西武の山賊打線が復活した。2試合連続完封負けを喫していたが、5回にメヒアの2ランなどで4点先制。26イニングぶりに得点すると、7回に源田の適時打などで2点追加。9回には、山川が13号ソロでダメを押した。

 豪快さが目立つ攻撃の中で、見逃せないのが金子侑司外野手(28)の“足”だ。5回の4点目は、その足だけで奪った。

 5回1死走者なし。メヒアの2ランの後に打席が回ってきた。オリックス山岡にゴロを打たされたが、二塁大城が打球をこぼした。大城はすぐにつかみ直して一塁に投げたが、わずかに金子侑の足が勝った。敵失で出塁した。

 ここからが見せ場だった。相手バッテリーは当然のように警戒。次打者・秋山への初球の前に、4球もけん制を入れる。ようやく投げた初球も、変化球ではなく外角143キロ直球。「走らせない」意思が見えたが、金子侑のスタートが速かった。その初球で二盗成功。捕手山崎の送球もそれ、塁を陥れた。

 見せ場は続く。秋山が歩き一、二塁。源田の打席でカウント1-1からの3球目、三盗に成功した。二盗の前とは一転、相手はけん制をしてこなかった。大胆にリードを取り、二、三塁間の3分の1近くまで飛び出してから一気にスタート。山崎は三塁に投げたが、完璧に盗んだ。

 締めは、相手のミスからだった。源田への4球目、スライダーが引っかかる。ワンバウンドとなり、山崎が一瞬、見失ったスキを逃さない。ボールは後方3メートルほど先に転がっただけだが、果敢にスタート。頭から滑り込み、ベースカバーに入った山岡のタッチより速く、本塁に触れた。

 各場面を金子侑の言葉で振り返る。

 ▼二盗 「もう、けん制が来ないということはないですが、4球連続で来ていたので。行ってやろう、と」

 ▼三盗 「狙って良いというサインだったので、思い切って行きました。けん制もなかったので。三盗は、あまりないですしね」

 ▼本塁生還 「(捕手が)はじいたら行こうと思ってました。ミスで点が入る方が、相手はしんどいですからね」

 それぞれの場面で、常に先を狙う姿勢があった。全ては“準備”のたまものだ。試合前から始まっている。その日の投手の映像を必ずチェック。走者の視線から、スタートを切るイメージトレーニングを繰り返す。ただし、それが全てではない。「塁に出ないと分からない。やっぱり、相手も対策してくるので。映像で見たのと違うこともあります」。最終的には、実際に塁上から見て、スタートのタイミングをつかむ。

 それでも、映像チェックは欠かさない。ポリシーがある。

 「盗塁をする責任として、事前の準備はしないといけない。盗塁するためには、行けるという“根拠”と“自信”が必要なんです」

 日々の積み重ねが1点につながった。【古川真弥】