第340号(2004年5月) 1面記事 泉 アテネ五輪へ 託された思いを胸に
「もう、終わったなって思った」(泉主将・営4)。アテネ五輪最終選考会の全日本選抜選手権、初戦敗退。これでアテネへの夢は絶たれた。そう思った瞬間だった。しかし、事態は違っていた。呼ばれたままに向かった会見場、そして…。 “(アテネ五輪代表選手)90kg級は泉とする”。 最終選考会で埋もれた原石は強化委員会によって抜てきされた。経験も実績も上回る選手達がいる中で、弱冠21歳の若者は代表に選ばれた。 期待 「私は金メダルを取れる選手として選んだ。あいつのハングリーで攻撃的な柔道を世界で見せてほしい」(斉藤全日本ヘッドコーチ)。コーチ陣が絶大な期待を抱くほど、泉には光るものがあった。決して実績では推し量ることはできない。しかし泉はいつだって体現してきた。そして周りを魅了してきた。 かつての世界王者・篠原(天理大監督)と互角の勝負を演じたこともある。「大舞台になるほど、相手が強いほどあいつは燃える」(秀島監督)。03年、国内最高峰の全日本選手権。あの怪物を相手に泉は一歩も引かずに戦い抜いた。体重差は実に47キロ。圧倒的に不利な対格差だった。それでも粘り強く、粘り強く・・・。敗北はしたものの、それはまさに、泉という存在を知らしめる戦いぶりだった。 同階級でもその姿勢は変わらない。小柄な体で立ち向かい、担ぎ上げ、投げ飛ばす。2月のフランス国際では一回り大きい選手が揃う中、5試合中4本の一本勝ち。海外の地で喝采を浴びるほど攻めの柔道は際立っていた。「追いかけて倒してやるという気持ちが見えた。戦い方に強さを感じさせる」(上村全日本柔道連盟強化委員長)。 試合だけでなく練習の中でもひたむきな泉がいる。「柔道についてよく考えてる」(河原・法4)。常に課題を見つけ、それをこなせる環境なら警視庁だって実業団にだって出稽古へ行く。納得がいくまで同じ相手といつまでも、手を休めることをしない。「本当に集中力が違うよ。人を殺すような目をしているからね(笑)」(澤田・商3)。 練習を目の当たりにしている仲間達は舌を巻き、試合を見た観客は歓声を上げていた。皆が泉に期待している。そして口々にこう言っていた。 “この人だったらやってくれるんじゃないか”と。 決意 コーチ、仲間、応援してくれる人達…。さまざまな期待が懸かる中、決定直後は「選抜で優勝してないし、実感がわいてこなかった」。だが、「棟田先輩の分まで…」。100kg超級の代表落ちをした棟田(康幸氏・平15法卒・現警視庁)の姿に衝撃を受けた。数々の実績を持ち、その階級の第一人者だった選手が外れてしまう事実。自分の前にも多くの選手が悔し涙を飲んだに違いない。あらためて代表の重みというものを知った。そして決意を新たにした。 「俺は金メダルを取る。今は自信がある」。 試合でも、練習でも…。どんな時だって泉はひたむきに打ち込んできた。その泉が断固たる決意を胸に、五輪の頂上を目指そうとしている。今までも数々のドラマを見せてきた。泉浩。この男なら見せてくれるはず。世界で戦う勇姿を、そして金メダルを。きっと、必ず。【加藤雄太】