相撲界から景気回復の大号令だ~。元関脇貴闘力が師匠を務める大嶽部屋に、珍名力士が誕生した。三段目の吉野(21)が「右肩上り(みぎかたあがり)」に改名。29日に発表された名古屋場所(7月12日初日、愛知県体育館)の新番付にも、しっかり「右肩上り」として載った。「景気も成績も右肩上がりに」と考えた大嶽親方から、本人が正式に聞いたのはこの日夕方。思わぬ改名にも、右肩上りは「験のいい名前だし、頑張れます」と前向きだ。

 真新しい番付を折る手が、止まった。新番付発表のこの日朝、右肩上りは部屋関係者の不思議な声を聞いた。「お前、名前変わったぞ」。ん?

 西三段目3枚目には「吉野改め右肩上り」と書いてあった。

 「え?

 て感じでした。5月場所の前に聞いていたけど、ホントに変わるとは…。ちょっと笑ってしまいました」。夏場所前に大嶽親方から「改名案」は聞いていた。ただ「(大嶽親方の現役時代の)「○○力」か(先代大鵬親方の)「○○鵬」かと思っていた」という。正式に師匠から本人に「通告」されたのは、この日の夕方だった。

 当の大嶽親方は大まじめだ。「不景気な時代に、暗い世の中が明るくなればと思って付けました。みんなが応援したくなる名前ですよね。もちろん本人の成績もそうなって欲しい。吉野に携わってくれるすべての人が、幸せになって欲しいですから」。

 「命名者」の思いを知り、右肩上りも前向きだった。入門6年目の部屋頭も、この1年は幕下と三段目を行ったり来たり。「せっかく考えていただいたし、験のいい名前。前向きになれますよね。右肩下がりになって『また変える』ってならないよう、3場所くらい連続して勝ち越さなきゃ」と意気込んだ。

 館内に「みぎかたあがり~」の声が響く一番は、注目を集める。「僕が相手なら笑ってしまうな。集中しておきますよ」。知人や関係者に番付を郵送する際には、差出人である自分のしこ名を2度、書き間違えてしまった。「あんまり書くことがなかったから、『肩』を間違えちゃって…」。慣れるには、もうちょっと時間がかかりそうだ。【近間康隆】