首位阪神が3試合連続となる今季10度目の逆転勝利を飾った。投打がかみ合って3連勝。貯金を今季最多の6に増やした。

先発した村上頌樹投手(25)は1失点の好投で今季チーム初の9回を投げきっての完投勝利をつかんだ。広島3連覇監督で日刊スポーツ評論家の緒方孝市氏(55)が解説した。

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村上の投球に尽きる。初回に秋山、野間と連続でストレートを打たれた。昨年は糸を引くような伸びのある直球で、他球団の打者は一発で仕留めることができなかった。今年は打者に慣れも出てくるし、ストレートへの意識を強く持って打席に立っている。この日はいち早くカープの打撃陣の狙い、意図を感じた中で捕手坂本と、配球を大胆に切り替えた。

各打者の特長を頭に入れ、観察した上での投球が光った。6回は坂倉に対して縦の変化球、フォークを4球も続けた。ストレート系が強い宇草には、すべて変化球。早打ちの傾向にある打者には、ストライクゾーンぎりぎりの誘い球をコントロールよく投げていた。

この試合はフォークを初球のカウント球に使うなどカットボール、スローボールを含めて、通常よりも全体的な割合で言えば、明らかに変化球が多かった。村上の能力の高さを感じたのは、変化球主体の投球に切り替えても、ストライクを先行できる点にある。配球をガラッと変えたことが功を奏した。この完投はチームにとっても大きい。

打線は阪神らしい四球を絡めたつながりのある攻撃だった。1点ずつ積み上げ、首位のチームらしい点の取り方だった。開幕から1カ月がたち、投打ともに選手層の厚さをあらためて感じる。佐藤輝が調子を落とせば、糸原がカバー。木浪がダメかと思えば、小幡が出てくる。クリーンアップは打率は低いが、打点を稼いでいる。これは1、2番の出塁率の高さによるものだ。

リリーフでは岩貞や石井が不在だが、中継ぎ陣の防御率はいい。チームのバランスはやはりいい。これは強みだ。昨年同様に、大きな連敗をしておらず、首位にいるのも当然だろう。(日刊スポーツ評論家)

広島対阪神 完投勝利を挙げた村上(右)は坂本と握手を交わす(撮影・加藤孝規)
広島対阪神 完投勝利を挙げた村上(右)は坂本と握手を交わす(撮影・加藤孝規)