巨人陽岱鋼は借りを返す男だ。1点を追う5回。中日ルーキー柳の内寄り高めの直球を振り抜くと、打球は3階席まですっ飛んだ。推定140メートルの2号特大弾で同点。「手応えは良かった。ギリギリの本塁打も大きい本塁打も同じだけど」と、ちゃめっ気たっぷりに笑った。

 再び1点を追う9回も勝負強い。対巨人で試合前まで防御率8・44の相手守護神の田島にマギーの左翼線二塁打で突破口を開く。お膳立てを受け、初球の外角スライダーを流し打ち、一塁手のミットをはじいて右前へ転々と転がる。土壇場での同点打で両拳を一塁側ベンチへ突き上げ、後は日本ハムの後輩でもある石川が仕上げた。「彼は持っているよね」と持ち上げることも忘れなかった。

 前夜は散々だった。武器の1つである守備でミスを繰り返した。3回、中前の打球に突っ込んだが後逸して先制点を献上。4、9回にも失策を重ね、自身初の1試合2失策だった。「昨日のミスがあって、周りのチームメートの信頼を取り戻したかった。打てて良かった」。決意をバットに込めて、1日にして取り返した。反発力も陽の持ち味。奇跡的な反攻が求められるチームにも不可欠だ。【広重竜太郎】