先日、NHKの放送企画で監督座談会が開かれ、放映された。昨年とほぼ同じ顔ぶれだったが、ひとり新監督が。巨人の阿部慎之助である。

最年長の阪神監督、岡田彰布は阿部のことをよく知らない。巨人といえば前監督の原辰徳のイメージが強く「原のことなら、何でもわかるけどな」。収録中の休憩時間。岡田は部屋で中日の立浪、そして阿部と3人になる時間があった。岡田と立浪は昔、同じスポーツメーカーのアドバイザーだったから顔なじみ。2人で話すが阿部はなかなか口を開かない。

ようやく話したのが「小さい頃、自分は阪神が好きで、バースの大ファンだった」こと。阿部の父親が高校時代、掛布雅之とチームメートだった影響もあったのだろう。それくらいしか話さず、後日、岡田は「物静かな感じやったわ。阿部って、いくつなん?」と聞くから調べた。1979年3月20日生まれで、つい最近、45歳になったばかり。「若いな。まだ45なんや」。岡田とは21歳違いになる。

そんな巨人との開幕戦がいよいよゴング。「なあ、阿部がどういう野球をしてくるか。ホンマ、わからんからな」としつつ、「阪神の野球は変わらず、昨年のを継続?」と聞いてみた。「そんなん、大きく変える必要はないやろ。そらシーズンに入って、状況に応じて考えるけど、ガラッと変えることはない」とした。

それでは具体的な開幕戦略として「まず近本が出る。ヒットでも四球でも相手ミスでもいいから、1回表、近本が出塁したとする。2番中野はどうする?」。岡田は間髪入れず「バント!」と言い切った。多くのファン、評論家の中には、この作戦がもったいないとする声があるだろう。近本の盗塁とか中野のヒッティング(エンド・ラン)。簡単に相手にアウトひとつ与えるのは、どうか。そういう意見は承知の上。「そういう場面になれば、今年、ウチの野球はこうですってことをやる。それだけのことよ」。

これを最初に見せとけばいい。相手に今年のタイガースを印象付ける。「それによって、後々、楽になるわけよ。最初にイメージを植え付けておけば、そののちは動きやすくなるからな」。岡田は考えを巡らせていた。

それにしても…である。原辰徳が退き、いよいよ岡田の66歳が浮き彫りになってきた。「ホンマやな。阿部が最年少かいな」。ちなみに広島・新井は47歳、DeNA・三浦は50歳、ヤクルト・高津は55歳、中日・立浪が54歳。66歳はやはり年齢的に突出しているけど、「これはしゃあない。1年たてば、ひとつ年を重ねるわけやから」と気にも留めていない。

昨年の今頃、岡田は正味、力んでいた。勝ちが求められた開幕カードと位置づけ、かなりエキサイトしていたが、今年はそんな気配はない。実際、絶対3連勝…といったコメントはない。逆に3連敗しなければ、くらいのゆとりの風情があった。さあ不気味な阿部巨人との激突。新たなGT戦、TG戦がスタートする。【内匠宏幸】(敬称略)