虎が今季初の6連勝で首位に浮上した。雨が降り続く悪条件下での完勝。元阪神投手で日刊スポーツ評論家の岩田稔氏(40)は古巣の勝利を見届け、7回完封勝利を飾った才木浩人投手(25)の特殊能力を絶賛した。【聞き手=佐井陽介】

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先発投手にとっては相当にタフなゲームとなりました。試合開始が53分も遅れ、準備のテンポを大きく崩されて始まった一戦。雨が降り続き、足場はぬかるむ。イニング間に何度となくグラウンド整備が入る。いつ試合が中断するかも分からない状況で、集中力を保ち続けた阪神才木投手、中日松葉投手をまずはたたえたいところです。

特に才木投手の立ち上がりは圧巻でした。1回は1番岡林選手にいきなり3球連続ボール球となりましたが、これはしっかり指にかかった直球が高めに伸びての3ボール。フルカウントから空振り三振を奪った内角低め直球を見て、雨中での快投を確信しました。気持ちを切らさず丁寧な準備をできていなければ、あの環境で初回から3三振を奪うことはできません。

才木投手はもともと三振を取れるタイプですが、この日は普段よりも奪三振への意識が高かったのではないでしょうか。どれだけ土を足しても水が浮いてくる、泥だらけのグラウンド状況。スリッピーで打球を追いにくい状態を考えた時、もっとも確率の高いアウトの奪い方は、捕手が取るだけで完結させられる三振に違いありません。2回までに5奪三振、計7回で8奪三振。簡単にゴロを打たせない才木投手の奪三振能力が内野手を助けたと表現しても、決して過言ではない試合でした。

先発投手からすれば、雨中のマウンドは本当に嫌なものです。先に点を取られると致命傷になりかねないし、いつ試合が終わるか分からない中で、つい「早く早く」と焦ってしまいがち。そんな視点で見ても、この日の才木投手は本当に落ち着いていました。少しでもボールの汚れが気になれば審判に合図し、グラウンド整備中も顔色一つ変えずに丁寧にキャッチボールを継続していました。

結果は7回コールドゲームでの完封勝利。個人的には9イニングを投げきった時と同等、もしくはそれ以上に価値のある投球内容だったと感じます。(日刊スポーツ評論家)