三冠目指して 後藤 死角なし
打の追求
「たまたま打撃が良いから使ってもらっているだけなんですよ。だから必死に練習しています」。数々の栄光を勝ち取ってきた後藤から思いもよらない言葉が出た。しかし、そういう危機感を持った彼だからこそ期待に応えてくれるのだ。
全日本4番今年は廣瀬・阿部が抜け、法大打線はいま一つ迫力に欠ける。しかし、後藤一人の存在がその大きな穴を埋める可能性は大きい。後藤は先月19日〜25日に台湾で行われた第21回アジア選手権大会に全日本メンバーとして出場した。出発前、後藤は「体は万全。良いところしかない。絶好調です」とうれしそうに語った。その言葉がウソではないことを示すように全試合4番に座った後藤は、17打数8安打、打率.471という見事な活躍を見せた。全日本で4番の座を譲らなかったのも称賛に値するが、4番できちんと期待どおりの結果を残せたことも自信につながるはずである。また、好調なのは良いのだが、この時期一番恐いのはケガである。しかし、「体の調子が良すぎるので、オーバーワークにならないように注意しています」と本人も言っているので心配はいらないようだ。
上へ上へ
これだけの打者であれば当然、相手からのマークも厳しくなる。配球を考え、きわどいコースで勝負してくる。もちろん四球も増えるだろう。しかし、そこは強打者が避けては通れない道である。法大の4番としてその困難を乗り越えた時、2度目の三冠王とリーグ優勝は果されていることだろう。当然優勝のカギを握るのはこの男しかいないのだ。
(蔵方 佑介) 後藤 武敏176cm・88kg 右投げ右打ち。愛称・ごっちゃん。1980年(昭和55年)6月5日、静岡県・浜松市生まれ。上島小3年から野球を始める。横浜・鈴木尚典選手と同じ浜松シニアでは4番三塁手。全国大会準優勝に大きく貢献した。その後横浜高校に進学。1年時、夏の甲子園に出場し代打でヒットを放つ。怪我で泣いたものの3年時には西武・松坂大輔投手等と共に甲子園春夏連覇 俺に任せろ!! 開幕投手 土居"14"
法大のエース・土居龍太郎。彼は昨年、一本目の柱としてチームを支え、絶対的な信頼関係を築いた。今年は全日本にも選ばれ、六大を代表する投手に成長。新しい球種に取り組むなど、今もなお、どん欲に進化し続けている。
法大のエース
昨年、土居は春・秋連続でベストナインに選ばれた。「チームに貢献したい」(土居)。このまっすぐな気持ちが、彼に力を与えている。 今季のカギ
3月、土居は後藤(文3)と共に全日本に選ばれた。昨年の活躍、そしてこの全日本への召集により、他大学は今まで以上に土居を研究してくるだろう。 そして開幕へ米国での合宿、全日本の台湾遠征、オープン戦−そして迎える開幕。休む暇なく組まれる過密日程の中、「100%を開幕に持っていきたい」。土居の心は、絶えず開幕を見据えている。一本目の柱は、この男しかいない。頼れるエースは、持ち前の粘り強さと、巧みな投球術で、今年も神宮球場を湧かせてくれるだろう。
(小田桐 由紀) 土居龍太郎(どい・りょうたろう)1981年1月11日生まれ 右投右打 181p・80s 高知高出身 背番号「14」 (通算成績)11勝4敗 防御率1.17 '00秋、最優秀防御率 チーム一丸で 法政大学野球部チーム評昨年、春季リーグでは優勝したが、これは他力でのもの。自力優勝を目指して臨んだ秋は2位。「今年こそは」という意気込みで2001年を迎えた。今年度主将の田中公浩(法4)を中心に「活・克・勝」というスローガンを掲げた。そして、これをもとにチームはリーグ戦に向けて準備を進めてきた。春季リーグ開幕まであとわずかだが、「雰囲気はいいですよ」と田中が言うように、選手達は順調な調整を続けてきたようだ。
米国での経験
今年は3月3日〜17日に米国のロサンゼルスで合宿を行った。ここでは主に現地の大学のチームと交流試合をやっていた。その中で田中は「ショックを受けた」という。「現地に行く前までは、米国の野球は大雑把というイメージがあった。しかし実際見てみると、バント・右打ち・中継プレーなどの細かいプレーがきっちりと基本に忠実にされていた。また練習に取り組む姿勢も見習うべき点が多かった」と話しており、また各選手にも得るものが多かったようだ。
競争このような状態においてチーム内では、互いに刺激しあい、激しい定位置争いが繰り広げられている。そこで山中正竹監督にオープン戦序盤の段階での選手起用の構想を聞いてみた。まず投手は、昨年実績を残した土居が中心になるだろう。問題はもう一つの先発枠である。山本隆之(営4)、藤井了(法4)、奈須耕一(法3)、亀川裕之(文3)、松本祥平(法2)が候補に挙がっているが、奈須が一歩抜け出しているようだ。 また野手は、ここ数年1番打者に悩まされてきたが、俊足好打の金井淳一郎(法3)、河野友軌(営3)の台頭でそれが解消されつつあるようだ。この二人と多井清人(営4)、南建三(法4)、青山修(文4)、田中公浩で外野を争う。 内野は後藤武敏(文3)が一塁手から三塁手にコンバート。空いた一塁を巡って三木康平(文4)、人見剛(営3)、長崎清一(営3)の3人にチャンスがやってきた。また、遊撃・二塁を昨年は三塁手だった清水昭秀(文4)、亘伸哉(営4)、沢村幸明(営3)が、捕手を浅井良(法4)、新里賢(法2)が争うことになりそうだ。 監督はリーグ戦を戦う中で重要なことは「投手陣を含めて守りの意識を強く持つこと」だという。六大学は好投手が多く、簡単に点がとれないことが予想される。だから「無駄な点をやれない」(監督)のである。この辺りが徹底されれば優勝への道が切り開かれていくだろう。
(斎藤 修一) 今季も日本一だ!! アメフト部
171cm74kg、RBとして決して大きいわけではない。しかし気持ちの中に抱く闘志の大きさは底知れない。白木周作(文4)がトマホークス甲子園連覇への道を切り開く。
(武田 教秀) 白木 周作(しらき・しゅうさく)171p・74s 日大高出身 背番号「36」文学部日本文学科4年 愛称=みのる 好きな言葉=シャカ 好きなタレント=渡辺満里奈 趣味=部員にイタデン 学生に一言=「試合を見にきて下さい」
アメフトコラム 遥かなるエンドゾーン
『学生主体』、法大トマホークスの特筆すべき特徴である。フルタイムの監督、コーチ、役員等を置き、チームを運営するチームがほとんどの中、トマホークスはチームの運営に関する全ての事を学生達自身で行っている。近年の学生スポーツの性質からして学生達だけで運営していく事は非常に難しいと言える。しかし、昨年トマホークスは自分達の手で作り上げたチームを、ついに学生日本一へと導かせたのである。
(アメフト取材班) 小林 桂一(こばやし・けいいち)185cm95kg 日大三高出身 法学部法律学科4年 愛称=ケイイチ 好きな言葉=進歩 好きなタレント=稲森いずみ 趣味=音楽鑑賞 学生に一言=「応援よろしくおねがいします」 今季こそ日本一だ!! ラグビー部新たな船出
昨シーズン、大学選手権で準優勝を果たした法大ラグビー部が日本一を目指し動き出した。前年の春シーズンは主将交代制をとったが、今季は主将を春から固定するやり方に戻した。そこで部員の投票により昨季、リーグ戦・大学選手権全試合スタメン出場を果たした浅野(経4)が新主将として選出された。主将になったときの気持ちを尋ねると「がんばろうと思った」というシンプルな答えが返ってきた。
昨シーズンは前半から大東大、日大などリーグ戦の強豪とあたり、さらにFWの主力がケガで出遅れるなど多くの不安がつきまとう中でのシーズン開幕となった。しかしケガの主力選手に代わりレギュラーに抜擢された浅野はLOとしてそんな不安を吹き飛ばすような活躍をする。二年生の時まで公式戦出場がほとんどなかった浅野だが、先輩の平塚(現トヨタ自動車)と共にラインアウトの中心になり、グラウンド狭しと走り献身的なサポートを繰り返した。試合を重ねる毎にまわりの評価を上げていきチームには欠かせない、いぶし銀的な存在へと成長していった。昨季の快進撃の立役者といっても過言で無いほどであった。武村監督もシーズン終了後「浅野が今シーズンのMVPだ」と語るほどの信頼をよせている。昨季の活躍に加えてケガの少ないことも一因となり部員も納得する選出となった。今季FWだけでなく法大の中心として希望が託された。 雪辱
課題としてあげたのは昨季から言われている「組織プレー」である。この部分での差が関東学院大戦で出てしまい優勝を逃してしまった。やはり関東学院大に対しては「負けたくない」という気持ちを浅野は強く持っている。それは全部員共通の思いだろう。昨シーズン、法大は二敗を喫したがその二敗とも関東学院大からリーグ戦、大学選手権決勝で喫したものだった。同じ相手に一シーズンで二度敗れるという苦杯をなめさせられた相手だけにその思いは痛切に伝わってきた。
(庄司 岳史) ◆ 浅野 良太(あさの・りょうた)184センチ・92キロ。本郷高校出身。経済学部4年。▽今シーズンの目標…「もちろん日本一」▽読者へひと言…「応援に来て下さい」
ラグビーコラム 栄冠目指して
昨季、法大の快進撃の原動力となったのは、相手の懐深く低く突き刺さるタックルだった。その中心となったのが赤沼源太(経4)と渡辺哲也(社4)の大学最強ともいわれるCTBコンビだ。特に大学選手権準決勝・慶大戦の勝因は、この二人が先頭となり全員が80分間、集中力が切れることなく弾丸タックルを浴びせつづけたことであった。綿密なスカウティングで知られる慶大の林ヘッドコーチも「予想以上だっ
た」と語ったこの二人は、まさに昨季の法大ラグビーの象徴であった。
(西岡 良修) 邑木(むらき)大躍進 陸上部
昨シーズン、法大陸上部は燃えに燃えた。為末(経4)、川畑(法大OB)のオリンピック出場に続き、箱根駅伝では大健闘の4位入賞。まさにオレンジ旋風の吹き荒れた年となった。そして今シーズン最も注目すべき選手は、法大陸上部の看板となる男、主将邑木隆二(経4)である。
飛躍
2000年6月、シドニーオリンピック最終選考。そこに邑木隆二の名前は無かった。苅部俊ニ(現・富士通・法大OB)との現役、OB対決。400メートル最後の切符を賭けた争いは苅部に軍配が上がった。このときから邑木の"世界"に対する思いは日増しに強くなっていくのである。
主将
「主将になり、これといって変わったことは無い。いいかげんな主将だと思われても困るけど」。花粉症で苦しそうな表情を浮かべながらも、終始笑顔の邑木。
(中山 明子) 絶対日本一になる!!フェンシング部
新チーム
「学生に敵はいない」。全日本選手権のフルーレ個人で準優勝を収めた新キャプテン渋木(法4)は、自信を持って言い切る。勝つことが当たり前。そんな常勝フェンシング部にややこしい言葉は必要ないのだ。サーブルの石山(営4)も「総合力で不安は全くなく、99%負けることは無い」と余裕の表情を見せる。一方エペも少数精鋭ながら、戦力、気力共に十分である。初々しさの残る2年の清野(営)からも「優勝します」との頼もしい言葉が。 目標
彼等の実力に見合う舞台、全日本選手権大会。昨年のその団体戦で彼等は、一冠も手にすることが出来ないという悔しい経験をする。「自分たちの強さがプレッシャーになってしまった」ことが敗因だ。しかし今年は違う。同じ失敗を繰り返すことのないように「強気でいく」と渋木。その勢いが彼等の強さをより引き出してくれるはずだ。
(嶋田 多江子) 新主将柳沢将之 サッカー部新主将に柳沢将之(社4)が決定。1年時から法大を支えてきた柳沢も今年、最上級生。"1部昇格請負人"は最後の年に全てをかける。
闘将の魅力
試合中、柳沢のコーチングの声は、ピッチ上そしてスタンドまでこだまする。前線から激しくプレスをかけてくれたFWには「サンキュー」とその労をねぎらい、相手に囲まれ慌てている仲間に対しては「簡単に!」と無駄なプレーは省くように適切な指示を出す。当たり前のことではあるが、90分間その声は止まることを知らない。その集中力こそ柳沢の最大の武器だ。 夢に向かってまた、今年は柳沢個人としても勝負の年となる。3月上旬に熊本で行われた第15回デンソーカップチャレンジサッカーに関東選抜B主将として参加。優秀選手に選ばれ、見事全日本大学選抜入りを果たした。「全てがアピールの場」と捉えている柳沢の狙いは8月に行われるユニバーシアードまで代表に残ること。そして、その先に見えてくる自分の夢「プロ入り」。精神力と高いモチベーションを持って自分の夢に突き進む柳沢将之、今まさに挑戦の時!
(鈴木 優介) 一部に懸ける想い バスケ部2月20日。市ヶ谷体育館にて法政バスケットボール部始動。昨年二部リーグ優勝、一部昇格を果たした法大にとって今年は、真の力を試される大事なシーズン。馬場コーチに今シーズンにかける想いを聞いてみた。
今季より、正式に就任した馬場コーチ。コーチは学生時代バスケ部に在籍し、法大の黄金時代を築いた名プレイヤーでもある。
(八木下 優里) バレー部高さでパワーでスピードでV誓う バレー部4月7日、平成13年度春季関東大学男子1部バレーボールリーグ戦が駒沢体育館で幕を開ける。我が法大は今季、新主将・大角(営4)を始めとする実戦経験豊富な4年生が全員でチームを引っ張る。即戦力の呼び声高い1年生も合流。開幕を間近に控え、優勝を狙うべく選手の意識は高まる。
いよいよ春季リーグが開幕する。各大学ともチームの中心を成していたスター選手が抜け、新体制を敷いて優勝を狙う。例年どおり大混戦が予想される今リーグ・21世紀最初のタイトルの行方は―。
(奈良輪 織恵) 強く!速く!!美しく!!! 氷の世界 スケート部
一致団結・頂点を極めろ! アイスホッケーいよいよ新チームが動き出した!東洋大、早大、明大と共に四強と称される法大の目標は、もちろん優勝。そのために重要視されるのは精神面、そして一体感である。
精神面の克服「課題は気持ちの面」。優勝へ向け、監督はこう語った。練習は与えられたことを一生懸命やればいい。しかし試合では、そう簡単にはいかない。様々な駆け引きの中で、イライラが募ったり、ストレスを感じたりする。一生懸命さが反則という形で現れないよう、「気持ちのコントロールをすることが大切」(監督)である。昨年度はそれができず、三大タイトルを全て東洋大に奪われてしまった。優勝するためには、精神面の克服がカギとなる。
心を一つにもう一つのポイントとして、監督は「キャプテンを中心に一つになれるか」ということを挙げた。団体競技では、チームのまとまり具合が物を言う。法大をまとめるのは、主将・中田(法4)である。コーチも「文句なし!」と絶賛、そのリーダー性には定評がある。中田を核として信頼関係を築き、チームが一つになったとき"優勝"の二文字は自ずと見えてくるだろう。
五輪へ! フィギュア
日本を代表するエース、本田(法3)と竹内(文4)。彼らの視野には、来年2月の冬季五輪がある。最上級生となった竹内は「今までの集大成を見せたい」と語った。五輪出場枠は2人。4回転ジャンプを確実にし、その枠を狙う。
限りなき力 スピード記録との戦いであるスピードスケートでは「最後まで諦めない、自分の限界を自分で決めない」(コーチ)ことが大切である。昨季はインカレで7位と、思うように力を発揮できなかった。主将の遠藤(文4)は「一人一人が自覚を持って練習しなければならない」と再出発を誓う。今年こそ、知久(営)・小嶋(営)の2年生コンビがチームを引っ張り、全員が無限の力を信じていい滑りを見せてくれるはずである。
(小田桐 由紀) 咲き誇れ!!新生応援団12月の幹部交代から3ヶ月。21世紀初の法大応援団は、団長・濱野雅輝(文4)を中心に日々活動している。しかし応援団の見せ場は4月、体育会の始動と同時にやってくる。
日々活動
リーダー部、チアリーダー部、吹奏楽部で構成されている法大応援団。その活動は法大体育会の応援だけではない。2月には入試アルバイト、6月は六大学が集まる『六旗の下に』というステージがあり、11月の学園祭の準備、そして12月にはその年の締めくくりとなる『オレンジの集い』。学校が長期休暇の時期も毎日登校し、非常に多忙な毎日を送っている。 法大は愛すべき学校
今年度団長を務める4年生・濱野雅輝は法大生にメッセージを残してくれた。「4年間の学びの場となる法大を好きになってください。僕自身は不本意な受験の結果で入学しましたが、今では誰よりも法大を愛しています。母校愛をもてるだけのものが法大にはあるはずです」。
(望月 春香) 恐縮です。梨元勝氏インタビュースポ法4月号恒例の法大OBインタビュー。今回は自らを「うさんくさい」と評し、TVなどで大活躍中の芸能レポーター・梨元勝氏が登場!!世間からは冷ややかな視線にさらされる事が多い同氏だが、その内面にはとてつもなく熱いジャーナリズム精神が存在した。
法大丸秘話―まず、なぜ法大に進学されたのですか? 実は僕、高校時代時代に留年して2年生を2回やってるんだけど、その高校がすごい自由な雰囲気で全く英語を勉強しなかったからなんだよ。その周りが大学受けるから僕も受けようって感じだったんだ。いろんな大学受けたんだけど、法大の社会学部しか受からなくて、しかも補欠合格だったんだ(笑)。それで、受付で賛助金を払えって言われたの。そうすれば優先権がもらえるからって。それで賛助金払って入学したんだけど、この仕事をしてからこのことをラジオでしゃべったら法大からしゃべらないでくれって怒られたんだよ(笑)。 ―どんな学生でしたか? 入学してからは、当時は学生運動がすごい盛んな時期だったんだけど、そんなのまったく知らなくて自治会委員になっちゃったんだよ。僕は高校時代、生徒会やってたんでそれと同じノリだったの。で、国会へデモに行ったんだけど、そこで警官にむちゃくちゃにされて嫌になってやめたの。それからずっと学校には試験期間だけ行ってアルバイト生活をした。成績なんてAは4年間で3つくらいしかなかったかな。卒論も友達に書いてもらったんだけど、その事もラジオでいったら先生が怒っちゃったらしい。後でTV局が取材したら梨元なんて学生は知らないって。知ってるくせに(笑)。それで今度はちゃんと4年で卒業したんだけど、進路の事では、人生についていろいろ迷いがあった。アルバイトばかりして大学生活はなんだったんだろう?って。それでもう一度大学生をやり直そうと思って高校の先輩に相談したら、ふざけるなって怒られた。僕は両親を早くに亡くして祖父に育てられたんだけど、いつまでも脛をかじらず祖父に孝行しろって。その先輩に紹介されて講談社の「ヤングレディ」っていう雑誌の記者になったの。
雑誌記者時代―もともとマスコミには興味はお持ちだったんですか? まったくなかったよ(笑)。学生時代にアルバイトしててサービス業に興味があったんだけど、先輩に行かされた(笑)。最初は原稿も書けなくてひどかったね。でも、しゃべるのはおもしろかったらしくて、みんなにスピーカーって呼ばれてた。それでたまたま雑誌記者がTVに出てしゃべるって言う番組があったんだけどそれに出演したのをTV朝日の『アフタヌーンショー』の人が観てて、声をかけられてね。それがきっかけでレポーターになったの。
「芸能レポーター」へ―芸能レポーターになられたときは他にそういう存在がいなくて、俗にいう『走り』ですよね。 『芸能レポーター』っていうのは、実は造語なの。当時、事件をレポートする人はいたけど芸能はいなかった。芸能評論家はいたけどね。それでレポーターになりたてのころに三船俊郎さんの離婚裁判を傍聴してて、それをTVでレポートしたんだ。それを傍聴していなかった週刊文春の記者が記事にしたいといってきたんだ。それで原稿を書くときに記者が肩書きを聞いてきたんだ。でも芸能評論家ではない。じゃあレポーターでいいじゃないっていうと事件のレポーターと紛らわしいから、っていうんで芸能レポーターっていうことにしたのが始まり。もうそれから25年くらい経つんだよね。 ―レポーターをしてから一番思い出に残った事は? 山口百恵さんが急に引退したときに、東京・芝の歯医者さんに通ってるという情報があったんだ。それで3ヶ月くらい張り込んでようやく見つけたんだ。でもいざ取材となったときに頭が真っ白になってね。そこからの記憶が無い。後でVTRを見ると、僕らは普通タレントが車にのろうとしたとき乗らせないようにするんですけど、あのときはどうぞ、どうぞとドアを閉めてあげてるんですよ。芸能取材やって30年だけどあんな経験はそれだけです。 ―印象に残った人物は? 勝新太郎さん。ハワイの空港で麻薬を持っているのが見つかって捕まったときに僕も現地に行って裁判を密着取材したのはおもしろかったよね。あの人は非常に人をひきつける魅力のある人間なんだよ。それで、現地の日本料理を食べに連れて行ってくれたんだ。そのとき『俺は今日は泣きたいんだ』といって大泣きし始めたんだ。なんて馬鹿な事したんだって。その姿には役者魂を感じたね。
梨元勝の哲学―梨元さんにとってジャーナリズムとは?
僕は、TVなら観てくださる、新聞なら読んでくださる、ラジオなら聞いてるお客様に向けてのサービス業と思ってます。タレントさんにはいい話も悪い話もあるけど、お客さんにとってはどれも同じと思う。だからマスコミは伝えてなんぼの世界。記者っていうのは何千万というお客様へ向けての媒体。だから記者というのは取材されてる人じゃなくてお客様の方を向いているという事。スターといわれる人はそれがわかっているんだよ。この人たちにちゃんと自分の事を伝えてもらおうってね。これは重要な事だよ。売れてないタレントはこれがわかっていない。都合のいい事は書いてくれ、都合が悪かったらプライバシ−侵害だってね。問題は書いた結果がどうなるかです。お客様がやりすぎだよといわれればそれは私が悪い。それと、マスコミというものは権力に対しては批判力を持っていなければいけない。ジャーナリズムというのはうさんくさいもの。かっこいいものではない。最近のカッコだけの女子アナなんてそれがわかってないんじゃないか。それにうさんくささを持っているマスコミは、伝える事によって権力を倒す事もある。報道の自由というのはそのために保障されているんです。その代わり、よりセンセーショナルにもなっていくという危険性もありますね。
法大生へ―最後に法大生へのメッセージをお願いします。 安定感を求めないで、守りに入らないでください。死ぬまで新しい事に挑戦して、どんどん挫折してください。何でもいいから、自分で自分のこういう所がかっこいいと思って生きてください。そして自分自身を評価できるようになって。やりがいを持って生きてください。恐縮です。
取材後記TVと変わらない梨元さんの軽快なおしゃべりに、当初緊張していた我々もリラックスできました。梨元さんにはお忙しい中、貴重な時間をさいて頂き本当にありがとうございました。お世話になったオフィス梨元の皆様にもこの場を借りて感謝いたします。
(西岡 良修) |