北の湖理事長(55=元横綱)の退任を求め、「クーデター」の動きが出てきた。6日、日本相撲協会の役員を除く親方衆で組織する年寄会(朝日山会長=58、元大関大受)の臨時総会が、東京・両国国技館で行われることになった。大麻疑惑の渦中にある平幕露鵬(28=大嶽)と十両白露山(26=北の湖)をかばい、8日にも判明する精密検査の結果を受け入れようとしない同理事長に反発する声が、協会内でも噴出。同会が理事長退陣要求を決議し、それを受けて理事会が招集されれば、北の湖理事長の退陣は避けられない状況になった。

 一連の大麻騒動に追われる角界に、大きなうねりが起き始めた。年寄会会長の朝日山親方はこの日、「もう、隠しても仕方のないことだ。明日(6日)、両国国技館で(臨時年寄会)やるよ」と明言した。開催理由については「こういう状況だから若い親方たちの声を聞くということ。議題がどうのこうのは言えない」と説明した。

 8月に元平幕若ノ鵬容疑者が大麻所持で逮捕、解雇された。それを受け、2日の力士会で抜き打ち簡易尿検査を行い、露鵬と白露山のロシア人兄弟力士から大麻の陽性反応が出た。協会は2人の尿検体を、世界反ドーピング機関から唯一公認を受ける三菱化学メディエンス(東京都港区)に検査を依頼。早ければ8日にも精密検査の結果が出る。

 しかし、白露山の師匠でもある北の湖理事長は「2人が否定している以上、(結果が黒でも)100%とは言えない」と発言。2人が服用していた鎮痛剤に反応した可能性などをあげ、さらに追加検査を求め、処分や自身の進退についても「事件化されていない段階ですぐには決めない」と反論し始めた。

 協会トップが、自分たちが始めた「抜き打ち検査」を事実上骨抜きにし、権威ある機関の精密検査も信用せず、自分の弟子たちをかばい続ける。この姿勢には、ある有力親方も怒りの声を上げた。「理事長は協会全体を見なければいけないのに、自分の弟子や露鵬をかばい続けるのはおかしい。鎮痛剤を使用している力士は数多いのに、2人だけに反応した事実は大きい。テレビで普段通りにサウナへ通う姿が映されているが、こういう非常時に緊張感が足りないと思う」と厳しく指摘した。

 また、別の中堅親方は「協会としてドーピング検査を年内に実施しようとして動いているのに、それと同種の検査を否定すること自体が考えられない」。さらに別の親方も「理事長は決断が遅すぎる。これまでの不祥事の際もそうだったし、今回も遅らせようとしている。もう、このまま見過ごすわけにはいかない。ついに(クーデターが)始まったという感じだ」と、北の湖理事長の能力を疑う声が一気に噴出し始めた。

 臨時年寄会がどう動くかは、始まってみなければ分からない。しかし、師弟の関係同様に「上には逆らわない」体質の角界で、下からの突き上げが起きようとしていること自体が極めて異例だ。ある50代の親方は「もちろん理事長退陣要求を決議する可能性はある」と断言した。この決議を受けて、理事長に反発する理事が動いて臨時理事会が招集されることも考えられる。理事会では、現在9人の理事のうち3分の2以上の出席で議事を決議できる。解任動議が出され、出席理事の過半数が賛成すれば、クーデターは完了する。身内にも反発され始めた北の湖理事長は、まさに土俵際に追い込まれた。