封印解いたアタック 大田尾
今シーズン、大田尾の躍進が、そのままチームの快進撃につながっている。大田尾がワセダの「10」を初めて背負った昨年は、対抗戦優勝に加え、大学選手権でも準優勝し、早大復活を強烈に印象付けた。だが今、グラウンドでの大田尾の姿は、そのときにも増してより一際大きい。変化から進化へ――。この大舞台に、また一つ進化した指令塔が帰ってきた。
まずは「一番おもしろい」というアタック。CTBには大黒柱・山下大悟(人4)が控えるため、相手ディフェンスは当然外側に意識を集中する。「そこが狙い」。内が開いたと判断するや、持ち前のスピードとあたりの強さでラインを破る。今年9月のオックスフォード大との交流試合では、展開しても崩れなかった相手ディフェンスを自ら切り裂きトライ。その後も体を張ったアタックでチームのリズムを作った。昨年は自粛気味だったが、実はこれが最も得意とするスタイル。アカクロの指令塔は、「自分で勝負するところが他のSOとは違う」。
そしてゲームメイク。前節の帝京大戦、開始直後は帝京大の早い展開に苦しめられるものの、前半22分に佐々木隆道(人1)がトライを奪ったあとは早大のトライショー。劣勢を跳ね返したそのきっかけは「大田尾のゲームメイク」(清宮克幸監督=平2教卒)だった。早大のSOとしてのキャリアは一年半以上。「こういうときはここが開く、とかだいだいわかってくる」という。密集の近くをFWに進ませるか、広く飛ばしてBKを走らせるか。それを決めるのは、経験がつむぎ出す一瞬の判断力だ。一選手に3つはあるというサインプレーを駆使し、最もトライに近い手段を選ぶ。大田尾のゲームメイクは、早大のシステムの中では円熟の域に達したと言っていい。
今シーズン、言わずもがな、早大は強い。だが逆に、接戦を経験していないということでもある。慶大には、春のオープン戦で108―17と大勝したが、手負いのトラはそのどん底から這い上がりここまで全勝で来た。「去年より、必死さがある」。早大に唯一つけいれられる隙があるとすれば、今シーズンいまだ無敗という事実が生む慢心だ。接戦になればこそ、心の隙が致命傷になる。油断や過信をかなぐり捨て、「いつも通りのアタック」に徹することができるか。それさえ達成されれば、今最も輝くSOを有する早大に、怖いものはない。
(村岡貴仁)
常勝軍団に佐々木あり
鮮烈に印象に残っている言葉がある。雨の降るなか、苦戦を強いられた筑波大との試合後。「雨に苦しんだか」という記者の質問に対し、佐々木はこう答えた。「雨のせいにはしたくない」。その言葉に、もはや1年生の初々しさは残っていない。自分に対する厳しさに満ちたせりふ。それには、自分がワセダの全部員の代表として試合に出場している事に対する自覚、そして責任感の強さが表れていた。そんな佐々木のことを、多くの人はこう評する。「器が違う」と。
佐々木の持つ『器』。その土台は、大阪・啓光学園高時代に築き上げられた。鉄壁の守備を誇ったチーム内でも、際立って豪快なタックルを誇った佐々木。3年時には主将として全部員を統率し、春の選抜、冬の花園と連覇。その1年間、一度も負けなかった経験は、佐々木の心に「勝負には絶対負けない」という炎をともすことになった。
ワセダ入学当初は「大学のコンタクトの強さに戸惑った」と言う。トレーニングを積み重ねた結果、佐々木の体は大学レベルに仕上がった。試合中には、強力なアタック、ボールごと殺すようなタックルを何度も放つ暴れっぷり。対抗戦では、これまでに7トライを挙げている。
ラグビーを始めたのは中1。それ以来フランカーやロックを経験するが、ほとんどはFW
とBKのリンクプレーヤー、NO・8でプレーしてきた。これまでに数々の勝利をつかんできた佐々木。しかし、その結果に甘んじる様子は全くなく、「苦しいときに流れを打開できるのが、理想のNO・8。それに対し、自分はまだまだ」と話す。求めるものは、チームへの貢献と仲間からの信頼。これらを手にしたとき、理想は現実となり、佐々木の『器』は一杯に満たされるのだ。
17年前のワセダに、ルーキーながらNO・8のレギュラーを取った男がいた。清宮克幸現監督(平2教卒)である。在学中、2年時には日本選手権、4年時には主将として大学選手権を制覇。あの栄光から、12年の歳月が流れた。そして今年、清宮監督に誘われて佐々木はワセダの門をたたいた。「ワセダの魂を見せてやります」。伝統は脈々と受け継がれる。その継承者、佐々木隆道。新たな歴史を刻む背番号8の戦いは、すでに始まっている。
(風間俊樹)
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