元横綱大鵬の納谷幸喜氏(67)が6日、横綱白鵬(23=宮城野)に「喝」を入れる。4月29日の横綱審議委員会けいこ総見を見て「燃えるものを感じない」と憂慮。その後のマイペース調整にも危機感を感じ、6日に行われる大嶽部屋での二所ノ関一門連合げいこに特別参加する白鵬を、初めて直接指導することを決めた。夏場所(11日初日、両国国技館)まで残り5日。優勝32回の昭和の大横綱が、若い横綱の闘魂に火をつける。

 期待するゆえの直接指導だ。白鵬を大嶽部屋に迎える前日、納谷氏はけいこ場におりて23歳の横綱を直接指導する決意を口にした。

 納谷氏「私もけいこ場におりますよ。白鵬が気になるからね。横審のけいこ総見で見ても、燃えるものを感じなかった。その後もマイペースぶりは変わらないと聞くし、もう、場所も近いのに、どういうことかと思うよ。直接見て、気になったことがあったら、遠慮せずに言いますよ」。

 32回の優勝を誇り、一代年寄だった納谷氏は、05年5月28日に日本相撲協会を定年退職した。娘婿の大嶽親方(元関脇貴闘力)に部屋を譲って以降、力士を指導する機会は減り、最近はけいこ場におりる回数も少なくなっていた。だが、横綱昇進時も横綱の心得をアドバイスするなど、目をかけてきた白鵬ののんびりぶりには、黙っていられなくなった。

 白鵬のしこ名は、熊ケ谷親方(元前頭竹葉山)が、肌が白かったこともあり「大鵬のように強い横綱に」と名付けた。だが、そのけいこ量は連日30、40番は当たり前だった大鵬とは比較にならないほど少ない。特に春場所後はイベントやテレビ出演などに忙しく、集中したけいこが減った。この日も宮城野部屋で兄弟子の龍皇と20番(18勝2敗)をこなしたが、緊張感のある内容とは言い難かった。朝青龍の調整がハイペースと知らされても「やれって感じだよ。自分は自分のペースでやるだけ」と気にする様子もなかった。

 納谷氏「横審で会った時も『焦らずにやれ』とは言ったが、横綱はどんな状態でもけいこ場では、ピシッとしているもの。全力士の手本なのだから」。

 一方で夏場所については白鵬は「2年前に初優勝して、去年は横綱昇進を決めた場所だし、3年連続で優勝したいよ」と話す。横綱になっても猛げいこを重ねてきた納谷氏ならではの指導が、目標達成への起爆剤になるか。大嶽部屋のけいこ場が熱くなりそうだ。【柳田通斉】