大相撲時津風部屋の序ノ口力士、時太山(当時17、本名・斉藤俊さん)が昨年6月に暴行を受けて死亡した事件で、傷害致死罪に問われた兄弟子3被告に対する判決公判が18日、名古屋地裁であった。芹沢政治裁判長は「刑事責任は重い」と述べながらも元親方の山本順一被告(58=同罪で起訴)の指示だったとし、怒涛こと伊塚雄一郎(26)明義豊こと木村正和(25)両被告に懲役3年(求刑それぞれ懲役3年6月)、時王丸こと藤居正憲被告(23)に懲役2年6月(求刑懲役3年)、いずれも執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。日本相撲協会は同日、3被告を解雇した。

 実刑は免れた。兄弟子側の訴えが通じ、下されたのはいずれも猶予判決だった。判決が言い渡された瞬間、白シャツにスーツ、丸刈りの3被告は直立不動のまま。裁判長に「執行猶予とは社会の中で更生することです。被害者の冥福を祈って身を慎み、2度と犯罪を起こさないように」と諭されると、深々と頭を下げた。

 暴行は親方の指示―。兄弟子側は傷害致死罪を認める一方、山本被告との責任の差を強調してきた。裁判長は2日間にわたる暴行を「刑事責任はいずれも相当に重い」と断罪。だが「弟子が親方の指示に逆らうことが極めて困難であることは、複数の相撲部屋関係者らも口をそろえている。(犯行は)山本の指示によって行われた」とした。主張がほぼ認められ、兄弟子側の原木弁護人は「刑の執行が猶予されましたので、弁護側からの控訴申し立てはしません」と話した。

 師匠の影響力を、司法も認めた形だ。現在、公判前の整理手続き中の山本被告は、暴行指示を否定しているとされる。だが裁判長は指示に加え(1)ビール瓶で殴打(2)ぶつかりげいこ中も木製棒で殴打(3)けいこ後も放水したり木製棒で腹部を押した、と山本被告が率先して暴行したとした。「被告人3名の被害者の死亡結果に対する責任の程度は、山本のそれとは顕著な差異があるといわなければならない」。来年2月以降とされる公判への影響は必至だ。

 伊塚被告は「おわびしても、おわびしきれない。一生をかけて償っていきたい」。木村被告は「この判決を重く受け止め、生涯を懸けて罪を償っていきたい」。藤居被告は「裁判を通じて真実を明らかにしようと努力したつもりです。これで終わったと思っていません」と弁護士を通じてコメントした3人はこの日、相撲協会を正式に解雇された。原木弁護人は「木村被告は、相撲中継の映像を見るだけで苦しい、と言ってました」という。

 若く尊い命を奪った事件。裁判長は「相撲部屋では体罰が常態化しており、制裁的な暴行に自制心をまひさせていた」と、角界のあしき体質も切り捨てた。