5月4日、春季埼玉大会の準決勝を見るため大宮公園球場に遠征した。

お目当てはプロ注目、高校通算22本塁打の花咲徳栄・石塚裕惺内野手(3年=181センチ、83キロ、右投げ右打ち)。

花咲徳栄対山村学園 打席に立つ花咲徳栄・石塚(撮影・佐瀬百合子)
花咲徳栄対山村学園 打席に立つ花咲徳栄・石塚(撮影・佐瀬百合子)

シートノックから見たいと思い開始1時間前の午前8時に球場到着。しかしゴールデンウィークのまっただ中。すでにネット裏前列の特等席は埋まっており通路より上段に陣取った。

石塚選手は昨秋の関東大会で一度見ている。その試合で豪快な本塁打を放った。センバツ出場はあと一歩で逃したが一気に評価が上がり今春のU18高校日本代表候補合宿に参加。大型遊撃手としてプロ野球スカウトの評価も高く一躍ドラフト上位候補に浮上した。

シートノックが始まった。ほぼノーミス。一度送球をぽろっとしたくらいで完璧といえた。堅実。

山村学園との試合には「4番ショート」で先発出場した。

打席結果は以下の通り。山村学園の先発は左腕の西川投手。130キロ台後半のキレの良い直球を投げ変化球も低めに集められる。好投手だ。

第1打席 初球変化球を見逃した後、直球に差し込まれ浅い右飛。

第2打席 今度は初球134キロ直球を見逃した後、変化球を投手に打ち返したがやや泳がされて遊ゴロ併殺打。

第3打席 カウント1-0から2球目の130キロを打って右中間へ三塁打。一塁まで7割ほどのスピードで走るとベースを蹴ってからトップギアに入れ加速。三塁到達は11秒46。11秒前半ならかなりのスピードといえるのではないか。その後捕手がワンバウンドを少しはじいたのを見て本塁へ生還。一瞬の隙を見逃さない見事な走塁だった。

第4打席 8回1死二塁の好機で申告故意四球(高校野球では申告敬遠と言ってはいけないらしい)。スタンドからは「あ~」というため息。

第5打席 9回1死二、三塁。カウント0-2から死球。

3打数1安打2四死球。守備は5度の守備機会を無失策。スローイングも低く強い送球が目を引き安定感があった。花咲徳栄は8-4で山村学園を下し決勝進出と関東大会出場を決めた。

試合後、花咲徳栄を取材した。

ますは7年前の全国優勝の時に世話になった岩井隆監督にあいさつ。

-お久しぶりです。石塚くんを見に来ました。

岩井監督 いい選手ですよ。(カブスの)鈴木誠也くんのようになれるかもしれない。優しい子なので、もう少し勝負師のような厳しさが出てくれば。

これだけ聞ければ十分だった。花咲徳栄は毎年のようにプロ選手を輩出している。その指揮官が言うのだから間違いはないだろう。

その後、石塚選手の囲み取材をのぞいてみた。なるほど優しそうな顔をしている。どちらかといえば小顔で、耳が小さく動物のようにとがっている。プロ野球選手でいえば日本ハム松本剛選手のような感じか。わずかな捕逸の間に本塁を陥れた走塁について「後半、低めの変化球が多くなってきていたので、ワンバウンドがあるかもと狙っていました」と説明。クレバーさも兼ね備えているようだ。

岩井監督によればこの冬、低反発バット対策として伝統のハンマートレーニングに加え、ロープ昇りで徹底的に手首と握力強化に努めたという。この日、本塁打を見ることはできなかったが関東大会での特大アーチに期待したい。

ドラフトファイル:石塚裕惺
ドラフトファイル:石塚裕惺