<大相撲春場所>◇千秋楽◇25日◇大阪府立体育会館

 関脇鶴竜(26=井筒)は、小声で言った。「届きそうで、届かなかった。優勝するには、まだ早いということ…」。支度部屋で悔しさをにじませた。勝てば初優勝が決まる豪栄道戦。右のほおを張られ、もろ差しから寄られた。優勝決定戦は、白鵬に負けた。「横綱は横綱ですね。経験の違いじゃないですかね」。本割と違う独特の雰囲気の中で実感した。

 優勝は逃したが、自身最多の1場所13勝を挙げ、殊勲賞と技能賞を受賞した。審判部は、大関昇進を諮る臨時理事会の開催を要請。北の湖理事長(元横綱)が了承し、昇進は事実上、確定した。所要62場所の昇進は、外国出身力士としては最も遅い。伝達式は28日。吉報を伝える使者は、雷親方(元前頭春日富士)に加え、入門時から世話になった錣山親方(元関脇寺尾)に内定した。

 口上について井筒親方(元関脇逆鉾)は「シンプルにしたいね」と、思いを口にした。4月にはモンゴルから両親が来日予定で、年内には昇進披露パーティーも行う。取組後、鶴竜は部屋の千秋楽祝賀会で、尾崎紀世彦の「また逢う日まで」を歌い「来場所は優勝できるように、精いっぱい頑張ります」と、昇進後の決意を示した。【佐々木一郎】