平成16年度東京六大学野球春季リーグ戦特集

 最速154kmのストレート。それは、果てしない夢を追う男が放った魅力。一場靖弘(商4)。広がっていく野球人としての可能性。だが一方で、まだ経験していないものもある。エースとして、やっておかなければいけないことがある。

一場特集 豪腕に無限の可能性


輝かしい未来へ残すは優勝のみ

 「将来は野球界を背負う人間になりたい」。夢を抱き、明治の門をくぐった一場(商4)。今や大学球界ナンバーワンと呼ばれるまでに進化を遂げた。――球春到来。挑み続けた神宮の地で、一場の4年目のシーズンが幕を開ける。

成長の証

 格の違いを見せつけたのは昨年の秋季リーグ戦、4連覇を狙う早稲田との試合。一場の直球は、154kmを3度もマーク。自身の持つ神宮学生最速記録を塗り替えた。「彼はスターになれる器」(読売巨人軍スカウト・藤本氏)。プロ野球のスカウトから注目を一身に浴びるほどになった。

 「明治で体力面の全てが良くなった」。速球を生み出す強い筋力と腕の振りの良さ。また、「脚力もスタミナも備わっている」(横浜ベイスターズスカウト・松岡氏)。一場の成長を象徴する154kmの剛速球は、応援に駆けつけた多くのファンを魅了した。

プライド

 神宮に強烈な印象を残した3球。しかし、裏には複雑な想いが隠されていた。「序盤に点を取られると、試合全体の流れも変わってくる」。昨年、あえて課題を挙げるとすれば、立ち上がりだった。秋の開幕戦、一場は東大打線を2点に抑えて完投。翌週の慶応戦では1・3戦に先発し、計17回を4失点で投げ抜く。ここまで3点を初回で失ったが、エースを軸に明治は順調に勝ち進んだ。「投げるからには絶対勝つ」。溢れる闘争心。続く立教戦は3回までに2失点するも、その後は完璧なピッチング。優勝を懸けた大切な一戦を前に、気持ちはますます高まった。

 しかし、その早稲田戦。神宮に響いた先発のコールは、“一場”ではなかった。自分が居るはずのマウンドに他の投手が立っている。その光景を、ブルペンからただ傍観するしかなかった。「なんで俺じゃないんだ…」。

 結局、登板したのは2戦目の5回裏。敗戦色が漂う1対8での4番手。「悔しさを思いきりぶつけた」剛速球は、ついに154kmを計測。――“魅力”が、爆発した。

勇み立つ

 1年春から神宮のマウンドに立つ一場。「投手としての能力を磨くには、まだ先がある」と思っていた。「どう投げたら抑えられるかで精一杯だった」2年目。エースナンバー「11」を着けている実感など特になかった。

 「3年になって勝ちに貪欲になった」。先発投手の一角を任される中で、徐々に持つようになった自信。そして、明治を背負う責任感。昨年は7勝(0敗)を挙げ通算勝利を六大学現役最多となる18勝(12敗)に伸ばした。それとは裏腹に、チームは11季連続で優勝を逃す。154kmを記録した早稲田戦。試合終了後、先輩の涙を見た。“優勝しなきゃ意味がない――”。

 迎える、ラストシーズン。「もう誰にも頼れない」。大学野球の集大成となる今年、エースとして、自分、そして周りを納得させたい。「優勝は越えるべきハードル。進化した自分を見せつけたい」。

夢満ちて

 生まれ持った素質は逸材と呼ぶに相応しい。経験を積むほどに、能力として発揮されてきた。「プロで長く野球を続けたい」。真剣な眼差しが光り輝く。生涯を懸けた夢の前に、今、果たすべき明治での優勝。一場は全力でつかみにいく。

【伊藤理恵】  


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