“左キラー”がピンチの芽を摘んだ。楽天が接戦をものにし、ソフトバンクとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ初戦に勝利。7回1死一、二塁の最大のピンチを、ワンポイントリリーフ高梨雄平投手(25)が併殺に仕留めた。優勝チームには1勝のアドバンテージが与えられるため、これで1勝1敗。負ければ圧倒的不利になる1戦目でリードを守りきった。

 左サイドハンドから放たれるスライダーに、ソフトバンクの代打長谷川勇は二ゴロ併殺に倒れた。7回1死一、二塁。楽天が2点リードで迎えた、この日最大のピンチだった。5球で無失点に切り抜けた高梨は「長打で同点だけは避けようと。強いボールだったのでゲッツーになってくれて良かった」と笑った。

 「中継ぎの切り札」としてブルペンを支える。西武とのCSファーストステージ。第2戦は7回1死一塁で森を、第3戦は5回2死三塁で秋山を、それぞれ空振り三振に切った。短い出番ながら3戦連続の大仕事。与田投手コーチも「アウト1つでもいいところを、2つも取ってくれて。本当によくやってくれてます」とたたえた。プロ1年目にして、左の強打者へのワンポイントリリーフで存在感を放っている。

 栄光もどん底も知る苦労人がのし上がった。早大時代、東京6大学リーグで史上3人目となる完全試合を達成。しかし社会人のJX-ENEOSに進んだ後は苦しんだ。好投手に囲まれ、球拾いや打撃投手に回った。日本ハム有原、ロッテ中村と大学の同期はプロで居場所を見つけていた。「今年ドラフトにかからなかったら、もう野球をやめよう」。

 生き残る道を求め、昨夏スリークオーターからサイドスローに変更した。腕の高さは何度も微調整を繰り返した。希少な左の横手として、扉は開けた。

 CSは前日17日の休暇を挟み、ファーストステージから4連投とフル回転を続けている。「球数が少ないので、疲労はあんまり。自分の仕事は(ブルペンの)電話が鳴ったら行く。それだけです。必要とされた場面でベストを尽くすことしか考えていません」。ちょうど1年前、ドラフト9位で下位指名されたルーキーは、今や下克上を狙うチームに欠かせないカギに成長している。【鎌田良美】