<水泳世界選手権:競泳>◇27日◇上海

 男子200メートルバタフライの松田丈志(27=コスモス薬品)が、あと1歩のところで大金星を逃した。「水の怪物」マイケル・フェルプス(26=米国)と世界舞台の決勝で3度目の対戦。先行する王者を150メートルのターンで一時は逆転したが、最後の直線でかわされた。1分54秒01のタイムで05年大会以来、2度目の銀メダルにも笑顔はなし。来年のロンドン五輪に向けて「最後まであきらめず、挑戦していく」と雪辱を誓った。

 怪物の背中は、松田にはしっかり見えた。序盤からフェルプスを追い、前半100メートルを53秒台で突っ込んだ。粘り強く追いかけ、150メートルのターンで逆転。しかも1分23秒37と日本新ペースだ。歓声は高まり、大金星ムード。しかし、最後の競り合いで力尽きた。

 0・67秒遅れの1分54秒01で2着。05年以来の銀メダルにも「悔しい。100のターンあたりで並んでたのが見えたので、いけるんじゃないかと思った」。どこにも笑顔はなかった。

 08年北京五輪、09年のローマ大会ともフェルプスの壁は厚く、銅メダル。打倒フェルプスを掲げ、体全体を大きく使ったよりダイナミックなフォームを追求し、体重も約5キロ絞った。前半付いていけば、後半に勝機がある-。思い描いたレースプランは150メートルまでは完璧だった。しかし、最後に計算が狂った。久世コーチが「向こうは100メートルから150メートルで少し抜いた。最後に余裕がなければ」と言えば、松田も「150のターンのバサロがうまい。そこはためてたんでしょうね。彼は武器を持ってるので、それに対抗するすべを考えないと」。百戦錬磨の男のすごさを実感した。

 それでも怪物をまた1歩、追い詰めたことには変わりない。200メートルバタフライはフェルプスにとって特別なレースだ。01年以降の世界大会では10年間負けなし。それだけに、松田は「自分のレベルは上がっている。彼は北京以降、向上している部分があまりないのかも。そういう意味では近づいたのかもしれない」。

 折しも来年の五輪開幕まで、ちょうど1年を迎えたこの日。銀メダルという結果以上に、大きな手応えをつかんだ。松田は「数字通り150までは、来年に向けていい準備ができていると思う。来年の五輪が最後、あきらめず、挑んでいく」。ロンドンでの一発逆転に向けた365日。そのカウントダウンが始まった。【佐藤隆志】