2001年 箱根駅伝・結果

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第77回箱根駅伝 往路結果(1月2日 東京・大手町→神奈川・箱根町)

スタートから14人の先頭集団がハイペースで飛ばし、サバイバルレースの様相を呈した1区。昨年に続いてこの区間を任された新井広憲(人3)は集団後方に位置し、20キロ手前まで粘る。順大・入船らのラストスパートにはついていけなかったが昨年のタイムを9秒上回り、トップから34秒差で鶴見中継所に飛び込んだ。区間順位は11位と昨年を下回ったが、駅伝の流れに乗り遅れないという1区の最低限の仕事はこなした。

11位でタスキを受けた森村哲(人2)はすぐに前を行く拓殖大をとらえるが、その前にいるはずの日体大と帝京大が見えてこない。序盤は前を行く他校のエースたちに付き、後半の権太坂過ぎからペースを上げていく展開を狙ったが、その思惑は外れた形となった。さらに権太坂を過ぎてもペースを上げることが出来ない。追い上げてきたカーニー(平成国際大)に抜かれ、結局順位は変わらず11位でタスキをつないだ。区間順位は12位。「2区を走るには力不足と痛感した」と、初の箱根で花の2区の厳しさを思い知る結果となった。

思わぬ順位でスタートした3区・久場潔実(二文4)は1分11秒差で前を行く日大を必死に追ったが差を詰めることが出来ない。初の箱根に加え、3区で意外にも一人旅となった久場は自分のペースを守るのがやっとだった。後続との差は広げたが、区間10位、総合11位と悪い流れを断つことは出来なかった。

4区は昨年区間2位の実績を持つ準エース・原田正彦(人2)が登場。しかし海から吹き付ける強い向かい風の影響か、ペースが上がらない。それでも落ちてきた神奈川大をとらえて一つ順位を上げた。強風のためレース全体が超スローペースとなったが、それでも昨年のタイムより6分10秒遅い区間8位という結果は大きな誤算だった。

5区。21世紀最初の山登りに挑んだのは五十嵐毅(人1)だった。大会前から山登りの適性を噂された期待のルーキーは前傾姿勢のピッチ走法という定石通りの走りで山を登っていく。しかし天下の瞼は甘くはなかった。ペースが上がらない。なんとか登りきったものの、ラスト3キロの下りで区間賞の走りで追い上げてきた拓殖大・杉山にかわされ、11位で芦ノ湖のゴールに崩れるように飛び込んだ。

往路を終えて11位。往路優勝の中大とは差は10分45秒で、復路のスタートは屈辱の同時スタート。惨敗と言える結果だった。駅伝の流れからはずれてしまった2区・森村の走りがその後の区間にも影響し、悪い流れを断ち切れないまま山登りにつなげてしまった。また強い向かい風にペースを乱され立て直すことが出来なかった。


第77回箱根駅伝 復路結果(1月3日 神奈川・箱根町→東京・大手町)

往路 5時間53分45秒・・・11位 復路 5時間36分3秒・・・5位
総合 11時間29分48秒・・・10位
※◎は区間新記録、( )内は復路順位
区間 氏名 区間タイム 区間順 総合タイム 総合順位
1区 新井広憲 1時間4分9秒 11位 1時間4分9秒 11位
2区 森村 哲 1時間12分7秒 12位 2時間16分16秒 11位
3区 久場潔実 1時間11分6秒 10位 3時間27分22秒 11位
4区 原田正彦 1時間8分54秒 8位 4時間36分16秒 10位
5区 五十嵐毅 1時間17分29秒 9位 5時間53分45秒 11位
6区 大角重人 1時間1分49秒 11位 6時間55分34秒 11位(11位)
7区 中尾栄二 1時間6分16秒 13位 8時間1分50秒 13位(13位)
8区 松岡 宏 1時間6分25秒 8位 9時間8分15秒 12位(12位)
9区 後藤信二 1時間11分11秒 7位 10時間19分25秒 12位(11位)
10区 鈴木陽介 1時間10分22秒◎ 2位 11時間29分48秒 10位(5位)
 前日の往路は11位。トップ・中大に10分以上の差をつけられ、7校同時スタートに回った早大の山下りを担当したのは相楽豊(人2)と代わった大角重人主務(理工4)だった。7秒差、20秒差で前を行く拓殖大、日体大は射程距離内。早大は早い段階でこの2校をかわしてシード権内の順位を確保したいところだった。前日とはうってかわって強い追い風の吹く箱根の山を、早大では28年ぶりに箱根を走った『走る主務』大角は集団の中下っていく。集団が崩れた後半に拓殖大は抜いたものの、区間新で走った大東大・金子に置いていかれ、総合順位は変わらず11位。神奈川大にも先行され小田原中継所での通過順位は12位と、反撃の狼煙を上げることは出来なかった。

  小田原中継所で大角を待っていたのはエース・佐藤敦之主将(人4)ではなく、中尾栄二(人2)だった。10月の駅伝シーズン開幕の頃からオーバートレーニング症候群にかかってしまい、疲労の抜けない状態となった佐藤主将は12月に入って症状を克服したが、箱根に間に合わせることはできなかった。メンバー変更で7区に起用された中尾は笑顔でタスキを受け取ると軽快に走り出したが、まもなく失速。神奈川大、拓殖大に抜かれ総合13位。通過順位は最下位とさらに後退してしまう。復路逆転への望みを中尾の潜在能力に賭けた遠藤コーチの賭けははずれる形となった。この時点で9位・大東大との差は2分28秒に広がっていた。

屈辱の最後尾でタスキを受けた8区・松岡宏(政経4)の頭には繰上げスタートの悪夢がよぎったのかもしれない。悲壮な表情で走る松岡だが動きは悪くなかった。落ちてきた平成国際大・伊藤にじわじわ迫り一気に抜き去る。戸塚中継所での総合順位は13位と変わらなかったが9位・大東大との差は1分23秒。1分以上追い上げ、シードへの望みをつないだ。

9区。一人旅となった後藤(理工2)は序盤のアップダウンを慎重に入ると、権太坂を過ぎ勝負の後半、ペースを上げる。すでにタイムの上で前を行っていた平成国際大は抜いているに違いなかった。そして前を行く拓殖大・大宮の背中が見えてきた。鶴見中継所に帰ってきたとき拓殖大とは14秒差。9位の大東大とは1分40秒差だった。後藤は区間7位。総合順位は一つ上げて12位。悪い走りではなかったが、シード権を手繰り寄せることはできなかった。

すべては10区・鈴木陽介(人4)に託された。目指すは9位、シード権確保のみ。「とにかく前に行くことだけ考えていた」という鈴木はシードをとるため序盤からいちかばちかのハイペースで入る。鈴木の1万メートルベストが出場選手中最下位の31分07秒であることを考えれば無謀とも言えるスビードだったが、ペースを落とすわけには行かなかった。拓殖大を序盤で抜き去ると後半に入って日体大もとらえる。ハイペースのまま20キロを過ぎたが、それでも鈴木のペースは落ちなかった。一方、前方では大東大・真名子が鈴木を越えるハイペースでとばし、5位につけていた山梨学院大・長谷が脱水症状で急激にペースを落としている。一段と混沌としたシード争いの中、鈴木は日大・清水と山梨学院大・長谷を抜いた。すでに限界に来ているのかもしれなかったが、ハイペースのまま23キロを走りきり、大声援の中鈴木は8番目でゴール・読売新聞社前に戻ってきた。1時間10分22秒、区間新記録だった。

鈴木の魂の激走で、シード権確保かという空気がゴールで迎えた選手たちの間に漂った。しかしテレビ放送が無情な現実を告げる。10位、わずか30秒差でのシード落ち。一人あたま3秒の差で、早大はシード権を逃した。「すべては自分の責任です。来年も応援よろしくお願いします」。気丈に感情を抑え、そう挨拶した佐藤主将は応援部による校歌・エールの直後、泣き崩れた。「ごめん、ほんとごめん!」悲痛な声が大手町の空に響いた。


2001年 箱根駅伝・展望

箱根直前!総力特集その3  オーダー決定

第77回箱根駅伝 早大オーダー
1区 新井広憲(人3)
2区 森村 哲(人2)
3区 久場潔実(二文4)
4区 原田正彦(人3)
5区 五十嵐毅(人1)
6区 相楽 豊(人2)
7区 佐藤敦之(人4)
8区 松岡 宏(政経4)
9区 後藤信二(理工2)
10区 鈴木陽介(人4)

補欠 大角重人(理工4)、橋本智之(社4)、矢花 誠(人3)、中尾栄二(人2)

12月29日付けのオーダーが決定した。ただし箱根駅伝には当日のオーダー変更が可能という独特の制度があり、戦略として補欠に回った選手が出場する場合がある。今回のオーダーでも大角主務や中尾など実力のある選手たちが補欠に回っており、戦略的なオーダー変更の可能性はおおいにある。また2区での出場が期待された佐藤敦主将は残念ながら7区に配置された。やはり佐藤敦主将の状態は万全ではないようだ。今回のオーダーの特徴としては佐藤敦主将を復路に配置したことにより例年のような先行型ではなくなったことと、2区・5区・6区・9区などの重要区間が1,2年生に任されている点だろう。来年以降を見据えたオーダーであるとも言える。
注目の区間は5区。昨年区間賞の中大・藤原、東海大・柴田を筆頭に、順大・奥田、大東大・村田など各校のエース級に、箱根初挑戦の五十嵐がどこまで対抗できるかが見ものだ。


箱根直前!総力特集その1 エントリーメンバー紹介

第77回箱根駅伝を目前に控え、各校とも14人のエントリーメンバーが決定した。新世紀の幕開けを飾る、えんじの精鋭たちを紹介する。 【凡例:氏名(学部学年)/出身地・出身校/1万mベストタイム/過去の箱根成績】

佐藤敦之(人4)/福島・会津/28分25秒/98年1区・3位、99年4区・4位、00年2区・4位
駅伝主将にして不動のエース。3月にフルマラソンの日本学生記録を出し、9月のインカレまでは好調を維持したが、駅伝シーズンに入って慢性的疲労状態に陥り、出雲・全日本と欠場。ワセダだけでなく学生長距離界を代表するランナーなだけに箱根での復活が待たれる。

大角重人(理工4)/滋賀・水口東/30分18秒/
 駅伝主務として日々の仕事をこなしながら、今年ランナーとしても大きく成長。佐藤主将の戦線離脱後、チームをまとめてきた。全日本では初駅伝ながら7区区間5位と奮闘し、もはやその存在はチームに欠かせない。主務が箱根を走るのは早大では28年ぶりとなる。

久場潔実(二文4)/埼玉・松山/29分57秒/
 昨年は当日のメンバー変更で出場を逃し、その悔しさを最後の箱根にぶつける。今季はずっと調子が上がらなかったが、出雲・全日本ともに着実な走りを見せた。

鈴木陽介(人4)/静岡・浜松北/31分07秒/
 駅伝デビューとなった全日本ではエース区間であるアンカーをまかされ、区間8位。本人は満足していないが長い区間での粘りには定評がある。愚直なまでに陸上に取り組んできたその成果を、最初で最後の箱根で開花させることができるか。

橋本智之(社4)/群馬・前橋育英/31分01秒/
 今季1万m、20キロ、ハーフマラソンで自己ベストを更新し、11月の府中ハーフ以降の充実ぶりでメンバーに滑り込んだ。今最も上り調子な選手の一人。初駅伝が箱根の大舞台となる。

松岡 宏(政経4)/東京・早大学院/30分16秒/
 府中ハーフで自己ベストを更新し、4年目にして初のメンバー入りを果たした。長い距離に自信を持っており、確実に力を出し切る安定感も持ち味の一つだ。

新井広憲(人3)/兵庫・報徳学園/30分10秒/99年3区・11位、00年1区・10位
 高校時代に輝かしい実績を持つが大学入学後は伸び悩んだ。今季もケガで出遅れたが府中ハーフで自己ベストを更新し見事復活。来季の駅伝主将にも決定し一念発起、今一番乗りに乗っている、注目のランナーの一人。

原田正彦(人3)/岡山・早実/29分34秒/00年4区・2位
 昨年の箱根では準エース区間の4区を走って区間2位の快走を見せた。期待された今季、エース区間を任された出雲はケガの影響で区間10位、全日本は欠場と、思うように実力を発揮できなかった。しかしすでにケガも完治し、府中ハーフでは自己ベストを更新。箱根では区間賞を狙う。

矢花 誠(人3)/長野・伊那北/30分03秒/
 過去2年間は故障に泣き、箱根の出場を逃してきたが、今季は駅伝シーズンの開幕から好調を維持し、出雲・全日本とも安定した走りを見せた。初の箱根でも好走を見せられるか。

後藤信二(理工2)/愛知・豊橋東/30分11秒/00年10区・8位
 前回は1年生ながらアンカーを任され区間8位と健闘した。出雲・全日本の両駅伝には不出場だったが、この1年長い距離を走りこんできた成果が府中ハーフで開花し、1時間3分台の好タイムでチーム2位。主力級に成長した。

中尾栄二(人2)/兵庫・西脇工/29分38秒/
 高校時代は数々の栄光を手にし、鳴り物入りで早大に入学したが、故障などで思うように伸びず、苦しい時期を過ごした。だが初のハーフとなった府中では納得のタイムでゴールし、長い距離への不安を解消した。未来の大エースへの第一歩を今回の箱根で踏み出す。

森村 哲(人2)/富山・富山中部/29分07秒/
 今季最も成長した、期待の準エース。3月の立川ハーフでの鮮烈な優勝デビュー以来、走るたびに自己ベストを更新し、府中ハーフでは1時間3分15秒の3位と、有力校のエース級の選手にもひけをとらない走りを見せた。コーチやチームメイトからの信頼も厚く、重要区間を走るのは間違いない。

五十嵐毅(人1)/山形・山形中央/29分23秒/
 出雲で早々に駅伝デビュー。全日本でも重要区間をまかされた期待のルーキー。夏合宿を経て大きな成長を見せた。1万mチーム4位のスピードと馬力のある走りが持ち味で、遠藤コーチいわく、山登りの適性もある。念願の山のスペシャリストが今年、生まれるかもしれない。


箱根直前!総力特集その2 レース展望と早スポ予想オーダー

  1区は昨年もこの区間を任され、府中ハーフ以降上り調子を持続している新井広憲(人3)だろう。平成国際大の留学生ムヒアを中心にハイペースの展開になりそうな今回、駅伝全体の流れに乗り遅れないためにも新井にはトップと最低1分以内でタスキをつなぐ走りをしてもらいたい。

  花の2区。エース・佐藤敦之主将(人4)が完全に復調していればここでトップ争いに加われるだろう。だが復調していたとしても秋以降の練習量と今季の実績を考えれば、準エースの森村哲(人2)が担当しそうだ。この区間は平成国際大のカーニーの独走となる可能性が高い。学生長距離界を代表するエースたちが競うこの区間、森村が実力を発揮できれば1時間9分を切ることは可能。2位〜5位あたりで3区につなげられる。

  比較的距離が短く緩やかな下り坂となる3区は初の箱根となる中尾栄二(人2)、もしくは久場潔実(二文4)や橋本智之(社4)といった4年生の初出場組が登場しそうだ。例年のオーダーからすればつなぎの区間といえるが、気は抜けない。区間順位は一桁で行かねばこの後の展開が苦しくなる。

4区は昨年区間2位の実績からいっても原田正彦(人3)でほぼ決まりだろう。今年は1時間2分台前半の記録で区間賞を狙ってほしい。ここで平成国際大など超前半重視型の大学をとらえ、1〜4位まで上がれる。いい形で鬼門となる山につなげられるかは、原田の走りにかかっている。

5区・山登りは五十嵐毅(人1)が起用されそうだ。遠藤コーチも「山形出身なだけに、山型だ」とギャグを飛ばすほどの信頼ぶりで、待望の山のスペシャリストが生まれる可能性もある。とはいっても一筋縄では行かないのが箱根の山。「精神面が課題」という五十嵐には、集中力を切らさず順位を落とさないように確実に上りきって欲しい。1時間12分台で走りきれればまずまず。往路を終えた時点で3位付近にいられれば、まずは上々の初日と言えるだろう。

復路のスタートとなる6区。往路の流れを断ち切らないようにしなければならないが、今のところ山下りの適性のありそうな選手は見当たらない。上りも下りも器用にこなす相楽あたりが起用されそうだ。ここが今回最大のポイントとなる。大きく順位を落とすことを避けるためにも少なくとも1時間1分台では走ってほしい。6区終わった時点で5位付近にいられれば、上位進出の可能性はまだある。

7区。エース・佐藤が不調なら第73回大会の小林雅幸(平9人卒)のようにこの区間に登場しそうだ。ただし区間賞から不出場まで、どの程度走れるかは未知数と言っていい。チームとしては佐藤が走ることに大きな意味がある。エースの力走で追い上げムードを作りたいところだ。

8区は4年生の誰かが担当しそうだ。残りの区間配置を考えると大角重人(理工4)主務あたりか。昨年のように堅実な走りで一つずつ前を捉えていくことが重要だ。上位を狙う以上1時間7分は切って欲しい。

復路のエース区間となる9区は長い距離が得意で調子も上向きな後藤信二(理工2)が担当するだろう。後藤には昨年区間3位の力走を見せた平下修(平12人卒)と同等以上の走りを期待できる。府中ハーフのタイムからいって1時間10分前後のタイムを出す可能性もある。仮にシード権を争う順位にいたとしても、ここで安全圏に持っていけるだろう。

アンカー・10区は2・9区と同じく23キロの最長区間。より長い距離に強い選手が起用されそうだ。そう考えると鈴木陽介(人4)あたりか。ただ前回未知数のルーキーを起用したように、この区間は選手の調子によってオーダー変更してくる可能性もある。シードを争っているということはないだろうが、守りに入ることなく攻めの走りで一つでも上の順位を目指して欲しい。

佐藤主将の調子など不確定要素がかなりあるが最終的には4〜7位あたりでゴールするのではないか。もちろん誰もブレーキを起こさないことが条件となる。佐藤主将が完全に復調し、2区で快走してくれれば優勝も見えてくるが、それもわからない以上、浮沈はエースに頼らない駅伝、つまりは全員駅伝ができるかどうかにかかっている。1月3日、大手町のゴールで早大の歓喜の涙を見たいものだ。


府中多摩川ハーフマラソン

府中多摩川ハーフマラソン(11月23日 府中市民健康センター)

 箱根に向けての最後の公式戦であり、メンバー選考にも大きく影響するこのレース。3位の森村、7位の後藤をはじめ、多くの選手が上位入賞し自己ベストを更新するなど収穫の大きいレースとなった。遠藤司コーチも「箱根に向けて光が見えてきた」と手応えをつかんだ様子だった。

 3位に入った森村は序盤から積極的な走りをみせ、先頭集団で10キロを通過。その後、中大の板山、駒大の松下には引き離されたものの、3位をキープして最後までスピードを落とすことなく走りきった。タイムは1時間3分15秒で、これは去年の同大会での駒大のエース・神屋の優勝タイムより22秒早く、自己ベストを1分更新した。この好結果にも「箱根ではもっと速く走らなければならない」と本人は満足していない。他校のエース級の選手と比べても遜色ない走りを見せる森村が、箱根で旋風を巻き起こしそうだ。

 今大会一番の収穫となったのが、7位に入った後藤だろう。出雲・全日本とエントリーメンバーには入りながらも不出場だった後藤だが、終始自分のペースでハーフを走りきったことは実力がついた証拠。タイムも1時間3分台でまとめ、一気に他校にマークされるランナーになった。「森村とも練習でいい勝負をしているし、大きな戦力になる」と遠藤コーチも太鼓判を押した。

 さらに、新井、中尾らケガで出遅れていた選手たちが戻ってきた。新井は15位、中尾は32位と順位的には今ひとつだが、二人とも自己ベストを更新。10月から1万メートルを中心に練習を始め、まだあまり長い距離をこなしていないという二人がハーフを無難に走りきったことは大きい。調子も上向きなため箱根での大ブレイクを期待できそうだ。

 その他にも自己ベストを2分近く更新した大角主務をはじめ、早大上位10人中9人が自己ベストを更新している。昨年の同大会では1時間5分以内に走りきった選手はおらず、順位も新井の19位が最高だっただけに、今回の結果はチームの底上げが成功し、チーム全体の調子が上向いていることを物語っている。箱根での目標はあくまで優勝という早大。その目標が現実味を帯びてきた。

早大順位上位10名の記録 【かっこ内は自己ベストの更新】
3位 森村 哲(人2) 1時間3分15秒(1分更新)
7位 後藤信二(理工2)1時間3分56秒(2分23秒更新)
15位 新井広憲(人3) 1時間4分28秒(34秒更新)
17位 原田正彦(人3) 1時間4分34秒(1分26秒更新)
20位 大角重人(理工4)1時間4分43秒(1分59秒更新)
30位 久場潔実(二文4)1時間5分05秒
32位 中尾栄二(人2) 1時間5分09秒(初ハーフマラソン)
33位 松岡 宏(政経4)1時間5分13秒(1分18秒更新)
37位 阿部幸太郎(理工4)1時間5分47秒(10秒更新)
40位 橋本智之 (社4)1時間5分48秒(3分更新)


全日本大学駅伝・早大11位

第32回全日本大学駅伝対校選手権(11月5日 愛知・熱田神宮〜三重・伊勢神宮)

大学日本一を決める全日本大学駅伝で、早大は4区・桜井勇樹(教3)の区間19位 の大ブレーキなどもあり出場以来ワーストとなる11位と大敗を喫した。エース・佐藤 敦之駅伝主将(人4)など主力選手の欠場もあったが、新春の箱根駅伝に向けて大き な課題を残した。

 序盤は出雲同様、1区に準エース・森村哲(人2)、2区に五十嵐毅(人1)を配 して流れをに乗る作戦に出た早大だったが、ほぼ3位集団でタスキを受けた五十嵐が 区間10位と誤算となる走りを見せる。「意気込みすぎた」という五十嵐。距離の短い 出雲では無難な走りを見せたものの、距離の長くなった全日本ではペース配分に失敗 し、経験不足を露呈した。10位でタスキを受けた3区・尾崎章嗣(教3)はケガから 復帰し久々のレース。練習不足のままの出場となり、区間11位。総合順位も12位と後 退した。

そして4区。期待の準エース・桜井が登場したがここでまさかの大ブレーキを起こし てしまう。1週間前にひいた風邪の影響や、レース前に飲んだ水、また低い位置でタ スキを受けたため最初の1キロをオーバーペース気味に入ってしまうなど、様々な原 因によってレース序盤に腹痛を起こし、第4中継所ではタスキをつなぐのがやっとの 状態だった。ここであわや繰り上げスタートの危険もあった総合14位まで後退してし まう。

 レース後半、5区・久場潔実(二文4)、6区・矢花誠(人3)の経験豊富な二人 が低い順位ながら安定した走りで徐々に追い上げ始める。矢花が区間6位の走りで前 を行く拓殖大をとらえ、13位で7区・大角重人(理工4)へ。7区・大角と8区・鈴 木陽介(人4)はともに駅伝初出場となる上に、大角は近年まれに見る主務との二束 のわらじをはく選手。だが大角はハンデを感じさせない走りで今回チーム最高の区間 5位で前との差を詰め、アンカーの鈴木陽介(人4)は鹿屋体育大、第一工大と九州 の2校をかわして、エース区間で区間8位と大役を果たした。

 結局総合順位は出場以来ワーストとなる11位。だが今回はコンディショニングや レース経験など、チーム全体に、また各選手に箱根に向けてはっきりとした課題が出 た。と同時に今まで桧舞台に出てこなかった選手たちが好走を見せ、チームの底上げ ができていることを証明した。6位までに与えられるシード権は取れなかったもの の、昨年、一昨年の9位とは違う、価値ある11位と考えたい。


全日本大学駅伝・展望

第32回全日本大学駅伝対校選手権(11月5日 愛知・熱田神宮〜三重・伊勢神宮)

 大学駅伝日本一を決める全日本大学駅伝。かつては初出場から4連覇を果たすなど 華々しい活躍を見せた早大だが、ここ2年は連続9位に甘んじている。新春の箱根駅 伝で優勝戦線に名乗りをあげるためにも、もはや無様なレースは見せられない。

 今年、学生長距離界のエースに成長した佐藤敦之駅伝主将だが、出雲に続いて全日 本でも出場に黄信号が灯っている。全日本学生対校選手権後、一気に疲労が噴出し日 本選手権と出雲駅伝を欠場した佐藤は未だ調子が上がらず、エントリーメンバーには 名を連ねたものの出場は微妙だ。出場するとしても距離が短く負担の少ない区間での 起用になる可能性が高い。それをカバーするには桜井・原田・森村の準エース3人の 活躍が重要だ。出雲では森村が1区5位、桜井が3区3位と力のあるところを見せ た。原田はケガの影響で6区10位に甘んじたが全日本では実力を発揮してくれるは ず。この3人が1区、2区、8区などの重要区間で他校のエースたちにひけをとらな い走りをできるかが、上位争いに加わるポイントとなる。

 その他の注目選手には、ケガから復帰し箱根駅伝以来のレースとなる尾崎、ゴール デンルーキー・五十嵐、出雲で4区5位と復活の快走を見せた矢花などがいる。上記 以外の選手たちも箱根駅伝でのメンバー入りにむけてアピールとなる走りを見せたい ところだ。今年から6位までに来年のシード権が与えられる。佐藤駅伝主将が不出場 の場合、早大はこのシード権の獲得争いに加わる可能性が高い。ともかく、箱根を占 う上で最も重要な大会である全日本大学駅伝に注目だ。13人のエントリーメンバーは 前日エントリーでレギュラー8人+補欠3人の11人に絞られる。

▲エントリーメンバー(10月31日現在)
佐藤敦之(人4)、大角重人(理工4)、久場潔実(二文4)、鈴木陽介(人4)、 松岡宏(政経4)尾崎章嗣(教3)、桜井勇樹(教3)、原田正彦(人3)、矢花誠(人3)植竹誠也(人2)、後藤信二(理工2)、森村哲(人2)五十嵐毅(人1)


駅伝シーズン開幕!出雲駅伝健闘8位

◆10月9日 島根・出雲大社前〜浜山公園競技場

 駅伝シーズンの開幕を飾る第12回出雲駅伝が今年も行われ、早大は序盤から上位争いに食い込む積極的なレースを見せたが、アンカー・原田正彦(人3)の不調が響き、結局8位に終わった。だが佐藤敦之(人4)という絶対的なエースの不在にもかかわらず、一昨年の11位、昨年の16位を大きく上回る結果を残した。

 距離の短い出雲駅伝では、流れに乗り遅れないためにも序盤が重要だ。1区を任された今季絶好調の森村哲(人2)と、2区の期待のルーキー・五十嵐毅(人1)はともに大学では駅伝初挑戦となる。森村はトップと約10秒差の5位でタスキをつなぎ、五十嵐も区間9位ながらトップとは23秒差と、巻き返しを狙える範囲内でタスキをつないだ。この流れにうまく乗った3区・桜井勇樹(教3)は区間3位の力走で前を行く帝京大と京産大を抜き、順位を6位に押し上げた。4区・矢花も区間5位と復活の快走。順位もひとつ上げた。5区・久場は区間新を出した駒大・松下に抜かれひとつ順位を下げたが区間7位と復調の兆しを見せた。6位でタスキを受けた6区・原田は駒大・神屋、神大・相馬ら有力校のエースたちと集団を形成して追い上げを狙ったが、徐々に離される。最後は日大、帝京大に抜かれ総合8位。自身も区間10位と原田の実力からすればブレーキとも言える走りだった。

 総合8位だが2時間8分6秒というタイムはそれほど悪くない。レース全体の流れに乗り遅れることなく、「5区までは予定通り」(遠藤司コーチ)の走りをした。「スピード強化の一環として捉えたレース。本格的なシーズンに向けてある程度いいレースができた」と遠藤コーチも手ごたえをつかんだ様子。エースの不在にも、一人一人の自分がやるんだという積極的な姿勢が垣間見えた。佐藤敦之が帰ってくる1ヵ月後の全日本大学駅伝ではさらにたくましくなったワセダを見られるに違いない。


駅伝シーズン開幕!出雲予想

 駅伝シーズンの開幕戦となる第12回出雲駅伝。早大は平成8年の小林雅幸(平 9人卒=現三井海上)による大逆転優勝以来、年を追うごとに順位を落としてきた。長い距離を得意とする早大にとって区間平均距離が約7.2キロの出雲駅伝は鬼門と言える。さらにエース・佐藤敦之(人4)は体調不良のためエントリーされていない。優勝を狙うにはやや苦しい布陣だが、佐藤抜きの現時点ベストメンバーがどれだけ強豪校と渡り合えるかが全日本大学駅伝、箱根駅伝への試金石ともなりうるため、非常に注目だ。

 1区には10月1日の日体大記録会で29分07秒とまたも自己ベストを更新した森村が起用されるだろう。好調の森村のアンカーも考えられるが、久場や後藤など長い距離をより得意とする選手の長所を生かすために、スピードのある森村が他校のエースクラスが登場する1区で流れに乗りたいところだ。前半で流れから乗り遅れないためにも2区には実力のある原田が有力だ。距離の短い3区・4区には一昨年4区を走った矢花や、今回が駅伝初挑戦となる大角・五十嵐あたりが起用されそうだ。個人的にはここ数年の駅伝主務の中でもトップクラスの走力を持つ大角と、日体大記録会で29分23秒と急成長したゴールデンルーキー・五十嵐をおしたい。2番目に距離の長い5区では桜井が期待される。好不調の波が激しいのが玉にキズだが彼の爆発次第ではここで一気に上位争いに加わる可能性もある。アンカーには経験豊富な久場、もしくは今年の箱根駅伝で1年生ながらアンカーの大役を務め、この1年で大きく成長した後藤のどちらかが起用されると思われる。

 レース展開を予想すると、前半の1区・2区で上位争いに加わっていることが重要だ。距離の短い3区・4区が無難にタスキをつなげば、勝負は5区・6区にまでもつれる。戦力的に充実した駒大・順大・中大あたりには後塵を拝することになりそうだが、山梨学大・法大・鹿屋体大・第一工大・東海大などエース頼みの学校に総合力で勝ることができれば、日大や神大などと並んで4位〜7位あたりが見えてくる。どちらにしても苦しい戦いになるが、もはや出雲では失うものは何もないワセダなだけに、出雲の神様が味方してくれることを祈りたい。

<エントリーメンバーとオーダー予想>
1区(7.2キロ) 森村哲(人2)
2区(6.0キロ) 原田正彦(人3)
3区(5.7キロ) 大角重人(理工4) 矢花誠(人3)
4区(5.6キロ) 五十嵐毅(人1)
5区(7.3キロ) 桜井勇樹(教3)
6区(11.3キロ) 久場潔実(二文4) 後藤信二(理工2)


第69回 日本学生陸上競技対校選手権大会結果

◆9月1〜3日 国立競技場

 大会初日、気温29度、湿度69%という過酷な条件の中行われた男子1万メートルに佐藤敦之駅伝主将(人4)と森村哲(人2)が挑んだ。J・カーニー(平成国際大)、永田(鹿屋体大)、佐藤の3人に絞られた優勝争いは、7千メートル過ぎから暑さに圧倒的な強さを見せるカーニーが独走態勢に入る。1万メートル学生トップのタイムを持つ永田との2位争いは、ラスト2周で永田のスピードに振り切られ、佐藤は3位に終わった。だが各校のエース級の選手たちが自己ベストより1分半以上遅いタイムのなか、佐藤は28分47秒と安定した力を発揮した。なお、森村は31分00秒の15位に終わった。

 天皇皇后両陛下が来場し天覧試合となった二日目、男子四百メートルリレーで早大は自己の持つ日本学生記録、単独チーム日本記録を更新する38秒91で優勝、見事4連覇を達成した。1走の穴井伸也(人1)から東海大とのマッチレースとなった今回、2走・中川博文(人3)、3走・田村和宏(人4)とつないだバトンがアンカー・小島茂之(人3)に渡った時点で、東海大には約1mの差をつけられていた。だが「相手の強さもわかっていたし、負ける気はしなかった」という小島はグングンと加速し、残り20メートルで鮮やかに東海大を抜き去るとガッツポーズでゴールに飛び込んだ。「最後のインカレとなる田村さんを最高の形で送り出したかった」という小島。98年の関東学生対校選手権以来3年半の間、無敗を誇ってきたチームの結束力が生んだ勝利、そして記録だった。

 最終日、男子5千メートルに再び佐藤敦之と森村が登場した。レースはまたも序盤から佐藤と永田が引っ張る形となる。スタミナの佐藤とスピードの永田の対決は、残り2周でロングスパートをかけた佐藤に永田がくらいつき、最後の1周での永田のスプリント力に佐藤が力尽きるという、一昨日と似た展開となった。結局5千メートルも13分59秒の2着。4年間ワセダのエースと呼ばれてきた佐藤はついにインカレでのタイトルを手にすることは出来なかった。また森村も14分33秒の10位と実力は発揮したものの、物足りない結果に終わった。

【男子】
▽200m (3)中川 ▽800m (8)増原琢磨(法3) ▽5000m (2)佐藤
  ▽10000m (3)佐藤 ▽4×100mリレー (1)早大 ▽総合 (7)早大
※上位進出者のみ掲載


全日本大学駅伝選考会 結果

◆6月10日 鴻巣市陸上競技場

駅伝日本一を決める全日本大学駅伝が今年も11月5日に行われる。 関東学連に与えらた11校の出場枠のうち、昨年の全日本と箱根でそれ ぞれ3位以内に入った駒大、順大、中大、山梨学大にはシード権が与え られるため、今回の予選会では残りの7つの出場枠が争われた。各組二 人ずつの4組、計8人が1万メートルを走りその合計タイムで順位が決 まる。

 トップ通過を狙った早大だったが2組目を終えた時点でまさかの8位 と出遅れる。2組目には復活を期す中尾栄二(人2)が出場し、序盤か ら先頭付近で集団を引っ張る積極的なレース展開を見せた。しかし課題 のスタミナ不足が響いて後半失速、貯金を作るには至らなかった。巻き 返しを図りたい3組目、今季急成長の森村哲(人2)と故障明けの原田 正彦(人3)の準エース二人が登場する。二人は期待通りの力を出し、 原田が2位、森村が3位でフィニッシュ。早大の順位を押し上げた。そ して4組目、満を持して佐藤敦之駅伝主将(人4)が登場。順位は4位 だったが、教育実習の真っ只中で十分な調整が取れていない状態で28 分42秒の好タイムをたたき出し、エースの役割を果たした。

 早大の総合順位は結局3位。2位の大東大とは僅かな差だったが、1 分近い差をつけられた神奈川大には底力を見せつけられた。この結果に 対し遠藤司コーチは「順位にはこだわっていないが、今のチームの問題 点が出た。この結果が危機感につながって欲しい。」と厳しい表情を見 せた。


関東インカレ結果

第79回関東学生陸上競技対校選手権 (5月14〜21日 横浜国際総合競技場ほか)

箱根駅伝を越える歴史を誇る関東学生対校選手権(関東インカレ)が今年も盛大に行われた。早大は優勝3種目、準優勝3種目、3位1種目と好成績を収め、総合ポイントでも7位と昨年を上回った。

14日に国立競技場で行われた女子棒高跳では森永麻里子(人1)が入学早々いきなりの準優勝を成し遂げた。3メートル50以降は日本学生記録保持者の中野(東学大)とのマッチレース。森永は3メートル60を3回目の試技で越えると続く3メートル70も3回目でクリアし、勝負強さを見せた。3メートル80を跳んだ中野には敗れたものの、それまでの自己ベスト3メートル65を更新するこの結果に「次につなげられる結果」と満足気な様子を見せた。

19日のメインイベントとも言える男子1万メートル。前半、学生長距離界を代表するランナーたちに混じって佐藤敦之駅伝主将(人4)は先頭集団を形成する。5千メートルを過ぎたところで佐藤、山梨学院大の留学生・カリウキ、国士大の小川の3人に優勝争いは絞られた。そして、「ラスト3千メートルを8分30秒切るペースで行けば相手が落ちていく確信があった」との言葉どおり、7千2百メートル付近でカリウキを抜き先頭に立った佐藤は残り千メートルで独走態勢に入り、最後は珍しく派手なガッツポーズでゴールした。28分32秒68という見事なタイムでの優勝だった。これは2部1万メートルで優勝した神屋(駒大)より10秒以上早いタイムで、佐藤は名実共に学生長距離界のトップに立った。また森村哲(人2)が自己ベストを更新する29分19秒で6位に入った。

激しい雨の中試合が行われた20日、本命不在の女子百メートルを高野香織(人2)が見事制した。足をいためた状態ながら百メートル、二百メートル、マイルリレーと大忙しだった高野。信岡沙希重(平12人卒)ら昨年の主力が大幅に抜けた女子短距離陣を引っ張り、孤軍奮闘した。男子百メートルでは小島茂之(人3)が2位に入った。春先からの連戦でハムストリングを痛めていた小島。この結果に本人は悔しさを噛みしめていたが「決勝はやめさせようかと思った。あの状況ではよく2番になった」と大沢知宏コーチは一安心の様子だった。その1時間45分後に行われた男子四百メートルリレーでも小島はアンカーとして激走。見事チームを3連覇に導いた。その四百メートルリレーでは1走の佐藤真太郎(人2)が好スタートを見せると、中川博文(人3)、田村和宏(人4)、小島と危なげない走りでバトンをつなぎ、39秒35でゴール。昨年出した単独チーム日本記録の更新はならなかったものの、最悪のコンディションの中でのこのタイムに中川、小島の二人は「条件がそろえば38秒7は確実に出せる」と口をそろえた。

最終日の21日、男子八百メートルで増原琢磨(法3)が順大の佐藤清治に次ぐ2位と好成績を収めた。「絶好調だった」という増原は予選で自己ベストを更新。決勝でも最後の直線で3,4人を一気に抜き去るスプリント力を見せ、見事準優勝を果たした。男子5千メートルではまたも森村が14分04秒と大幅に自己ベストを更新。カリウキ(山梨学大)、徳本(法大)、岩水(順大)、小川(国士大)ら学生トップクラスのランナーたちに次ぐ6位に見事入賞した。森村はもはや準エースとも言えるレベルに急成長し、6月10日に控えた全日本大学駅伝関東学連予選会に向けて佐藤敦とともに明るい材料がそろった。

【男子】
▽100m (2)小島 (6)中川 (8)田村 ▽200m (5)中川 (6)田村 ▽800m (2)増原
▽5000m (6)森村 ▽10000m (1)佐藤 (6)森村 ▽110mハードル (7)萩野勝也(人2)
▽3000m障害 (8)相楽豊(人2) ▽400mリレー (1)早大(佐藤、中川、田村、小島)

【女子】
▽100m (1)高野 ▽200m (6)高野 ▽400mハードル (3)清水都(人3) ▽棒高跳 (2)森永

 


 第79回関東学生選手権(関カレ)展望

 「今年のワセダはオールラウンドで勝つ!」

ここ数年、トラック&フィールドでは百b・二百b・四百bリレーなどの短距離種目 などが好成績を上げるものの、総合ポイントでは大きく他校に遅れをとっていた早 大。だが今年は違う。今年のワセダには短距離種目以外でも大きくポイントを稼げる 種目がたくさんあるのだ。

 まずはおなじみ佐藤敦之駅伝主将(人4)が登場すると思われる1万b。4月8日に 行われた東京六大学対校陸上競技大会では5千bに出場し自己ベストを更新する14分 02秒を叩き出した。びわ湖毎日マラソン以降の好調を維持しており関東インカレの1 万bでは現役学生の最高レベルである28分台前半の記録が期待できる。もちろん優勝 の最有力候補だ。

 そしてなんと言っても今季大注目なのは投擲(てき)系だ。注目選手は槍投げの中村 航(わたる=法4)と円盤投げの玉利晋一(人1)。中村はワセダで一人黙々と槍を投げ つづけ、4年目の今季、ついにその才能が開花した。先日の六大学対校でも73b42を 投げ、2位の選手に10b近い差をつけての圧倒的な勝利。これで3大会連続での自己 ベスト更新となり、関東インカレでも自己記録の更新、さらには78b54の学生記録の 更新も期待できる。本人も「ワセダの投擲は人数も少ないしコーチもいない。自由に 取り組めるがその分だけ結果を出さなければ認められないところ。納得できる試合を したい」と気合十分だ。また、玉利は昨年度の高校総体円盤投げの優勝者で、すでに 関東インカレの標準記録を突破している。その実力は未知数だが今後のワセダの投擲 を背負って立つ逸材として、関東インカレでの大投擲を期待したい。

 もちろんお家芸の短距離種目も健在だ。男子は昨年の四百b単独チーム日本新のメ ンバーから鍛治健太郎・新田幸一(ともに平12人卒)が抜けたことに加え、小島茂之 (人3)がけがで戦列を離れるなど不安要素は多い。だが復活した田村和宏(人4)や、 穴井伸也・田野淳(ともに人1)の特選入学組みには十分にその穴を埋めるだけの力が ある。今季も男子短距離陣からは目が離せそうにない。一方の女子は信岡沙希重(平 12人卒)ら主力選手3人が抜け、大幅な戦力ダウンの感は否めない。昨年の学生記録 メンバーから一人残った高野香織(人2)がどうチームを引っ張っていくかがカギとな る。

 跳躍・ハードルなどその他の競技も、昨年までの主力選手に加え、百十bハードル で高校総体優勝の石田真士(人1)ら有望な新人が多数入部しており、大きな躍進が期 待できる。とにかく今年のワセダはいろいろな競技が強い。それは六大学対校で、1 位の法政との総合ポイントの差がわずか1点での2位だったことからもわかる。普段 はテレビに映らないワセダのアスリートたちの熱戦の様子を、ぜひ多くの人に実際に 見に来てほしいものだ。なぜなら彼らのパフォーマンスにはそれだけの価値があるか らだ。

第79回関東学生選手権
日程:5月19〜21日
場所:横浜国際総合競技場(JR横浜線小机駅下車徒歩5分、新横浜駅下車徒歩10 分)
*ハーフマラソンのみ5月14日に神宮外苑周回コースにて行われる


2000年 箱根駅伝結果

 もうシード落ちの悪夢は見たくない――。だれもがそんな気持ちを抱いてスタートした今年の箱根駅伝。往路では2区・佐藤敦之(人3)や4区・原田正彦(人2)が好走を見せたが、結局8位に沈んでしまう。翌日の復路は4年生3人をを配して着実な追い上げを狙った早大は7区・桜井勇樹(教2)、8区・湯朝育広(教4)、9区・平下修(人4)がそれぞれ順位をひとつずつ上げ、最後はルーキー・後藤信二(理工1)が6位でゴールテープを切った。完全復活とまではいかないものの、早大の苦闘の1年はまずまずの形で幕を閉じた。

   総合成績E早大……11時間18分12秒

【戦評】
失ったシード権を奪回するためには、9位以内に入らなければならない。エース・佐藤敦之は'花の2区'で破竹の6人抜き。だが佐藤頼みでは勝てないことはだれもが知っていた。佐藤から4位でタスキをうけた尾崎は順位を落としたが、4区・原田が区間2位の快走で巻き返す。1年生の相楽も懸命に山を上りきった。往路順位は8位。昨年は7位。しかし今年の早大は違う。6区・佐野から桜井、湯朝へ。エース無き復路、だれひとり崩れることなく前えとつないだえんじのタスキ。7位で受けた9区・平下は区間3位の力走を見せ、6位で受けた1年生のアンカー・後藤もその順位を落とすことなく、大手町へのゴールへと飛び込んだ。
早大ランナーの一万b平均タイムは参加15校中の15位。だが勝負はタイムではない。まさしくワセダの全員駅伝で駆け抜けた箱根路であった。


瀬古、藤田をこえた!びわ湖毎日マラソンで学生新
琵琶湖毎日マラソンで初のフルマラソンに挑戦した佐藤敦之(人4)が日本学生新記録となる2時間9分50秒で4位に入賞した。この記録は学生としては初のサブテン(2時間10分以内)であり、初マラソンとしては日本歴代3位の好記録である。佐藤はフィス(スペイン)ら世界の強豪選手たちに混じって堂々たるレース振りを見せ、次代を担う若手ランナーの筆頭として、また学生長距離界のニューヒーローとして、一躍脚光を浴びる存在となった。

気温15度、湿度54%、うっすらと雲がかかった空に号砲が鳴り響き、絶好のコンディションでレースはスタートした。五輪選考レースの独特の雰囲気中、遠藤司コーチの指示どおり先頭集団後方に位置した佐藤は着実に自分のペースでラップを刻んだ。中間点、自己のハーフマラソンの記録より30秒早い。だが体にはまだまだ余裕がある。「確実にスタミナがついているという自信があった」佐藤は臆することなくハイペースのレースに挑んだ。

30`過ぎ、「勝負は30`から」というコーチの言葉が頭をよぎる。先頭集団は7人。まだ体は限界を感じていない。32`、「負けたくなかった」という今年の箱根駅伝で9区区間新を出した西田(駒大)が力尽きる。それを横目に見ながら先輩の武井隆次(平6人卒=現ヱスビー食品)と併走し、前を行くフィスと川嶋(旭化成)と早田(ユニクロ)に追いつく。この時点で優勝争いは5人に絞られた。33`、早田が脱落し川嶋とフィスが前に出る。ここで佐藤は挑戦者の気持ちを忘れ、躊躇してしまう。「これ以上のハイペースについていっての急激なペースダウンが怖かった。ここまでの自分の走りに満足し、守りに入ってしまった」。ここでスタミナも限界に達してずるずると離され、そのまま4位でゴールテープを切った。

 タイムは2時間9分50秒。昨年の同大会で藤田敦史(駒大=現富士通)が瀬古利彦(昭55教卒=現ヱスビー食品監督)以来20年ぶりに更新した日本学生記録をさらに更新し、しかも学生で初のサブテンという驚異のタイムだった。初マラソンのタイムとしても日本歴代3位である。昨年の同大会ではエントリーしながらけがで欠場し、藤田の走りに悔しい思いを募らせた。1年間我慢しつづけたフルマラソンへの挑戦。その思いは力となって今回の走りを引き出した。だが佐藤は言う。「この結果にはぜんぜん満足していない。学生という狭い枠では考えたくないし、2時間9分台はいまや世界のトップレベルではないから。負けたんだから学生新や初マラソン歴代3位にも何の価値もない」。

 競技者としての飽くなき渇望。ただ自分を高めることへの純粋な欲求。孤独な戦いを続けるランナーたちに欠かせない要素を佐藤は持っている。今後は来年の世界選手権、そして4年後のアテネ五輪でのメダルを狙う。だがその前にやらなければならない大仕事がある。主将として、エースとしてチームを8年ぶりの箱根駅伝優勝へと導くことだ。佐藤の激闘の一年はまだ始まったばかりである。


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