元力士(22)による「新弟子詐欺騒動」が起きていることが15日、分かった。日本相撲協会の規定では力士を引退すると、復帰はできない。しかし、この元力士は、かつて相撲界にいたことを隠した上で、複数の部屋を訪れ、入門希望をにおわせて各部屋から飲食の接待、小遣いをもらうなどした疑いが強い。

 関係者の話を総合すると、元力士は中学卒業後、03年春場所で初土俵を踏むも同年九州場所を最後に引退していた。だが、今年5月ごろから複数の部屋に電話で「大阪の大学の通信教育を受けている22歳でラグビーをしています。相撲に興味があるのでけいこを見たい」と申し出ていた。7月には名古屋の立浪部屋に数泊し、部屋関係者に入門希望を明言。飲食の接待を受けた上で後援者、立浪親方(元小結旭豊)からも含めて計数万円の小遣いをもらっていた。だが、部屋関係者が「名古屋場所を見に連れていく。横綱にも会わせる」と言った途端、「急にバイトが入った」と言うなどして姿を消したという。

 8月末には桐山部屋に電話をかけ、大阪で桐山親方(元小結黒瀬川)と面会。2万円を受け取り、9月上旬、都内の同部屋に宿泊していた。同部屋の力士は「『相撲は未経験』というのに、しこを踏ませるとうまかった。やたらと『飯に連れてってください』と言ってきた」と振り返る。元力士は桐山親方に「どこの部屋にも行っていない。この部屋に入る」と入門希望を伝えたが、今月12日に桐山親方が、立浪親方と話して元力士のウソが発覚。すぐさま部屋を追い出した後、桐山部屋の力士が「あの男、相撲教習所で見たことがある」と気づき、03年相撲名鑑と照合して、入門資格のない元力士だったことが発覚した。

 桐山親方によると、元力士は188センチ、110キロで「いい素材に思えた」という。だが、後に同部屋を訪れる前に友綱部屋に宿泊して3万円を受け取るなどしていたことも分かった。弟子不足に悩む相撲部屋の弱みにつけこんだ行為に、いずれの親方も「だまされた」と憤る一方で「これも勉強」と、警察に被害届を出す意向はないという。