今春から導入された新基準の低反発バットの影響で、センバツ大会の本塁打数が激減した。金属バットが導入された1975年以降最少の3本にとどまった。それにより、「高校通算本塁打数」も今後は増えにくく、大幅に減少していくことになるだろう。入学直後から低反発バットを手にする新1年生にとっては、モヤモヤするのではないか、と個人的にふと思った。

これまで記事で選手を紹介する枕ことばとして「高校通算○発の-」という表現を多用してきた。選手のパワーを示すわかりやすい数字で、早実(東京)時代に111発を放った清宮幸太郎(日本ハム)や、花巻東(岩手)で史上最多となる140発をマークした佐々木麟太郎(米スタンフォード大)らは桁違いの本数にインパクトがあった。今後「100発超え」の選手が出てくる可能性は極めて低いと予想される。

高校通算本塁打が減ることについてプロ野球のスカウトはどう感じているのか。某球団のスカウトに尋ねると、「全然気にしてない」と断言した。選手の能力を見極める上で、本塁打数については「そこは議論にはならない。相手のレベル、球場の環境、試合数も違う。本数よりも打球の質の方が大事」との説明を受け、納得した。「20発、30発打ってる選手と5本の選手との(能力の)差が小さくなってくるから、余計に(打撃)練習をしっかり見ないといけない」と話した。

「野球の華」と言われるホームランが高校野球で減ってしまうのは少し寂しい気持ちもある。ただ、何十発打とうがプロ野球選手になれる保証はない。記者としても数字にとらわれず、「打球の質」を念頭に置きながら、取材を進めていきたい。【アマチュア野球担当=古財稜明】

2023年11月、明治神宮野球大会で新基準の低反発バットでスイングする北海・大石
2023年11月、明治神宮野球大会で新基準の低反発バットでスイングする北海・大石