昨年、優勝した阪神のMVPは、今試合で先発した村上だった。それまで1勝もしていなかった右腕が、いきなり10勝を挙げたのだから、チーム救世主だといっていい。その村上が今季は1勝1敗。今季3度目の先発でどういうピッチングを見せるのかを注目していた。そこで目についたのが、村上を陰で支える坂本の存在だった。

立ち上がりから調子の良かった村上が、先制点を許したのが3回表だった。1死三塁、打席に投手の山崎伊を迎えた。初球はフォークでファウル、2球目は内角高めの152キロの真っすぐでファウル。バットに当てた山崎伊も見事だが、打撃のいい投手を全力で抑えにいく姿勢に油断はない。しかし、3球目のボールゾーンに落ちるフォークをバットに合わせられ、センター前にタイムリーを打たれた。

打たれたフォークは内角低めで、キャッチャーの坂本はワンバンを体で止めにいっていた。ストライクゾーンからボールゾーンにワンバンして落ちるようなフォークで、決して失投ではない。もう少し低くてもよかったが、走者が三塁にいるため、あまり手前でワンバンすると、暴投になる可能性もある。あの高さがベストだったと思う。

あのフォークをバットに当ててタイムリーにした山崎伊のバッティングを褒めるべきだろう。しかし、坂本の頭の中は、それだけで終わらなかった。投手で打撃のいい山崎伊だが「なぜ、あの球を当てられたのだろう」と考えたのだと思う。癖が出ているのか、疑ったはずだ。

続く萩尾に対し、1-2と追い込んだ直後に内角への真っすぐで勝負。見逃し三振を奪った。佐々木には真っすぐを遊撃にヒットを打たれたが、2ストライクに追い込んだ後に投げた5球のうち、フォークはワンバンになる1球だけで4球は真っすぐだった。門脇に対しても1-2に追い込んだ直後から2球、真っすぐを続けて見逃し三振で打ち取った。

追い込んだら遊び球を投げないでフォークで勝負する村上のパターンを読まれたと考えたのだろう。その後も岡本和、岸田、山崎伊までの三振は、すべて真っすぐで見逃し三振。真っすぐで5連続の見逃し三振は、プロでは珍しいこと。巨人打線の傾向を坂本が見切っていた。

7回1死三塁の岸田と2死二、三塁になってからの山崎伊には、遊び球を使って空振り三振を奪った。坂本の要求通りに投げられる村上もすごいが、山崎伊のタイムリーで勝負球を切り替え、その後も狙いを変えていった坂本の配球は見事だった。

試合は同点に終わったが、今季も村上と坂本のバッテリーは相手チームの脅威になるに違いない。(日刊スポーツ評論家)

阪神対巨人 8回表巨人1死一塁、坂本は打者門脇のとき一塁走者佐々木の二塁盗塁を刺す(撮影・加藤哉)
阪神対巨人 8回表巨人1死一塁、坂本は打者門脇のとき一塁走者佐々木の二塁盗塁を刺す(撮影・加藤哉)