ソフトバンク柳田悠岐外野手(30)が故郷で宙に舞った。「ドラフト以来」という胴上げで祝福され、「広島で日本一を決められ幸せ。めちゃくちゃ気持ちよかった」と笑った。「一番野球が好きだった」と冗談交じりに振り返る小学生時代は、野村謙二郎の背番号7に袖を通し、広島市民球場の右翼席でスクワット応援をした。「きつすぎた」という広島商時代も過ごし、広島経済大で礎を築いた。「(胴上げは)夜空がきれいで心地よく、感謝の気持ちでいっぱいです」。生まれ育った大好きな街で歓喜に酔った。

初めて「選手会長」として迎えた8年目。チームの士気に影響を与える立場を自覚する。7月末、首の故障で欠場が続いた。球団の発表は軽度の頸椎(けいつい)捻挫。実際の症状はもっと重かったが、検査のため病院に行ったことすら隠そうとしたこともあった。9月16日、西武戦前には頭部に練習の打球が当たった。翌日から脳振とう特例措置で出場選手登録を外れたが、ベンチ裏には明るい柳田の姿があった。ベテラン松田宣と「おう、ずる休み」。「くそっ、松田さんが当たれば良かったのに」。周囲に笑いを呼ぶやりとりで、必要以上の心配をかけないよう努めた。

「試合に勝つことが一番」。自分の記録より、どんな形でもチームが勝てば喜んだ。この日は無安打だったが、4回先頭で四球を選び、西田のスクイズで「日本一」の決勝ホームを踏んだ。やっと監督を胴上げできた。ふるさと広島がもっと好きになった。【山本大地】