第329号 1面記事 寺居 史上初66`級連覇 輝く勲章へ!!歩んだ道は光放つ 2001年10月6日。葉の色が緑から茶色へと変わる秋の武道館。表彰台の頂上に登り寺居(政経3)は王者の印を受け取る。だが「俺が優勝…」。空虚感が胸の内からぬぐえない。自分の手に有り余る勲章は鈍い光を放っていた。 重たい勲章 「まじで!?あいつが」(早川・政経4)。部員全員が口を揃える。昨年秋、全日本学生体重別選手権を寺居が制したことは多くの者にとって驚きだった。大会前「優勝はないよ。俺より実力のある人が多く出るしね」。自信なく答えた寺居。頭の中に“優勝”の二文字は存在しない。ただ目の前の試合に全力を尽くすだけだった。だが、大会が始まってみれば強豪たちが序盤で消える波乱の展開。そんな中、危ない場面を迎えながらも勝ち抜き、栄光を手にしたものは他ならぬ寺居だった。「優勝したんだよな?」。胸の中のわだかまりは大きくなるばかり。しかし、ここから運命の歯車は静かに回り始めた。 大会後、寺居の環境は一変する。選ばれし者が集う海外遠征、全日本強化合宿。トップレベルの環境は自分の柔道を見詰め直すきっかけを与えた。「とにかく引き手から持て」(山本全日本強化コーチ)。以前から指摘を受けていた“技出しの遅さ”。課題克服のため釣手から展開される組み手を引き手に変更する。それにより早く技を掛けられ、仕掛ける数が増えた。スタイルチェンジは寺居の柔道を積極的なものへ変える。また、その改造は練習にも反映され「あいつは強くなったよ」(杉田・営3)。周りも認める寺居の成長。まるでその状況を見透かすかのように実力を示す場が訪れる。それは己の運命を変えた大会との再開だった。 真なる輝き 2度目の全日本選手権。何度も戦った思い出の畳を前に寺居は深呼吸する。「俺がやってきたことを証明するために」。思いを胸に、一気に決勝へと駆け上がる。独特の空気が武道館を支配する中、頂上決戦は遂に幕を開けた。進化した組み手で積極的に攻め、内股を連発。「負けねえ!」。気合十分、相手を力強く押し倒し何度もポイントを奪う。そして鳴りやまぬ歓声の中、5分間の死闘は幕を閉じ主審の手は高々と寺居の頭上に掲げられた。「やっとここまでこれた」。運命の時から8ヶ月。因縁の鎖を断ち進化を示した寺居。そして栄光を手にした若者の胸で勲章は光を放つ。それはまるで真の王者をたたえるかのようだった。(久野加津季)