「『いく』『いかない』を探り合った」と全身で感じ、仲間を導いた。強豪相手に自信を得たが、7月のサモア戦では前半でリーチが退場し、スクラムの劣勢も敗因となった。堀江は「サモアの重たさを、僕らでどう消すか。相手のくせを話し合いながらやりたい」と切り替える。

頼れる男はぶれない。コロナ禍を経て、代表が活動を再開した2年前。自らの判断で距離を置いた。

「W杯に選ばれなくても、後悔しない方を選んだ」

夏は信頼する佐藤義人トレーナーと、体の使い方を見直す日々。背骨の下にある筋肉の使い方にこだわり、日常の歩き方まで変えた。

「自分のトレーニングをしないと、次のW杯はないと思った」

その上で日本代表の試合はテレビで見続けた。21年12月にこう明かした。

「不安はあります。もう代表に選ばれないかもしれない。(代表を気にしなければ)今の自分に満足しちゃうし、近づきすぎると不安で急いでしまう。両方を抱えながら、進んでいきます。全てはリーグ戦で見せる僕のプレー次第なので」

居場所の確保を最優先にすれば、常に日本を背負う選択肢も取っただろう。それでもあえて離れることを選び、22年1月開幕のリーグワンで初代MVPに輝いた。土台は築かれ、約2年半ぶりに代表へと戻った。

FW最前列の先導者には、フランスでともに過ごす仲間の絶大な信頼がある。スクラム担当の長谷川慎コーチからは「ベテランらしく、自分も頑張る姿を見せて、チームをいい方向に進めてくれている」と評された。4年の歩みを「感覚はいい。理想通り」と自己評価した上で、付け加えた。

「自分の中で天井は作りたくない。『もっともっと』という感覚。最後まで常に不安に思わないと、どこかで慢心する。『まだいける!』と思っています」

苦しむ時間帯、大きな背中は日本の力を引き出す。

○…プロップの具智元(グ・ジウォン、コベルコ神戸スティーラーズ)は、イングランド戦で負傷交代した不安を吹き飛ばした。右膝、左脇腹の状態が心配されるが「膝は順調で調子がいい。(コーチの長谷川)慎さんからは『強気でジウォンからいけ!』と言われています」とうなずいた。前戦後の2日間の休日はカツカレーを食べ、心も充電。自慢のスクラムに対し「FWの一番の役割。安定したらチームのプラス」と誓った。

【日本のサモア戦(15年以降)】

◆15年10月3日(英ミルトンキーンズ)26○5

W杯イングランド大会第3戦。FB五郎丸の2ゴール2PGなどで、前半を20-0。相手を1トライに抑えての勝利。堀江フル出場

◆19年10月5日(愛知・豊田スタジアム)38○19

W杯日本大会第3戦。前半は16-9とし、後半開始から堀江が出場。後半35分から福岡、松島の両WTBのトライでボーナス勝ち点

◆23年7月22日(札幌ドーム)22●24

前半30分にNO8リーチが一発退場。数的不利となり、前半は10-10。5点リードの後半24分に逆転を許した。堀江は後半途中出場