いざ本拠地Vへ、西武が土壇場の逆転で連勝を11まで伸ばし、マジックを3とした。1点を追う8回、秋山翔吾外野手(30)が23号3ランを放ち、試合をひっくり返した。7連勝中だった2位ソフトバンクとの頂上決戦第1ラウンドを劇的勝利。早ければ明日29日にも10年ぶりの優勝が決まる。

打球が上がるやいなや、メットライフドームが揺れた。1点を追う8回2死一、二塁。秋山がソフトバンク嘉弥真のスライダーをバックスクリーンへ。一振りで敗色濃厚をひっくり返した。「一番うれしかった。あんなに、みんなベンチから出てきてくれて」と、ハイタッチの嵐。6回に失点につながる失策を犯した山川は抱きついてきた。何より、秋山が興奮した。一塁を回ると右手人さし指を突き上げながら走った。「テンション上がりすぎ。ちょっと恥ずかしい。反省します。もうしません」と、ちょっと早口で言った。

“その時”をグッと引き寄せる1発だ。連勝を11に伸ばし、明日にも10年ぶりの優勝が決まる。負けていれば、ソフトバンクに5ゲーム差に寄られ、20年ぶりの本拠地胴上げは消滅していた。それが、8回2死走者なしからの逆転劇。メヒアが四球を選び、代走松井に球場が沸いた。金子侑は内野安打でしぶとく続く。そうして巡ってきた。「つないでくれた。それぞれの優勝に向けての意識。総力戦です」。全員の思いを受け止め、結果につなげた。

決戦前から気を引き締めていた。引退会見した松井の姿に「自分も長くやりたいので、あれだけ準備して野球のことを思っていないといけない。稼頭央さんがやっているなら、僕はもっとやらないといけない」と自らに言い聞かすように話した。歴代5位の588試合連続フルイニング出場中の鉄人にも、松井は特別。その松井の代走に「盛り上がりましたね」と、勢いをもらった。

さあ、いよいよだ。ソフトバンクに、もう2勝すればいい。「簡単な試合にはならない。もちろん、ホームで胴上げしたいですけどね」と前を向いた。目の前を勝っていくのみ。その先に、最高の瞬間が待っている。【古川真弥】