<大相撲九州場所>◇14日目◇22日◇福岡国際センター

 大関昇進を確実にした関脇安馬(24=伊勢ケ浜)が、初Vに1歩前進した。大関琴光喜(32)を下手投げで破り、5日目から10連勝。来日した母と兄の前で2敗をキープし、横綱白鵬(23)とともにトップを守った。26日予定の大関昇進伝達式に向け、伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は改名も示唆。安馬は千秋楽で関脇把瑠都(24)に勝ち、白鵬が負ければ優勝。ともに勝てば、優勝決定戦となる。安馬と白鵬が敗れ、東前頭12枚目嘉風(26)が勝てば、3人での決定戦になる。

 安馬が「先輩大関」を圧倒した。左おっつけ、右のど輪で琴光喜をのけ反らせ、半身にしてから左の下手投げで転がした。5日目からの10連勝に「お母さんが笑ってくれるのが、一番うれしい」。20日に来日した母ミャグマルスレンさん(48)と兄ラグバドルジさん(26)が西升席で初観戦。祈るように手を合わせていた母にキスされると、照れ笑いした。

 26日の昇進伝達式に向け、周囲は慌ただしくなった。伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が明かしたのは、安馬の改名プランだ。

 伊勢ケ浜親方

 いろいろと考えます。(伝達式のある)水曜までに何とかしなきゃね。例えば(自分のしこ名の)「旭」で「旭馬」(アマ)もあるけど、部屋には伝統のしこ名もある。「清国」とかね。

 昨年11月、年寄安治川から「伊勢ケ浜」に名跡変更し、名門復活を託された。今年春場所前には、幕下以下16人中12人が改名。安馬、安美錦、安壮富士の関取衆(当時)は「昇進を機に」と考えていた。

 師匠の構想に、先々代である元大関清国の佐藤忠雄さん(67)の親族も前向きだ。「めでたいことですし、伊勢ケ浜部屋の大関は1人だけ。正式に依頼があれば、前向きに検討します」。安馬が了承すれば、「大関2代目清国」の誕生だ。

 安馬は「大関はすごい遠い存在だった。こうやって近づいて、フワッとしてるね」と話した。2敗キープで初優勝に前進したことに、後援者の「星ばっかり見てると、井戸に落ちるぞ」という檄(げき)が励みになったという。「安馬」として最後の日になるかもしれない千秋楽。まずは足もと見詰めて、把瑠都との関脇対決に全力だ。【近間康隆】