<大相撲初場所>◇千秋楽◇25日◇東京・両国国技館

 耳に突き刺さる母国語が痛かった。白鵬が20分の長風呂から出てきた時、場内は優勝インタビューの朝青龍の弾むモンゴル語が響いていた。「失敗したな。負けちゃったよ…」。吐き出す言葉も力がない。ライバルの全勝Vは阻止したが、連勝ならず。朝青龍不在で角界を引っ張ってきたプライドは、粉々に砕かれた。

 「白鵬コール」に応え、本割はもろ差しで一気に前に出た。今場所最多46本の懸賞を両手でつかみ、先場所に続く決定戦に持ち込んだ。決戦へ向け動き回る朝青龍とは対照的に、付け人6人に囲まれ、背筋を伸ばし、黙想した。「決定戦は硬さや焦りもあったんじゃないかな…。本割は(朝青龍が)軽く感じたんだけど…。ひとつ落とし穴がありましたね」と悔やんだ。

 横綱在位10場所目。昨年春場所に続き、4連覇の夢を再び先輩横綱に阻まれた。朝青龍が皆勤した場所で逆転V経験がないジンクスも、破れなかった。帰り際、3場所守った東支度部屋の一番奥には、記念撮影を待つ朝青龍の後援者がいた。今までで一番悔しい、と聞かれ、小さくうなずいた白鵬。窓ガラスを鏡代わりに着物に着替える間、敗者の顔を見詰め、目に焼き付けていた。巻き返しの春は、もう始まっている。【近間康隆】