大悟 天下無双
春から無敗。対抗戦に入ってからは全試合ダブルスコア以上で他大をしのいできたラグビー蹴球部。今年こそ大学日本一へ。その評判は上がる一方だ。78回目を迎える伝統の早明戦。ライバル・明大を相手にどれほど圧倒できるか。今日、「ワセダ強し」の評判は、また一つ上がる。
二季連続、対抗戦全勝優勝に王手をかけた早大。これまで見せてきた圧倒的強さで『最強』との呼び名も高いチームの先頭に立つのは、主将・山下大悟(人4)。今春日本代表に選出されるほどの非凡なアタックセンスを誇る、言わずと知れた早大のエースだ。
一年時からレギュラー。独特の『ズレ』で相手ディフェンスを破り、豪快なランでインゴールへ。昨季まではペナルティを得た場面でもひたすらゴルラインを狙いに行く、とにかくアグレッシブな存在だった。しかし主将としての今季、山下はピッチの上で違う顔を見せる。
「主将としての役割は、プレーで引っ張ることだけ」。山下はプレー面での主将像にこだわりを持つ。これが指すのは、鮮やかな個人技のみではない。清宮克幸監督(平2教卒)就任後徹底されてきた『継続ラグビー』の実践を示している。今季、山下は自ら突破できる場面でも、あえてパスを出すことが増えた。外にはWTBのみ、FWから距離があるアウトサイドCTBは、万が一相手に捕まった際サポートの遅れや密集回数の増加を招き、継続ラグビーのリズムを壊しかねないからだ。「自分たちの戦術は負けない」。だからこそ、そのスタイルを忠実に体現している山下。チームの起爆剤としてだけでなく、パスを放る二次的な司令塔へ。山下の進化はとどまることを知らない。
大学王者を狙う早大の見据える先は、大学選手権。しかし、その前に倒すべきは今日の相手、宿敵・明大だ。基本プレーの精度、徹底された戦術、どれを取っても大学王者の最短距離に位置すると評判高い早大だが、山下は、対抗戦2連勝中の明大に「挑む」と表現した。波乱が少ないラグビーにおいて唯一例外と言われる早明戦。思えば一年前も、早大圧倒有利の下馬評ながら苦戦を強いられ終了間際のPGで辛くも勝利。「メイジより気持ちを(高く)持っていかないと、勝てない」と、多士済々、昇り調子のライバルへの警戒を怠らない。
埋めつくされるスタンドに、湧き上がる歓声。今日の国立は大学選手権ファイナルさながらの雰囲気にまれる。この伝統の一戦の行方しだいで、自ずと選手権への展望は開ける。昨季も明治との接戦を制した経験が、選手権に入ってからのさらなる躍進を生み出した。だからこそ、早大にとって決して落とせない今日の一戦。しかし頼もしき主将は「観客の応援の分、力を発揮できる」と自らも認める大舞台に強い男。紫紺の15人を相手に、どう戦うか。それは、山下の腕にかかっている。(下真奈美)
圧勝 力の差を見せつけた
本当に強い。2年連続の全勝対決となった早慶戦で、勝てば優勝が決まる慶大を早大が圧倒した。前半は慶大の攻撃を防ぎながら着実にトライを重ね、後半は一方的な早大ペース。計12トライを奪う猛攻で進化した継続ラグビーを超満員の秩父宮の観客に見せ付けた。終わってみれば74―5という前評判以上の点差をつけての完勝。清宮克幸監督(平2教卒)、山下大悟主将(人4)が「満足」と語る内容で対抗戦連覇へ王手をかけた早大。「ULTIMATE CRUSH」は完成に近付いている。
ここまで点差が開くとはだれが予想しただろう。優勝の行方が懸かる試合。春と夏の練習試合で惨敗を喫した慶大の意地。さまざまな要素は確実に接戦の予感を漂わせていた。実際、試合開始から4分でWTB仲山聡(人4)がトライを奪うが、その後は慶大ペース。キックなどで自陣真ん中付近まで何回もせめこまれる。しかし、早大に焦りは見られなかった。相手のダウンボールを「強いというよりうまいし速い」(慶大・水江主将)プレーでことごとく奪い、決定機を作らせない。逆に22分、相手ゴール前中央付近での連続したラックから、すばやい球出しで外に余ったWTB山岡正典(教3)へつなぎ追加点を挙げる。このあとの20分間は、両校ともにチャンスを迎えるがターンオーバーの応酬でなかなか得点には至らない。途中慶大がゴール前5メートルまで迫るが早大ディフェンスの前にミスで自滅する。逆にロスタイム、ハーフウエーライン付近で慶大ボールをターンオーバーした早大は、中央を突破し最後は外に走り込んだFB内藤慎平(人2)がトライ。前半終了直前でのこのトライが後半の両校の勢いにそのまま表れる。
ハーフタイムに「前半の3トライはすべて内を突いてから外に振ってのかたちだったのに気付いた」(大田尾竜彦=人3)早大は、後半そのパターンを実践する。まずは近場のFWにタテを突かせて相手を内側に寄せる、そして外に余ったと見るや素早く展開する。このパターンで後半は実に9トライを奪い完勝を収めた。「この1年でベンチを含め全員のレベルが上がった」(大田尾)ことで、少人数によるラック形成からの素早い球出しは精度を増し、近場にはFW,その外にはBK陣が一斉に走り込み、その勢いでラインを突破する進化した継続ラグビー。その破壊力をまざまざと見せ付けるかたちとなった。試合後清宮監督は「今週の頭から今までにないほどの集中力を選手たちが見せた。今日の試合はそれがかたちになったことがうれしい」と笑顔で語った。
この試合の収穫はそれだけではない。後半は控え選手を全員出したにも関らず、チームのレベルは変わらなかった。さらに点差がついたあとも集中力を欠くことなく攻め続けた。進化した継続ラグビーに選手層と気持ちの充実が加わったことを証明した早大。対抗千連覇、そして大学王者へスキはない。(藤元健介)
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