スポーツ法政 02’2月号

第78回箱根駅伝 徳本涙の途中棄権

 1月2日、3日にかけて行われた第78回東京箱根間往復大学駅伝競走。2日往路で、法大を衝撃のアクシデントが襲った。2区を走る学生長距離界のエース・徳本一善(社4)が途中棄権。右足ふくらはぎの肉離れだった。大手町スタートから28.6`。法大のタスキは大会史上最短距離で途切れた。チームは昨年の4位から一転、涙のレース展開となった。  

エースの涙

 誰もが予想できなかったはずだ。箱根で最も強いはずの男の涙を。2区を走り始めてわずか5・4キロ。徳本が集団から突如消えた。4日前、練習中に右アキレス腱を痛めたが、レースに臨んだ。不安要素はアキレス腱だった。しかし異変が起こったのはふくらはぎ。痛みに顔をゆがめ、思うように動かないふくらはぎを拳で叩いた。すでに走れる状態ではない。6キロすぎ、成田監督が近づき徳本を止めようとする。「もうやめろ!」。しかしその声を聞きながら、徳本は監督の制止を振り切った。トレードマークのサングラスの下には、涙が流れていた。彼はその現実を振り払うように、少しスピードを上げる。しかしついに7・3キロ。監督は徳本の前に立ちはだかり、逃げようとする彼を抱きとめた。その瞬間、法大のタスキは途切れた。崩れ落ち、運ばれていく徳本。右足アキレス腱損傷およびふくらはぎ肉離れ。徳本の足は、全治3週間と診断された。彼はケガを押してまで走ろうとした。肩にかかったタスキの重さは、箱根を走った選手にしか分からないだろう。だが徳本の姿は、我々にその重さを感じさせたに違いない。
 駅伝終了後、徳本はチームメイト、マスコミ、大勢のファンへ自らの思いを語った。「この1年、この日のためにみんな頑張ってきたのに、最後の最後で自分が台無しにしてしまった」。時折涙が言葉を詰まらせる。ギプスと松葉杖が痛々しい。「(エントリー選手の中で)一番強い男が一番弱い男になってしまった。でも必ず強い男になって戻ってきます。今まで支えてくれた人達、後輩、同期に感謝したい。僕は胸を張って卒業します」。再び流れる涙。それを優しく見守るチームメイトたち。徳本の涙とともに、今年の箱根駅伝は幕を閉じた。

新たな挑戦

 徳本は今後、実業団の日清食品に入社する。海外での活躍など、彼にかかる期待は大きい。そしてチームは再び箱根に戻るため予選会に挑む。「必ず通過して本選に臨みたい」と。
 徳本にも、そして残された選手たちにも未来がある。新たな目標を胸に、彼らの1年が始まろうとしている。

土井が力走


 まさかの途中棄権に涙を飲んだ法大に、ひとつ明るい出来事があった。9区を走った土井洋志(社3)の活躍である。「(途中棄権から)自分の出番まで1日あったので、宿舎でみんなと話し合えた。そうしたら不安はなくなったし、楽しく走ろうという気になった」と、レース後笑顔で語った。その結果、参考記録ながらも1時間9分37秒の好記録。区間1位に6秒まで迫る力走を見せた。
 来年は予選会から箱根を目指す法大。今回限りで徳本というチームの柱が抜けることに多少なりとも不安はあるだろう。しかし法大には土井という頼れる存在が残っている。土井を中心に、再び箱根路に戻ってくることを願うばかりである。



アメフト部 甲子園連覇ならず

 甲子園ボウル連覇を狙った法大トマホークス。しかし、甲子園ボウル最多優勝回数を誇り、昨年の雪辱に燃える名門関学大が高い壁となり、その前に立ち塞がった。期待された白木(文4)が、関学大の鉄壁ディフェンスを突破できず、4Qに1TDを返すにとどまり、関学大の前に屈した。

関学大の壁

 関学大を3TDに抑える」という目標を掲げたディフェンス陣。しかし、前半に関学大QB尾崎の2TDを含む3TDを奪われる苦しい展開。一方オフェンス陣も関東八連覇の原動力となったUB白木率いるRB陣が思うようにゲインできない。
 3Qに法大は初めてチャンスを迎えたが関学大主将・石田率いるディフェンスに止められTDを奪えない。その後は関学大オフェンスをディフェンスの踏ん張りでしのいだ法大。そして迎えた4Q。SF塚野裕(法4)が関学大のパントをエンドゾーン間際でブロックし最大のチャンスを得た。3度の攻撃に失敗したが、最後はQB桑野(営3)のピッチを受けたTB中島(経4)がエンドゾーンに飛び込みようやくTDを奪い返す。だが、奇跡の逆転を賭けた直後のオンサイドキックが関学大に抑えられ万事休す。それでも、「時計が0になるまで死ぬ思いでプレーをしたかった」と語った主将・DE小林(法4)が意地のQBサックを見せる。しかし、最後はQB桑野のパスが不成功に終わり、「最高のチーム」(白木)だった今年のトマホークスの「挑戦」は終わった。

覇権奪回へ

 今年のトマホークスは3年生主体の若いチーム。「甲子園で勝つということの難しさを痛いほど感じた。勝ちたいという気持ちを持ち続けて絶対に勝ちたい」と語ったQB桑野。甲子園での悔しさを経験した3年生を中心に再び日本一になるための新たな「挑戦」が始まる。


砕かれた王者への夢 ラグビー部

ベスト4

 12月23日、法大は昨年同様、花園で大学選手権の二回戦を迎えた。相手は強力FWを誇る同大。前半、相手FWの執拗なスクラム攻撃に苦しみ13−14とリードされ前半を終えた。しかし後半に入り快走BK陣が本領を発揮しすぐに逆転。FWもスクラムを押し返し、相手を圧倒。結局、41−33で勝利し2年連続の国立進出(ベスト4)を果たす。

1月2日


 準決勝、相手はリーグ戦で唯一敗れた関東学院大。現在、3連敗中の相手だけあって、フィフティーンは気合十分で挑んだ。法大は前半2分、相手ラインアウトを取りそのままWTB小滝(法4)が先制トライを奪う。その後は取りつ取られつのシーソーゲームが続き、11−16でリードされ前半を折り返す。しかし後半に入り連続トライを許し、点差を広げられる。法大もFB遠藤(経3)CTB渡辺(社4)がトライを返すも、23−38で敗れる。試合後、武村監督は「ラインアウトは修正できたが、反則数が多すぎた」と語った。「今までの笛と違った」と浅野主将(経4)がかたった反則は30個を数えた。この反則数が試合を決定付けた。2年連続で関東学院大戦でシーズンを終えた法大。残された下級生に関東学院大を倒し、大学王者になる悲願が託された。

渡辺 日本代表へ


 CTBの渡辺哲也(社4)が日本代表スコットに選出された。6月にラグビーW杯の予選があり、活躍が期待される。


本田武史・竹内洋輔 ソルトレーク冬季五輪へ

 2月9日から米国ソルトレイクシティーで開かれる冬季五輪。男子フィギュアスケートでは本田武史(法3)、竹内洋輔(文4)の法大コンビが最高峰の舞台に立つ。
 本田は言わずとも知れた日本のエース。2強と言われるロシア勢、プルシェンコ、ヤグディン、米国のゲーブルらと共に、メダル争いが期待される。勝負のポイントとなるのが4回転・3回転のコンビネーションジャンプ。難しい構成を演じる本田にとって、ジャンプの成功はメダルへの重要なカギとなる。期待されながらも15位という成績に終わった長野五輪から4年。練習の拠点をダグ・リーコーチのいるカナダに移し、一回りも二回りも成長した本田。最高の舞台での最高の演技に期待したい。
 竹内は混戦の出場枠争いを制し見事出場権を手にした。竹内の注目点はコミカルな演技。竹内のフリー演技「ターザン」は世界屈指の振付師・モロゾフ氏によるもの。様々な動物の動きをまねるユーモラスな演技はこれまでの竹内のスタイルを大きく変えた。ターザンの衣装での奇抜な演技は国際舞台でもアピール度は十分。観衆を引き込み、会場内を一体にする。インパクト抜群の演技は、芸術点を大きくアップさせると共に、世界の舞台での竹内の知名度も大きく上げた。五輪でも世界中のファンを魅了するに違いない。
 ソルトレイク五輪は2月9日に開幕、男子フィギュアスケートはショートプログラムが2月13日、フリープログラムが2月15日、共に日本時間9時45分から行われる。本田・竹内両選手の活躍に期待したい。

本田武史(ほんだ・たけし)・・・法学部法律学科3年、S56年3月23日生まれ、身長168cm体重58kg、趣味 ゴルフ・ビリヤード・ダンス、
竹内洋輔(たけうち・ようすけ)・・・文学部地理学科4年、S54年8月15日生まれ、身長179cm体重58kg、趣味 ドラム・音楽


祝!東京ヴェルディ1969柳沢

 二〇〇二年日韓共催のW杯開催。この記念すべき年に法大からJリーガーが誕生した。柳沢将之(社4)。東京ヴェルディ1969に入団する柳沢は読売ユース出身であり古巣へ復帰する形となる。
 プロ入りを決めた柳沢は、大学時代からプロフェッショナルな姿勢を持っていた。「大学サッカーは決して遠回りではない」と語る通り、練習、試合はもちろん普段の生活からその意識は高かった。「飲み会等いろいろな誘惑があったが大学1年から自分の就職活動は始まっていると思っていた」。己に妥協しないその姿勢、まさにプロだ。
 「人間は弱いから自分で自分をイジメないといけない。自分自身に甘えず、一日一日を大切にしてほしい」。後輩への思いを語った柳沢の言葉は、後輩そして大学生皆へのメッセージとも言える心打たれるものだ。
 小野、高原と世界に翔く黄金世代を輩出した79年生まれ組の一人。「彼らはプロ5年目、自分はルーキー、この差を埋めたい」。日本サッカーの将来を背負うべく柳沢はその歩みを止めない。一日一日、一歩ずつ。


バスケ部 オールジャパン 価値ある大敗

 1月2日に東京体育館で全日本総合バスケットボール選手権大会(オールジャパン)の一回戦が行われた。学生5位の法大はJBL6位の松下電器と対戦。相手は社会人チームで外国人や大学時代エース級だった選手達で構成されている。法大の劣勢は明らかだが、試合の流れをうまくつかむことができれば勝つチャンスが生まれてくる。 試合開始当初は一進一退の展開だったものの、次第に力の差が現れ始めた。いったん点差が開くと流れを取り戻せないまま85対135で完敗。澤シ(営2)と並び得点源である板倉(法2)がチーム最多の28得点をあげる活躍を見せた。しかし社会 人の壁は厚かった。ミスが少なく、一つ一つのプレーをきっちりとこなしていた松下電器に対し、法大は力を発揮できなかった。
 法大は社会人のプレーから何かを得て、もう一段階上のレベルを目指してほしい。この敗戦を単なる大敗で終わらせないことが、後に重要な意味を持つだろう。


フェンシング 渋木率いるフルーレ団体 快挙!五大会制覇

 渋木隼人(法4)がついに日本を制した。昨年11月のインカレで男子フルーレ個人優勝。好調を維持して臨んだ12月の全日本選手権決勝でシドニー五輪代表の岡崎(警視庁)を破り、嬉しい初優勝を決めた。「ナショナルチームで一緒だった岡崎さんには練習でも勝ったことがなかった」、今までは大きな壁だった岡崎を破っての日本一。渋木時代の到来を予感させる。
 渋木は世界を見ている。昨年の世界選手権では13位と日本人最高の結果を出し手ごたえをつかんだ。「今度は勝って日の丸をあげたい」、『日本の渋木』が『世界の渋木』になる日も遠くはない。
 今年度、男子フルーレ団体で5冠を獲得した法大フェンシング部。日本のフェンシング界をリードするその矛先は確実に世界に向けられている。


伊藤毅のスポーツ熱中時代 (陸上編)

 今年の箱根駅伝。エース徳本(社4)が痛々しい姿で戸塚中継所に運ばれてきた。徳本からのタスキを受けて走るはずだった有原忠義(経2)の心境はその時どうだったのだろう。
 一昨年の春、有原は周囲の期待を背負い、法大陸上部の門をたたいた。同期には準エース級にまで成長した黒田(社2)らがいる。入部当初はその中でも実力は1、2を争うものだった。しかし、1年間は故障が続き、思うように走れなかった。昨年の夏からようやく本格的な練習を再開し、徐々に未完の大器は実力を見せ始める。昨年12月2日、日体大で行われた1万bの記録会で30分2秒のタイムでゴール。大学生にしては平凡なタイムではあるが、短期間でここまで持ってきたところから底力を感じさせる。そして、期待の星が箱根の出場を果たした。
 箱根当日、有原の目の前にいつもとは違う徳本の姿があった。「動揺してしまって、どうしたら良いかわからず、走るべきなのか迷った」と語る有原。14位でタスキリレーした東海大の選手と共にスタート。やはり動揺していたのか走りに精彩を欠いていたが、ラストスパートで並走する選手を振り切り、タスキを4区中村(社2)へ。箱根を走ったことは本人にとって良い経験になったはずだ。
 確かに、徳本は大きな存在だった。だからこそ残った後輩達の本当の力が試されるときだろう。来シーズンは土井(社3)、黒田らに加え、有原が徳本の穴を埋める。

伊藤毅(イトウ・タケシ)・・・広島県出身 法政大学1年 スポ法史上初の担当スポーツを持たない万能記者。日本マシンガン声帯模写協会会長としても知られる。持ち前の知識とフットワークを活かした取材はスポ法隋一の幅広さを持つが、沢口靖子からモーニング娘を初めとするハロープロジェクトまでと、好みの女性のタイプでもスポ法隋一の幅広さを持つ。  


HOME