<大相撲夏場所>◇6日目◇15日◇東京・両国国技館

 横綱朝青龍(28=高砂)が、また「お騒がせ」?

 結びの一番で新小結栃煌山(22)を下して支度部屋に戻った後、のどの痛み、せきなどを訴えて相撲診療所に直行した。診断は37・2度の発熱を伴う軽いかぜだった。ただ場所前から日本相撲協会が新型インフルエンザ対策を講じていただけに、周囲は一時、騒然となった。この日は2横綱、5大関そろって勝利。横綱、大関陣全員が出場し、そろって勝ったのは07年名古屋場所11日目以来となった。

 朝青龍が突如、意外な行動に出た。取組を終え、西の支度部屋からいつものように地下駐車場へ向かう。だが乗り込んだのは車ではなく、相撲診療所へとつながるエレベーター。朝青龍の周囲は騒然となった。

 診療所には約30分滞在した。朝青龍を診断した吉田博之所長は「『せきとたんがひどく、胸も痛い』と言っている。37・2度の熱がある」と説明。胸部エックス線検査もした上、「インフルエンザの検査も行ったが、ただのかぜですね。今、抗生物質を点滴しています」と続けた。

 新型インフルエンザの感染拡大が話題となり、協会も力士らにマスクの配布などを行っていた。この日はライバル横綱白鵬が連勝記録を更新。そんなタイミングで、また「お騒がせ」だ。吉田所長が「一般人なら『休め』と言うけど、力士なんだからそうはいかない。『うまいもの食って寝ろ』と言っておいた」と収束させたが、朝青龍が話題をさらった形になった。

 朝青龍の様子は、支度部屋からおかしかった。勝敗によらず、普段なら風呂から出ると報道陣の方を向いて取材を受ける。だがこの日は人垣に背を向け、質問をシャットアウトするように床山に頭を結わせた。

 診療所から出てきた朝青龍は「かぜです。熱はないよ。前からせきが重いんだよ。結構、気にしていたんだけど。暑くなったり寒くなったりしてるから」。マスクで口を覆っていたが、舌は滑らかだった。

 取組では、明徳義塾高の後輩栃煌山を破って5勝1敗とした。やや立ち遅れて相手に右差しを許しかけたが、最後は力の差を見せて押し出した。診療を終え、車へ乗り込む際にも「閉めろ、ホラッ!」と付け人に怒鳴る始末。わずか30分あまりの「かぜ騒動」の後は、いつもの朝青龍に戻っていた。【山田大介】