第336号 1面記事 端艇部 島澤・松尾組 悲願達成 雪辱のインカレV 薄れぬ情熱はついに輝く 笑顔はない。優勝候補の筆頭として迎えた、昨年のインカレ。表彰台の3番目で島澤(営3)はうつむき、唇をかみしめていた。自分は短大の2年生。「優勝して、卒業しよう」。すでに全日本を制している松尾(商2)とのペアで花道を飾り、引退するつもりだった。しかし――。「守りに入ってしまった」。手にしたのは屈辱でしかない銅メダル。こんなはずじゃなかったのに。悔しさにまみれたその日、島澤の決心は変わっていた。 「このままじゃ終われない」。 雪辱に全てを 編入試験に備えて一度は寮を出る。机に向かっていても、敗北の記憶は脳裏に焼きついたまま。スポーツ推薦での編入が決まり部に復帰するやいなや、ブランクを取り戻そうとすぐにオールを握った。“インカレでリベンジしたい”。その思いは松尾も同じ。3年目の夏へ、再び二人での挑戦が始まる。「目指すものがあったから」(島澤)。どれほど苦しくとも歯を食いしばり手を抜きはしない。水上では男子と艇を並べて競い、寝る前にもイメージトレーニングを重ねる。立てなくなるほどに自分たちを追い込むボート漬けの日々。「限界までやらなきゃというのが見えた」(松崎・営4)。全ては雪辱のために。「自分達の漕ぎさえすれば勝てる」(松尾)。勝利へ向かい確かな勢いを感じ始めていた。 だが、大会を3日後に控えた夜。予想もしない知らせが島澤の下に届く。母親の沈んだ声が告げたのは、大好きだった祖母の病死。信じられない…。携帯電話の握る手が震えだす。部屋で一人、あふれ出す涙を抑えることはできなかった。悲しみがとめどなく胸に込み上げてくる。このままずっと泣き続けていたい。でも…。赤くはれた目を抑え、懸命に涙をこらえた。大会は目の前まで迫っている。後輩の松尾に迷惑は掛けられない。「つらさを表に出さない人だから」(松尾)。翌日から普段通りに振る舞い、練習に打ち込む。「きっと天国から応援してくれるから」。自分にできるのはボートに全力を尽くすことだけ。胸に秘められた悲しみさえ、雪辱の力に変えた。 会心のレース そして大会の幕が上がる。「レースになればレースのことだけ」。漕ぐことのみに集中した。2位以下に大差をつけて予選を突破し決勝へと挑む。1年前、誇りを打ち砕かれた運命の舞台。守りに入った昨年と同じ過ちは犯さない。積極的にスタートから飛び出していく。抱き続けてきた思いを乗せたボートは、誰よりも速く風を切っていった――。 「ホッとしました」。全てを終え、1年を振り返ってつぶやいた。安どの表情がリベンジに懸けた思いの強さを、そして犠牲にしてきたものの重さを物語る。何事にも屈しない情熱で得た金メダル。勲章は何よりもまばゆく、誇らしげに輝いていた。【岡辺将士】