為末、世界大戦 陸上部

 茶髪にピアス。その独特な風貌は競技場の中でも一際目を引く。そして姿だけでなく、陸上ファンの目を一身に集めているのが我が法大の誇るアスリート、為末大(経三)である。400mHの世界では、今最も旬な選手で、山崎、苅部といった大物選手を脅かす存在となっている。学生界では敵なしで、今大会でも大本命視されていた。前日に行われた予選も力を温存する走りで楽々と一位通過。「明日に向けての調子合わせのつもりでいった」と決勝に向けて上々の走りをした。決勝当日はあいにくの雨。「気温が低いのが嫌だった」というように、記録を狙うには厳しいコンディションではあった。だが、為末の出番を待っていたかのように雨が上がり、戦いの火ぶたが切られた。

貫禄の走り  レースは序盤、持ち前のスピードで為末がリードする展開。記録更新も期待されたが、後半はスタミナ切れからインコース、日大吉澤に迫られる場面も。しかしそこはさすがに為末。地力の差を見せつけ、最後は突き離しての貫禄勝ち。関東インカレ初制覇となった。「勝つのが前提だったので、隣の足音が聞こえたときにはびっくりした」と試合後のコメントにも余裕がうかがえた。
 今年8月にはスペインで世界選手権が行われる。その選考競技会が春先から立て続けに行われ、疲れがピークに達していた。そんな苦しい状況での勝利は、そのタイトル以上に価値のあるものとなった。
 為末が本格的に陸上を始めたのは、広島・五日市中1年の時。「小さい頃から足が速い方で、何より目立ちたかったから」と始めた動機も彼らしい。「毎年10`ずつ体重が増え、記録もみるみる伸びた」というように、各世代でその名を轟かせてきた。広島皆実高3年の時に始めたハードルでもその才能を開花させた。そんな為末の夢は何と「悪い人になること」だそうである。といってもこれはNBAのスーパースター、"悪童"ロッドマンに憧れてのことで、なるほどその容姿にもそれが表れていて納得がいく。だがそんな型破りのスタイルこそ、今の日本陸上界に必要なのかもしれない。

大きな野望  今後の目標を尋ねると、「まずは世界選手権にでることが目標。それがシドニー(五輪)へのステップになればと思っている」と力強く答えてくれた。400mHは層が厚く、代表選手になることも容易ではない。しかし、「将来的にはオリンピックでファイナリストに名を連ねる存在になりうる」(渡部監督)というように、もうそれは遠い夢ではない。「今現在、48秒2が日本記録なので、自分は47秒台を出したい」。為末本人も、もっとずっと上を見据えていた。こんな大胆発言も、彼が言うと説得力があるから不思議である。シドニー五輪まであと一年。大きな世界大会が続けて行われる今が正念場だ。この先当分の間、この為末大という男から目が離せそうにない。


3冠王!!廣瀬、野球部

 春季リーグは惜しくも2位に終わった法大。投手群の不調により、昨年までの「投高打低」から「投低打高」に一変。なかでも廣瀬純(営三)が打率.432、13打点、3本塁打で、戦後9人目の3冠王に輝いた。山中監督と同じ佐伯鶴城高出身のため、「監督の後輩」という印象が先行していたが、今季の活躍で一選手としての魅力をアピールした。

 「エライことしちゃいました。自分でもびっくり」と3冠王を達成した廣瀬は戸惑いながらも笑顔で言った。しかし、この活躍はシーズン前の予告通りだった。
手応え  3月。「体、ひとまわり大きくなったんですよ。打球の飛ぶ距離が全然違う。今年はやりますよ!」嬉しそうに語る姿はこれから始まるシーズンへの期待と自信に満ちていた。  昨年までは俊足と強肩を生かして主に代走、守備要員。チーム1の激戦区・外野でスタメンを獲得するには打撃力が必須である。上級生になる今年、廣瀬はオフに「改造」を試みた。積極的に筋トレを取り入れた結果、体のバランスがよくなりオープン戦前にはバットが振れていた。確かな手応えをつかみオープン戦では好調を見せ、その勢いのままリーグ戦へ突入した。
雑草魂  法大には全国の野球名門校から多くの選手がやって来る。しかし最初から自分の実力を全て発揮できる選手は多くはない。廣瀬もそんな一人だった。だが、今年の廣瀬はオフに培った打撃力と「今まで打ってきた奴らを見返したい」という反骨心で挑んだ。東大二回戦では2本塁打を放ち、パワーを見せつけたが、チームは7季ぶりに東大に破れた。「みっともない試合」と監督も言うように選手達も苦い思いをした。翌日、法大は大勝。「どうしても今日打ちたかった。ホームランを打っても負けては意味がない」。満塁本塁打を含む7打点で文句なくヒ春季ーローとなった廣瀬。その後も打ち続け、打率はリーグ記録の.519を破るか注目が集まった。
課題  しかし快進撃は続かなかった。チームの優勝がなくなった途端、廣瀬のバットも失速。「試合前日に肉を食べると2本打てる」ジンクスも崩れ、知らず知らずのうちに意識してしまった。これで課題はみつかった。他校に研究され厳しく攻められるであろう秋までに、フィジカルとメンタルの両方でのレベルアップを計る。


期待の新生達、ラグビー部

 今春、法大ラグビー部の門を叩いた新人部員は、高校日本代表4名、代表候補2名を含む総勢25名。昨年の暮れ、花園を沸かせた高校ラグビー界のスターたちの名前がズラリと並び、近年稀にみる大物揃いとなった。今季から加入し、未来の法大を担うであろう新戦力を紹介する。
 花園出場校出身がひしめくなか特筆すべきは、PR廻洋輔、SH麻田一平、SO坂本和城、FB遠藤幸佑の'98高校日本代表4名。まずは一人目、「法政のラグビーに惹かれて」法大を選んだというPR廻洋輔。走れて重たい期待の免材で、国学院久我山高校時代には、あの松坂投手(西武)と共に区民スポーツ賞に輝いたという経歴の持ち主。数年後には法大のスクラムの支柱となっている可能性は十分だ。
 つづく二人はSH麻田一平、SO坂本和城の花園準優勝校・大阪工大高コンビ。坂本が「(法大に来たのは)麻田と一緒にやりたかったから」と言うように連携は抜群で、麻田の優れたゲームメイク、坂本のトライをとれる突破力は大きな魅力といえる。「一試合でも多くの試合に出たい。少しでも上を目指す」(麻田)と語り、やる気も十分。これからの成長が楽しみな好素材だ。
 残る一人は、七人制日本選抜に最年少で選出され、法大ファンならずとも注目する超高速FB遠藤幸佑。中標律高ではNO.8もこなしたようにアタリも強く、速さと強さを兼ね備えた186cm、83kgの大型BK。「(自分のプレーの特徴は)ランニング」と語るようにスピードには絶対の自信を持っており、近い将来、法大伝統の展開ラグビーの一翼を担うことは間違いない。
 この4名の他にも花園優勝高・傾向学園のSH高倉秀尚、東福岡からLO磯岡和則の高校日本代表候補2名が、法政二高からもLO石井恵介、NO.8波山正悟ほか4名が加わるなど充実のラインナップとなっている。総勢25名の超大型補強、法大ラグビー部の未来は明るい。


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