'03卒業記念号 1面記事 柔道部 棟田 最強への挑戦己の大きさは追うべき夢の大きさ 4年前、まだあどけなさの残る棟田主将(法4)は将来の夢をこう断言した。「全日本選手権で優勝してオリンピックに出場することです」。卒業の時を迎えた今、実現されぬままとなったその大志は、抱かれ続けているのだろうか――。 世界の壁 初めての憧れの舞台・全日本選手権に出場したのは入学直後の4月。史上最年少で準優勝を手にした棟田は首脳陣から絶大な評価を得る。しかしその快挙を微塵も喜ぶことはなかった。「力の差を思い知った。高校で全日本強化選手に選ばれてずっと勝ってきたけど勢いだけじゃ勝てない相手がいることが、よく分かった」。当時の世界王者・篠原(信一氏・天理大教員)との決勝戦。無敵を誇った勢いをその惨敗で初めて止められた。そして追い討ちを掛けるように2度目の敗北を経験する。重量級のホープとして出場した世界選手権。「世界の壁を体で知って、本気で自分の柔道を作り直さなければと思った。漠然とただ勝てばいいという考えは捨てた」。内容を重視する柔道へ。そのとき進むべき道が示された。 意識改革に努めた2年間は「世界のレベルを自覚することで逆に勝つことが厳しくなった」(正木全日本コーチ)。その間、全日本の舞台では100キロ級世界王者井上(康生氏・綜合警備保障)が篠原を破り、世代交代の風が吹き始める。二人にあって棟田にないもの。それは明確だった。「世界のトップを経験しているという差は大きい。だから倍以上の練習が必要だったし努力した」。その差を埋めるべく流れる辛抱の時間。「本当にもがき苦しみながら、自分自身で何とか乗り越えようとしていた」(斎藤全日本ヘッドコーチ)。 4度目の全日本選手権。2年振りの頂上決戦で見せた棟田の柔道は「それまでため込んでいたものを爆発させたかのようだった」(斎藤全日本ヘッドコーチ)。目の前に立ちはだかるのは王者・井上であり、世界の壁でもあったからだ。歴史に残る名勝負は旗一本差で井上が制した。しかし「力の差は感じなかった。とにかく試合が面白くて。またやりたいと思った」。それは、ただ勝てばいいという考えをとうに捨てた棟田の素直な気持ちだった。そして井上は言った。「初めて追われるという立場を味わいました」。この1戦は王者を脅かす棟田の存在を知らしめるのに十分だった。 現在の夢 ――4年前の夢は今でも変わりませんか。 「変わったよ。今は全日本で優勝してオリンピックに出るだけじゃなくて、世界でも一番高いところにいけると思ってるから」。世界の壁に挑戦し続けた4年間。それは世界一を本気で口にするための時間だった。その胸に今、新たな大志が抱かれた。[永塚由季乃]