横綱朝青龍(29=高砂)の暴行騒動はなかった!?

 初場所中に知人男性に暴行したとされる問題で、被害者側が「暴行されたと言ったのはウソ」などの文面にサインした書類が日本相撲協会に提出されることが1月31日、分かった。警察が事情聴取を検討し、協会からも「解雇」などの厳罰が必至な窮地に、暴行自体を否定する急展開。だが、被害者側の謎めく“変心”には多くの疑問が残る。朝青龍はこの日、元前頭潮丸の東関親方の引退相撲に参加したが、2日続けて無言。一方で、2人の個人マネジャーは警察に事情聴取された。

 土俵際での、うっちゃりなのか。四面楚歌(そか)の朝青龍が、驚くべき手を用意していた。初場所中に殴ったとされる知人男性が、ここにきて暴行を否定してきたのだ。協会関係者は「協会に、相手が『暴行されたと言ったのはウソ』と認めた書類を出すようです」と明かす。前日30日には警視庁麻布署が事情聴取を検討。横綱審議委員会の鶴田委員長も「引退勧告」を示唆している。がけっぷちの状態で、まさかの展開だ。

 師匠の高砂親方(元大関朝潮)は「明日の理事会で『同意書』みたいなものを見せます」と話した。弁護士を通じ、この日までに被害男性との「同意書」を作成。2月1日に行われる新理事最初の「理事会」で説明する。横綱による一般人への暴行騒動で、クビ覚悟の状態。「暴行はなかった」となれば、情勢は大きく変わる。

 被害者の主張が180度変わった。謎の変心ぶりには、多くの疑問が残る。暴行がなかったのなら、なぜ最初から言わなかった?

 成立したと言っていた示談は何についてか?

 被害者はなぜ鼻の骨を折り、なぜ警察に相談に行ったのか…事情聴取や解雇がちらつくタイミングでの急展開だ。関係者は「示談金は1500万円以上らしい」と明かすだけに、朝青龍サイドから何らかの働きかけがあったとも疑われる。

 当の朝青龍は元前頭潮丸の東関親方の引退相撲に参加した。問いかけには無言を貫き、役員室では高砂親方や同じ高砂一門の九重親方(元横綱千代の富士)らと10分間、話し込んだ。高砂親方は「どういう経緯だったか、もう1度調べた。本人は酔っていて覚えていない。殴った記憶はない、という感覚にしか取れない」と説明した。

 暴行が発覚した21日、個人マネジャーの一宮章広氏が相手だと名乗り出た。高砂親方は「1つだけ言えるのは、(マネジャーの)一宮が『自分が殴られた』と言ったことが大きな間違い。わたしと朝青龍が虚偽の報告をしたことはない」と話す。ただ、朝青龍は翌22日に「そのとおり」と、一宮氏が相手だと言っている。なぜ暴行の事実がないのに、マネジャーを殴ったと言うのか。これまでの発言の矛盾が、あちこちに起きることになる。

 この日、2人の個人マネジャーは警視庁に事情聴取された。協会の処分は「同意書」で変わるかもしれないが、警察は真実を追求する。目撃者もいる状況で、本当に暴行はなかったのか。朝青龍に近い関係者は「横綱は覚悟を決めている」と言うが、捨て身の逆転技の結果は、まだ見えない。世間を騒がせ続ける暴行騒動。朝青龍の言い分と、協会の対応が注目される。