ドジャース大谷翔平投手(29)の誕生で、カリフォルニアを訪れる日本人がますます増える。“最高のプレイグラウンド”を全世界にPRするカリフォルニア観光局のプレスツアーに日刊スポーツの野球記者が参加。市販ガイドブックにはない魅力を探した。

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世の中に「絶景」は数あれど、アメリカの絶景はスケールが違う。ロサンゼルスから2時間少々の湖畔の豪雪地帯、ビッグベアーレイク。オフロードの四駆車に揺られ、凍え、いつ帰れるのか少々不安になった頃。視界が開けた。雪山の景色。誰かが気付いた。

「うわっ、砂漠だ」

雪山の尾根の向こう、茶色く見えるのは山だと思っていた。海外経験の少なさが露呈する。間違いなく、砂漠だった。

雪山と砂漠がコラボするカリフォルニア・ビッグベアーレイクの絶景(撮影・金子真仁)
雪山と砂漠がコラボするカリフォルニア・ビッグベアーレイクの絶景(撮影・金子真仁)

おそらくは名もない荒野ながら、100キロ以上先のモハベ砂漠、その先のラスベガスあたりまでずっとこんな景色がつながっているのだろう。鳥取砂丘とはスケールが違いすぎた。

それより何より、雪山と砂漠が共存する景色がすごい。「こっちは完全防寒で、山の下は半袖」。そんな笑い話も凍える耳に届いた(ような気がした)。

雪山×砂漠のコラボを終えると、四輪は断崖のオフロードを下っていく。恐怖と、ちょっとした興奮。氷点下の吹きさらしを終えての、染み渡るアメリカンコーヒー。世の中には相対するものがある。

投打二刀流、大谷翔平は極めて難しいことをハイレベルで成し遂げ、カリフォルニアでもその強烈な価値を披露した。ロサンゼルスから少し足を延ばせば、3月なのに半袖で過ごせるビーチもあるし、身震いする雪山もある。

ビッグベアーレイクの娯楽施設「アルパイン・スライド」には、雪山斜面の線路を滑降するアトラクションがある。自動運転だけれどブレーキもあるから、速度やスリルは自分で決められる。「どっちがいい」じゃなく「どっちもいい」の価値観に満ちあふれる。だから「どうでもいい」と主体性を失うこともない。

大谷翔平の好物の1つ、カスタム自由な「イン・アンド・アウト・バーガー」(撮影・金子真仁)
大谷翔平の好物の1つ、カスタム自由な「イン・アンド・アウト・バーガー」(撮影・金子真仁)

大谷が「好き」と言って日本国内でも話題になった「イン・アンド・アウト・バーガー」にはいくつも裏メニューが存在し、むしろそっちの方が人気だ。3種のシェイクが適当に混ざる「ナポリタン」なんて、日本では考えられない。

カリフォルニア観光局は「最高のプレイグラウンド」と、この多様性あふれる大地を銘打っている。キャロリン・ベテータ観光局長兼CEOは「遊びの力は科学的に証明されていますが、どの世代でも遊びの時間に満足していない人が大多数を占めています」とし「今こそ現実を変える時」と意気込んでいる。

オフがあるからオンがある。遊びがあるから、仕事に全力で打ち込める。客観視してこそ分かる、いつも向き合う何かの本当の価値。野球を書く仕事をしておきながら、言いたい。せっかくカリフォルニアに行くのなら、大谷とドジャースだけじゃもったいない。【金子真仁】(この項おわり)